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colour  作者: 神口 讃妥
名無しの道
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はじめての野営

 私は『アルス』と『ブランク』の後ろを歩く。

正直、ブランクを狩りに連れて行くのは私は反対だった。

確かにアルスの言う通りブランクは6ヶ月も1人で依頼を受けているらしいがその依頼が何なのか知らないのだ。

子供のお使い程度の金しか貰えないような依頼で6ヶ月も生きていけるとは思えないので狩や薬草採取、ひょっとしたら殺害依頼を受けているのかと思っていたらブランクは何一つ持たずにギルドへやってきた。


私はふざけてるのかと思ったがどうやらそう言った様子は無いブランクが外に出てる間に何とかアルスを説得しようと思ったが、アルスは昔から楽観的で適当な答えしか出てこなかった。


 アルスは鍛冶屋の長男できっとこのギルドでの依頼も遊び感覚なのだろう、けど私は違う。

私の家は農家から作物を安く買い出来るだけ高く売る商人の家だが私は女でそして末っ子だ。

アルスがギルド登録すると言い出したので、どうせこのままだと自分は娼婦になるくらいしか生きて行く道がないと思い、見解を広げるために無理を言って家から出てきたのだ。

 親に隠れて店の金を盗み装備を買って少しでも戦えるように杖も買った、私は失敗したらもう家に戻ることも出来ず、浮浪者、最悪飢えた人に生きたまま食われるか、盗賊に襲われるなど娼婦になる以上に最悪な想像ばかりしてしまって今にも吐きそうであったが必死に疲れた足を動かして2人について行く。

 アルスと私は偶に竹で作られた水筒から水を飲んでいるがブランクは一滴も飲んでる様子が無い、にも関わらず疲れた様子を一切見せずにキョロキョロ辺りを見渡しながら歩いている。

すると突然ブランクはボロボロなシャツを脱ぎ出した。

「ブランク?急にどうしたの?」

私は少し顔が赤くなるのを感じながら問いかける

「あ、いや喉が渇いたから」

そう言うとブランクは、足元に落ちている茶色く丸まった物をシャツで包み口の上に上げるとシャツを縛り始める、するとシャツから水滴が落ちてブランクの口に吸い込まれるそれをごく普通に飲み、

その塊を捨てると歩くのに集中して先に進んでいたアルスのへシャツを着ながら駆け足で行った。

私はギルドの人間でたった1人で生き抜いてるアルスの知恵かと思い参考にしようとそれを確認すると、それは動物の糞だった。



 私はもう歩きたく無い気持ちも押し殺しながらもブランクを後ろから観察していた、私にはブランクの真似は出来る気がしないがその行動は異常に映った。

アルスも疲れ切った様子で歩いてるにも関わらずブランクはキョロキョロと常に周りを見渡しながら軽々と歩いている。

突然草むらに手を突っ込んだと思えばお腹の膨れたカエルを捕まえていて、カエルのお腹を親指で押すとカエルの口から水が出てきてそれを飲むブランク。

目の前に飛んできたバッタを素早く捕まえて首と手足を取り満足げにそれを口に放り込むブランク。

突然地面に生えてた草を引き抜くとその根を食べ始めるブランク。


 私は日が沈みアルスが野営の準備をすると言い出す頃にはもうブランクを人間だと思えなかった。

食べ物ならまだ分かる、食べるものがなければ虫だろうが、よく分からない草の根だろうが食べなければならない時はあると思う。

だが水は別だ、多少疲れるしいざと言うときに魔力切れが怖いので出来るだけ私も使わないが飲み水くらいなら魔法で水筒を満たせば良いのだ。

 少なくとも私はそうするし、現に3回は水筒に水を入れている。アルスも飲んでる回数を考えると何回か補充しているだろう、なのにブランクはそれをしない。

魔力温存にしてはやり過ぎに思えたが疲れ切って気力が湧かず早く寝たかったので見張りの話を、切り出した。


「見張り、最初の5時間は私で良い?」

そう言うとアルスは反対をしてきた

「おい!途中で起きるのが嫌だから俺が最初の5時間な!後はミール達で適当に決めろ」

苛立ったように言い放つアルスにムッとしながらもアルスはすでに干し肉とパンを、食べ始めていた。

「はぁ…ブランクはどうする?」

するとブランクはよくわからない事を言い始める

「時間って何ですか?」

私は頭痛を覚えながら頭を抑えて言う

「良い?1日は30時間、四季によって日の長さは変わるけど日が出てるのが15時間、出てないのが15時間の30時間よ、いい?」

そういうとブランクはうなずいている。

「アルスが最初の5時間見張りやるって言ってるから私と貴方、どっちがどの時間をやるかって話よ貴方は真ん中か終わり、どっちがいい?」

と言うと理解したのかしてないのか分からないが返答が即座にきた。

「どっちでもいいですよ」

と来たので私は最初の次に楽な最後を選ぶ

「じゃあ私は見張りに備えてもう寝るから真ん中の5時間よろしくね、アルス!アルスの次ブランクだからよろしく!」

そう言って私はローブで体を包むように丸くなり腕を枕にして眠る。



 私は親から引き継いだ固有特性のお陰で距離や数、時間や量などをほぼ正確に把握出来るので10時間ぴったりに目を覚ますとアルスが付けていた焚火が消えていてよく周りが見えない、不安に思いながら2人は近くにいるのか恐る恐る声を出す。

「アルス?ブランク?起きてる?近くにいる?」

そしたら少し離れている所から声が聞こえて安心する。

「えぇ、見張りですから起きてますよ?もう5時間経ったのでしょうか」

ブランクの声だ、私は指先から火を浮かせて灯りとして高い薪に火をつけてブランクの方に声をかける。

「ちょっと!ブランク!何で焚火に薪を入れてくれてないの…」最後の一言を出そうとして絶句した。

ブランクの足元には大量の虫の足や小動物の毛や骨が散乱していた。

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