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colour  作者: 神口 讃妥
名無しの道
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認められる事

 私が畑に着き近くにある家を見つけた時には既に空は赤く染まっていた、私はドアの前を行ったり来たりしながら中の様子を伺い、勇気を振り絞ってドアを叩く

「すいません!誰か居ませんか!」

そう声をかけると、妙に耳に響く声を上げながら白髪混じりで青い髪の老婆が出てきた。

「なんだい!こんな逢魔が時に」

そう言う老婆に向けて私は高鳴る動悸を感じながらも楕円形と板を掲げながら答える。

「ギルドからの依頼で草むしりに来ました!」

そう答えると老婆は目を見開き私の何かを探るように見る。

「そうかい、依頼の期限は日が昇るまでだ、さっさと仕事しな!見渡す限りの畑全てだ、間違っても植えてある作物を抜くんじゃ無いよ!」

そう強く言う老婆に私は「はい!」と一言答え作業を開始する。

老婆は何も言わずに家の中に入って行った。




 翌朝に日が登っても私は涙目になりながらも作業を続けていた。

草むしりはまだ1/4も終わっていない、自分の容量の悪さを悔やみながらも作業を続けていた。

すると不意に後ろから「あんた」と声がかかる。

 私はビクッっと体を強張らせながらも振り返る。

「あんた、名前は」とよく分からない質問をされたので、どう答えようかと考えていると昨日仮の名前をもらった事に気が付いて答える。

「ブランクです」

そういうと老婆は顔を顰めながら私に告げる、

「今日はもうギルドに戻って休みな!ほれ」

そう言いながら渡しに筒状に丸まった紙を渡してくるも私は半泣きで言葉を絞り出す。

「い、依頼、まだ終わらせられなくて…」と言うと老婆は呆れたようにため息を吐きながら答える

「この紙が依頼達成の証明書だよ、さっさと行きな!」

そういう老婆に再び言葉を重ねる。

「で、でも、依頼…」と言うと老婆は私に怒鳴り散らす。

「いいって言ってんだよ!またウチの依頼を受ける気があったらまた来な」

そう言い終えて老婆は家に帰りドアを強く閉めた、私はそのドアに向けて大きな声で感謝を伝える

「ありがとうございます!」



 私がギルドに着いたのは日が丁度、真上まで登った頃合いだった、ギルドの門を開けて受付に並び、昨日と同じ受付の女に証明書を渡す、すると女は少し目を見開き銅貨を差し出す。

「はい、依頼達成報酬の大銅貨1枚ね」

私は少し大き目の褐色した円形の物を受け取るとお辞儀をして立ち去る、その後昨日の果実をくれた毛深い男のいた所に向かう。



「これ、8個ください!」

私がそう言うと毛深い男は上手な笑みを浮かべ果実を渡してくる。

「あいよ、ちゃんとギルドに行けたようでよかったな」

そう言う男に再び感謝を伝える。

「昨日はありがとうございました」

 男は笑みを浮かべたまま返事はなかったが私はそこから立ち去り建物と建物の間で影になっているところに座ると果実を4個食べ仮眠をする。


 目が覚めた時には日が傾き始めていたがギルドに向かった。

 今朝まで草むしりをしていた農場の依頼が出ていたので、それを受けて日が沈む前に着くように走って向かう。

走りながら残りの4個の果実を食べ、老婆の家に着くとドアを叩く。

「すいません!ギルドの依頼できました!」

すると静かに老婆がドアを開けて答える、

「そうかい、昨日と同じく期限は日が昇るまでだ」

そう言う老婆に私は頷くと老婆は家の中に戻りドアを閉める、私は昨日よりもより早く作業を効率的にやるように試行錯誤しながら草むしりを始めた。



 日が登っても私はまだ作業を続けていた。

まだ作業は3/4しか終わっておらず一心不乱に草むしりを続ける。

 すると後ろから声がかかり昨日と同じようなやりとりをした後にギルドへ戻り大銅貨を貰う、そして果実を買い、建物の間の日陰で眠り再び老婆の依頼を受けて作業をする、それを6ヶ月続けた。

途中で老婆に体が臭いので水浴びをする様に言われ、山に流れる川の位置や途中途中で生えている野草や毒キノコの見分け方、獣道の見つけ方や森で迷わないように右手で草を折りながら進むなど色々な知識を老婆が教えてくれた。


 そんなある日ギルドで茶髪で赤い目の少年と白髪で黄色い目の少女に声をかけられた。

「おい!お前ブランクって言うんだってな、そんな毎日農場行ってても良い暮らしなんて出来ないぜ?俺たちと一緒に狩りに行かないか?」

そう言って肩を掴んでくる少年に少女は

「ちょっと、やめなよ」と止めに入るも私は答える。

「今日はこれから農場に行かなければ行けないので…明日でも大丈夫ですか?」

 すると少年は広角を上げて犬歯を見せ付けるように笑った後に答える。

「もちろん構わないぜ?んじゃ明日の昼にギルドに集合な!」そう言って少年と少女は立ち去る。

私は昼とは何だろうかと考えると以前老婆が大体日が真上に登ってくる頃が昼沈んだら夜、登ってく頃が朝だと言っていた事を思い出す。

どうやら老婆は自分が教会の出身と気がついていたようで当たり前の言葉を知らないだろうと思いわかるように説明してくれていた事を山を散策している時に聞いて驚いた物である。



 農場まで走るのも慣れた物で特に苦も無くギルドからほぼ全力疾走で通えるようになっていた。

「婆さん」

そう声をかけると老婆は不思議そうにこちらを見て首を傾げる。

「私、明日ギルドで狩りに誘われたので一緒に狩りに行ってきます」

そう言うと老婆は数秒目をつむり「ちょいと待な!」と言い家の奥に入っていく、そのまましばらく待っていると老婆は木の棒を持って出てきた、

「これを持って行きな、何も無いよりはマシだろうよ」

そう言った老婆から私の膝から指先までの長さ程ある鋭利に先端を尖らせた木の棒を受け取り感謝を伝える「ありがとうございます!」

すると老婆は珍しく微笑み私に声をかける

「あんたはもう立派なギルドの、人間だよ、何処に行ってもやっていけるだろう。次から私の依頼を受けるんじゃ無いよ!こう言うのは何も経験の無い新人がやるべき依頼なのさ、あんたはもう一人前だよ!今日の、依頼は達成って事にしておくから明日に備えて身体を休めておきな!」

そう言い私はその有無を言わせない瞳の力強さを見て、差し出された証明書を受け取り木の棒で自らのボロボロのズボンに穴を開ける。

余った腰紐で落ちないように固定し180°回転して老婆の元から立ち去る。

互いに頬を濡らしながら。

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