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11.興行。

***前回のあらすじ***

リクは途中で知り合ったアンデルベリー一座と共に王都に向かう事になった。一座の歌姫、ヴィエラはリクのぼさぼさの髪を切ると言い出す。リクはヴィエラに詰め寄られ、自分の瞳の秘密を明かした。その目を見たリュートは1つのお話を歌い聞かせてくれる。それは、人間に憧れ、人間になったという紫色の眼を持つ竜の物語だった。


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※文字数2201字です(空白・改行含みません)

「あのぅ……。ヴィエラさん、本当に前髪切っちゃうの?」

「大丈夫だって! リクの瞳はとても綺麗だもの。隠すことないわよ。文句言うやつが居たら殴ってあげるわよ。寧ろこんなもさもさした髪してる方が目立つし陰気に見えちゃうじゃないの。私達と一緒に行くんだからもう少し身綺麗にして貰うわよ」


 翌朝、僕は結局ヴィエラさんに押し切られ、宿屋の庭でヴィエラさんに髪を梳かされ髪を整えて貰っていた。鼻の頭に掛かるくらい伸びていた前髪をヴィエラさんがハサミでジョキジョキ切っていく。頭がすーかすーかする。


「はい、出来たわ。ね? さっぱりしたでしょう。この方がずっと素敵よ、リク」


 ヴィエラさんが差し出した鏡には、すっきりと短くなった髪に色違いの僕の眼がしっかり映っていた。落ち着かない。本当に大丈夫かなぁ。リュートさんのお陰で少しは好きになれたとはいえ、右と左の色が違うのはやっぱり目立つと思うんだ。今更言ってもどうしようもないんだけれど。

 散髪を終えると、ヴィエラさんは僕の手を引っ張って街へと繰り出していく。リュートさんも荷物持ちにとつき合わされた。ヴィエラさんが向かったのは服屋だった。あっという間に服を見繕われ、試着をさせられた。ひざ丈のズボンにシャツとベストは綺麗な刺繍が入っていて、楽師らしく華やかだ。揃いの刺繍の入ったケープまで付けてくれる。


「ヴィ……ヴィエラさんっ、駄目ですって、こんな高いの買えないです!」

「良いって言ってるじゃないの、私が勝手に買ってるんだから、あんたが気にする事ないの! 馬車のお礼だと思って取っておきなさいよ。子供が遠慮なんてするもんじゃないわ。それに私達が演奏をする時はあんたにも手伝って貰うんだから、あんな恰好だと私達が困るの! 文句を言わない!」 


 そうは言っても、こんな高価なもの、着たことが無いから緊張する。汚しでもしたら大変だ。そのまま着て行けと言われたけれど、僕は落ち着かないからと元の服に着替えた。


「さぁ──って、次は靴を見なくちゃね! 服が良くても靴がそれじゃ台無しだわ」

「ええええ……」


 まだ行くのか。僕とリュートさんは、その後もあっちこっち引っ張りまわされ、買い物を終えた頃には夕方になっていた。宿屋に戻る帰り際に、修理を頼んだ馬車の様子を見に行く。鍛冶屋に着くと、丁度修理が終わった所だったらしい。これで明日の朝にはここを出発出来る。


 明日取りに来ると伝えて、僕たちは宿屋へと戻った。


***


 翌朝、鍛冶屋に馬車を取りに行くと、馬車はすっかり直っていた。僕も幌付きの荷台に乗せて貰う。アンデルベリ一さんが御者をする馬車は、ガタゴトと走り出した。


「今いる場所がここ。王都に向かう前に、この街に寄って、それから王都に向かうのよ。今日の夕方には街に着くから、明日興行をして、明後日の夜に街を出発、王都に着くのはお昼くらいになるわ」


 大変だったけど、やっと王都に着く。フィリは王都の何処にいるのかな。やっぱりお城だろうか。王都についたら、まずはお城を目指そう。


***


 予定通り、夕方に次の街へと到着する。僕達は、宿に部屋を借りた後、馬車に乗って広場に向かった。この街の中央には噴水のある広場があって、子供が水浴びをして遊んでいたり、色々な大道芸の人が集まって興行をしている。屋台も沢山出ていて、ヴィエラさんが果実水を買ってくれた。同じく屋台で買った薄いパンに野菜や焼いた肉をたっぷり詰めて甘辛いソースを掛けたものを、お昼ご飯に食べる。凄い美味しい。

 食事を終えると馬車の幌を下ろして、馬車の中で着替えをする。先にアンデルベリーさんとリュートさんと僕とで着替えて、ヴィエラさんは後から着替える。ヴィエラさんが先に着替えると馬車の外で待つ間に良からぬ連中に声を掛けられてしまうらしい。危険防止なんだって。


 綺麗な服に着替えた僕らに、何が始まるのかとお客さんが集まってきていた。小さな子が僕を指さすのが見えた。ちょっと怖くなったけど、リュートさんが僕の肩に手を置いてくれて、僕は何とか気持ちを落ち着けた。


 馬車の中から、澄んだ歌声が響きだす。周囲が声の主を探す様にざわついた。幌のカーテンがふわりと開いて、ヴィエラさんが馬車から歌いながら降りて来る。リュートさんがその歌声に重ねる様に竪琴をつま弾いた。ヴィエラさんは異国の服を着ていた。絵本で見た砂漠の国のお姫様みたいだった。吟遊詩人の装いで女の人みたいに綺麗なリュートさんと、異国のお姫様みたいなヴィエラさん。神秘的なヴィエラさんの歌声と竪琴の澄んだ音色に、お客さんからため息が漏れる。

 1つ曲が終わると、ヴィエラさんがにっこり笑って両手を広げ、後ろに下がる。それに合わせ、竪琴をつま弾きながらリュートさんが前に出て、静かに物語を紡ぎ出す。僕に話して聞かせてくれた、紫の瞳の竜の話だ。お客さんがちらちらと僕の方を見るから、僕は凄く恥ずかしかった。

 リュートさんのお話が終わると、アンデルベリーさんも加わって、楽しい曲が流れ出す。僕もヴィエラさんが貸してくれた鈴をリズムに合わせて鳴らした。お客さんはあっちこっちで手を取り合って踊り出す。興行を終えると、楽し気な笑い声と拍手がいっぱい沸き起こって、次々に投げてくれるお金を僕はアンデルベリーさんの帽子の中に拾い集めて行った。お客さんから、「楽しかったよ、ありがとう」と声を掛けて貰えたりして、僕は胸が暖かくなった。

ご閲覧・評価・ブクマ 有難うございます! 総合評価500pt超えました!ブクマ200件超えました!感謝感謝です。王都まで後ちょっと。ちょっとそのシーンまで書きたいので、次の更新は早ければ今日の深夜、遅ければ明日の夜になります。

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