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第12節 圭太と委員長は手分けをして校舎の中をくまなく探したが……

 圭太と委員長は手分けをして校舎の中をくまなく探したが美々面の姿はどこにも無かった。

 二人は昇降口で合流すると上がった息を整える間もなくこれからどうするか相談を始める。

 圭太の携帯に先生からの着信があったのはそんな時だった。


「……どうだ、あの子は見つかったか」


 先生の声は気だるげでまるで寝起きの人間のようだった。


「い、いえ、校舎の中を探してるんですけど全然見つからなくて」


 圭太の言葉に先生はそうか、とだけ答えるとひどく長い息を吐いた。

 そしておもむろに言った。


「さっき、あの子から連絡があった」


 圭太は驚いて聞き返す。


「本当ですか」


「ああ。あの子がいるのは屋外だ。

 コンクリート造りの、大きな建物の屋上の様なところだ」


 圭太は先生の説明にどこか違和感を覚えつつもすぐさま条件に合う建物の候補を頭の中で絞り込み始めた。

 学校の付近は住宅街で小さな戸建てが多く大きな建物は少ない。

 それでいてコンクリート造りとなると候補に挙がるのは、


「ここの屋上、じゃないの?」


 横で話を聞いていた委員長が呟いた。

 圭太はありえる話だと思った。

 この付近で条件を満たしている建物といえばこの校舎くらいのものだ。

 圭太はクラスメイトたちが話していた屋上の人影の噂話を思い出した。

 あの噂話を信じるとすれば、閉鎖されているはずの屋上に誰かが出入りしていたことになる。

 美々面が屋上に連れて行かれていたとしてもおかしくないのかもしれない。


「屋上に行ってみよう、委員長」


「う、うん」


「どうした。場所が分かったのか」


 電話口から聞こえる先生の声に圭太は答える。


「ここの屋上にいるかもしれないんですよ」


「学校の? そうか、そうかもしれんな。

 分かった。私も今からそっちに向かう」


 電話を切ると二人は屋上に続く階段を駆け上った。




 校舎内から屋上へと出る扉は閉まったままだった。

 鍵は内側からしか掛けられない構造でちゃんと施錠もされていた。


「屋上には誰も出ていないみたいだね」


 委員長が落胆して言った。


「いや、噂だと鍵が掛かっている屋上に誰かがいたって話だった。

 どこか別のところから屋上に出れるのかもしれない。

 探してみよう」


 二人はどこかにあるかも知れない屋上への入口を探して校舎の中をしばらく歩き回った。

 しかし結局屋上に出れる扉は一箇所だけだった。

 扉の前で立ち尽くす二人。

 ずいぶん歩いたせいか二人の顔には明らかに疲労の色が見えた。

 

「おい、何をしている」


 突然二人に声を掛けるものがあった。

 見回りの教師に見つかったか、面倒なことになったな、なんと言い訳しようかなどと思いつつ振りかえるとそこにいたのは「先生」だった。


「あの子は見つかったのか」


 圭太は先生に状況を説明した。


「とりあえず屋上を確認してみよう。

 鍵も持ってきてある」


 先生の手には職員室から持ってきた鍵が握られていた。

 筋張った先生の手が扉を開け放つと、冷たい外気が一気に校舎内になだれ込んで来る。

 屋上では強風が吹いているようだった。


「用心しなさい」


 先生は小声で圭太たちに呼びかけた。

 三人は明かりも無い真っ暗な屋上にゆっくりと踏み出していった。

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