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セレナ

 

 ユーナの部屋から出た俺はそのままの足でセレナの部屋まで行きドアをノックした。


「はい?」

「俺だ、イッキ」

「い、イッキか。ちょっと待ってくれ、今片付けるから」


 部屋の中でセレナがドタドタと何かを動かす音が聞こえる。何を片付けてるんだろうか。意外と部屋が散らかってるタイプなのか?

 そんなことを思っていたら部屋の扉が開いて、部屋着のセレナが少し頬を赤らめながら俺を招いた。むむ、可愛い。


 セレナはこの国の騎士団の若きエースだった。その類稀なる武力が見込まれて、勇者の一行として加わることになった。

 金色の長い髪に美しい顔立ち。騎士団の姫だのなんだの言われていた彼女だが、何故か俺のことが好きらしい、分からん。


 そんなセレナだが性格は至って生真面目で騎士らしい。旅の時もいろいろと俺たちを導いてくれることが多かった。


「め、珍しいな。イッキが私の部屋を訪れてくるなんて」

「まあね、ちょっと言いたいことがあってさ」

「言いたいこと? なんだそれは」


 セレナなら、彼女ならそこまで取り乱しはしないんじゃないかと思う。いつも周りを気遣っているセレナなら俺の気持ちも慮ってくれるんじゃないか。

 そんな期待を胸に俺は話を切り出した。


「婚約の話なん――」


 ぱりん。


 俺が話そうとした途端、セレナが手に持っていたマグカップを落として割ってしまった。


「す、すまない」

「あ、ああ大丈夫か?」

「婚約の話と聞いたら思わずびっくりしてな」


 セレナは溢れたところを拭き、割れた破片を集めながらそう言った。

 なんだか嫌な予感がするな。嫌な予感してるの俺だけ? だって今俺全然話ししてなかったよね。なのに彼女婚約って聞いただけであんだけ動揺するってやばくない?


 セレナは全てを片付け終えると再び椅子に座った。そして何事か深呼吸を二、三回した。


「それで? 子供は何人にするんだ?」

「へ?」


 今俺の聞き間違いじゃければ子供の数訊いてきた?


「こ、子供だ。何回も言わせるな恥ずかしい。やはり私としては強い男児が欲しいな。けど、あれだぞ? もしイッキが女の子の方がいいのならその分たくさん産まないとなやはり家族というのはたくさんいたらそれだけ楽しいだろうからなああそうだそういえば名前は何にしようか私としては男の子だったら私たちと少し似せてイッセイとかどうだろうかふふ少し気が早いかなでもこういうことはやはり早めに考えていた方がいいと思うし何より――」


 あ、ダメですねこれ。全然まともじゃなかったみたいですねセレナさんも。ちきしょうどうなってんだよ俺のパーティはよぉ。もう泣きたい。

 けど頑張れ俺、乗り切るしかないんだ。断れ、頑張ってセレナの求婚を断れ!


「あのな、セレナ。婚約の話なんだけど、実はもうユーナには断るって答えたんだ」

「ん? ユーナ? そうかあいつにはもう断りを入れたのか。くくくざまぁないなあの小娘。いつも私をビッチだのなんだのと言っていたのがいい気味だ。やはり正義は勝つ、と言ったところか。ふふふ」


 いえ、言うんだ俺。


「う、うーんそれでだな。あのですね、大変申し上げにくいんですが」

「あ、そうだイッキ。もう子作り始めようそうしよう今までは魔王を倒す目的があったし結婚前だから我慢してきたがもう婚約が決まったなら別にいいだろう私は初めてだから優しくしてくれると嬉しいがイッキが激しくしたいならべ、別に構わんぞふふじゃあ早速始めようか」

「ちょ、おいってうわっ」


 セレナはいきなり俺をベッドに押し倒した。今は彼女が俺に馬乗りになっているような状態だ。まずい、非常にまずい。俺だって男だ。流石にこんな事になると色々と反応し始める。


 さっさとこんな状態から抜け出さないと。

 そうは思うんだが流石は女騎士。ちょっとやそっとの力じゃ全く動かん。そうこうしているうちにセレナが服を脱ごうとし始めた。まずい、もうしょうがない言おう!



「セレナ、聞いてくれ! 俺はお前とは結婚できないんだーっ!」



 言った。言ってやった。もうどうにでもなれ。そう思って目を瞑った俺だったが、セレナの動きを感じられなかったので目を開けた。

 するとそこには俺に馬乗りになりながら大粒の涙をこぼしているセレナの姿があった。なんだこの構図。


「なんで? なんでなんでなんでなんで。やっぱりイッキはこういう色仕掛けみたいなのは嫌いだったのか? だったら謝るから、謝るから許して。もうしないからもう絶対しないから! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 セレナは泣くのをやめないただひたすらに謝り続けている。困ったなどうしよう。

 とりあえず俺を拘束する力は弱くなっていたので彼女から脱出した。そしてベッドから起き上がって少し歩こうとすると、セレナが俺の手首を掴む。

 え、ちょ、何?



「私を、捨てるのか?」



 セレナが涙を流しながら俺の目を見つめてそう言ってくる。その瞳はさながら敵陣のど真ん中に裸で置いてかれた戦士のようで。

 つーか捨てるって何? 俺セレナのこと拾ったっけ? 拾いますよー的な感じで拾ったっけ?


「は、ははは。何言ってんだよ捨てるとかよくわからん。俺とお前はこれからもずっと仲間さ」

「……そう、か」

「うん、まぁそういうことだからさ。セレナ、ごめんな」

「ちなみに相手は誰なんだ……? ユーナかそれともルリか?」


 やっぱりそれは聞きたがるんだな。まあでもユーナも言ったら案外あっさりと引き下がってくれたからな。


「いや、リーフィア姫だ」

「……ふぅん」


 セレナは俯いているために表情は伺い知ることはできない。


「ふふ、姫か。なるほどな……それはやられたよ。なるほどなるほど、わかった。返事をくれてありがとうイッキ。これからも良き友でいてくれると嬉しい」

「あ、ああもちろん」


 俺はは差し出された手を掴み握手する。納得してくれた、のか?


「じ、じゃあ俺はこれで」

「ああ、おやすみイッキ」


 こうして俺はセレナの部屋から去った。なんか意外にも順調だ。これなんとかなるんじゃねえの?

 よしよし、最後はルリ、お前だ。

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