まぁ死にはしないさ
全5話です
「はぁっはぁっはぁはぁ」
「よ、よくぞこの私を倒した。勇者よ」
目の前には膝をついてボロボロになっている魔王の姿があった。
二年前、この世界で勇者だなんだと急にもてはやされた俺はなんだか知らぬ間に魔王を倒す役を押し付けられて冒険者となり様々なところへ旅をして、そして今ようやくその魔王とやらを倒すことができた。
「ふ……だがこの私を倒したところでまた新たな闇の――」
「うるさいさっさと死ね」
「ぐはっ」
俺は持っていた聖剣で魔王にとどめの一撃を刺してやった。
これで俺の長い旅も終わったのだ。
「やったねぇお兄ちゃん!」
ピンク色のツインテールの小さいロリっ子が俺に抱きついてきた。彼女はルリ。俺がお世話になっている家の娘で、勝手に俺の事をお兄ちゃんと呼んでいる。胸は小さい。
「こ、こらはしたないぞ」
そう言って俺たちの間に割って入ってきたのは金色の長い髪をした美少女、セレナ。王国の騎士である彼女はなんやかんやで俺についてきてくれている。胸は普通。
「そう言いつつセレナはイッキの腕を掴んで胸を押し当てているビッチ……」
「なっ! そ、そんなことはない!」
ボソッと毒舌を言うショートな金色の髪を持つ彼女はユーナ。もともと山に住んでいた彼女を俺が魔法が使えるとのことで連れてきた。胸は控えめ。
「ほら、くだらん事で喧嘩してないで帰るぞ」
俺は喧嘩しているユーナとセレナを抑えて魔王城を後にした。
魔王退治をして国というか世界は歓迎ムードだ。どこに行ってもちやほやされる。パーティの3人もとても喜んでいる。
だが、おそらく世界でただ一人、この俺だけが喜んでいない!
なんでかって? 簡単な話だ。俺はこの二年間の旅で様々な人たちと出会ってきた。
その中にはもちろん勇者の俺というステータスに引き寄せられたのか告白してきた女も沢山いた。
そんな告白を俺は旅の途中だからと断り続けていた。旅の途中で会った人たちならまだいい。だがそれがパーティのメンバーだったら?
そう、俺はこのパーティメンバーの3人全員から求婚されている。
普通に聞けば羨ましい話だと思うだろう。だがこの3人は他の女と違う。とても独占欲が強い。というか腕っ節も強いから断った時に何をするかわからない。
事実、一度ルリにお前とは家族同然だから結婚なんてしないと思う、と笑いながら言った事があった。どうなったと思う?
生まれるところからやり直す、そう言ってあいつは禁術を調べて転生しようとした。俺が嘘だよと発言したら、
「なんだー、そうだったの? ふふ、危うく自殺して転生するとこだった!」
とかなんとか言ってたがあの目はマジだった。そんな奴らの求婚を断るのだ。鬱になっても仕方ないだろう。
え? じゃあ誰と結婚するのかって? いや姫さまに決まってるだろ。可愛いし気立てはいいし何よりか弱い。
あいつらを全員振ったら、俺姫さまに結婚を申し込むつもりなんだっ!
なぁに大丈夫だ、死にはしないさ?