長男編
長男は一月の冬の朝産まれました。予定日の十八日に、産婦人科の先生に診察して頂いたのですが、「もうちょっとかな? 何かあったらいつでも来てね」と、家に帰りました。
二十日の夜、旦那と二人でゴロゴロしながらテレビを見ていました。時間は十一時を過ぎ、そろそろ寝ようとなりました。
その瞬間、体の中から『ぶちっ』と音がしました。そして、じゃあじゃあと水が流れていく感覚が……。
『破水』です。赤ちゃんを包んでいる膜が破れてしまったのです。
初めての妊娠で、情報誌や妊娠・出産の辞典のような本から、『破水』のことは知っていましたが、いざ体験するとパニックになります。
『このままどんどん羊水が流れちゃったら、赤ちゃんはどうなるの!?』と。
何となく初めての出産は、ドラマ等にある様に、陣痛から始まるものだと思っていたところがあるのです。
旦那に産婦人科へ電話して貰うと、既に済ませておいた入院セットを持って、病院へ向かいました。
病院までは車で十五分ほど。家から近いところを選んだのです。が、その十五分がとても長く感じられました。
だって、水道から水を出しっぱなしにしてるときのあの水の勢いが、自分の体の中で起こっていたのですから、不安で不安で仕方がなかったのです。
病院へ着いて一安心しました。このときはまだ、陣痛は始まってはいませんでした。
確か看護師さんと助産師さんがいました。ここは個人病院と言うのかな? 開業医? なので土曜の深夜なのでスタッフはそれだけ。二人とも若そうでしたが、優しくてしっかりとしていて、その道のプロって感じでした。いろいろ言葉かけや着替え、処置をして頂いてる間に気分が落ち着きました。
そうそう、尿道カテーテルを初めて体験しました。ちょっと痛かったけど、それよりも『尿道カテーテルを経験しちゃった〰〰っ』という気持ちの方が大きかったです。
あと下剤もやりました。下の毛の処理もしました。この辺りは情報誌に載ってる通りだったので、『本当にやるんだー』と思いました。
そんな感じで処置をして頂いてる間に先生が来てくださり、診察をして頂いてるうちに陣痛が始まりました。それが夜中の0時半くらいだったかな。
私は痛みには強い方だったので、姉たちや友人から出産の話を聞いていたけど、なんとかなるだろうと思っていました。
実際、最初はどうってことは無かったのです。「あっ、イタッ。でも、まだ大丈夫。まだ大丈夫。もっと痛いはずだし」この繰り返し。
ところが朝五時を過ぎたころ、猛烈な痛みになりました。お腹をぐいぐい押されてるような、内側から鋭い爪で抉られているような……。この痛み、人によって違うらしいです。(腰をハンマーで叩かれてる感じとか、お腹から西瓜が出てくる感じという人もいます)
思わず「いたあ〰〰〰〰い!!」と、叫んでしまいました。
助産師さんが慌てて駆けつけてくれて、「叫ぶと赤ちゃんが呼吸を出来なくなっちゃうから、叫んじゃだめですよ」と教えて下さったのですが、それどころじゃ無かったです。とても冷静にはなれません。
先生が診察をして下さったのですが、「子宮口が開いてないから、まだまだだねー」とおっしゃり、「いつ頃ですかね」と旦那が聞くと、「お昼頃かなぁ」との話でした。
『えっ? この痛みが昼まで続くの!?』泣きたくなりました。
ところがその一時間後、更なる痛みにぎゃあっと叫び、助産師さんに「まだまだですかねぇ?」と相談すると、「見てみましょうか。あら、開いてる! 産まれますよ」と、なったのでした。
どうも開き始めてから、急激にぐわっと広がるタイプの様です、私の体。それまではガッチガチに閉まってて。今考えたら、そりゃ痛いわな。
そしてその一時間後の七時過ぎ、長男は産まれました。ぐぬぬぬぬ~、にょろ~んって感触でしたね、産まれた瞬間。
体重は3460グラム。ちょっと大きめの赤ちゃんでした。初めて会った瞬間、恋に落ちたときのような気持ちになったのを覚えています。
日曜の朝に産まれたので、その日のうちに義父と、まだ元気だった実父と母が赤ちゃんに会いに来てくれました。
これが長男の出産エピソードです。
次男編へつづく➡