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魔族との初戦闘④

「剣に封じられていた、だと……? そ、そんなことが……!?」


 イザラムが震える声でそう言う。


『お前が信じようが信じまいがどうでもよい。それよりも我が忠告を二度も無視したのだ。覚悟は出来ておろうな?』

「……っ!」


 ドラゴンの鋭い視線に射抜かれ、イザラムは二、三歩後退った。

 俺達を子供扱いしていたイザラムがドラゴンに圧倒されている。次元の違う両者の遣り取りを見せつけられ、俺もルフィナも只々呆然としていた。


 不意に、イザラムが動いた。

 ドラゴンには敵わないと判断したのであろう、俺達に背を向けて森の中へと一目散に逃げ出した。


『―――良き判断だ。だが、相手が悪かったな』


 ドラゴンの目がギロリと輝き、口元からは鋭い牙が覗く。その口元に湛えたのは嘲笑だろうか? 暗いダンジョンから外に出たことで気が付いたのだが、ドラゴンの瞳、そして体表は、燃え盛る紅蓮のような赤だった。


 ドラゴンが口を大きく開け、息を吸い込む。




『―――滅せよ』




 ゴウッ!という凄まじい音と共に、ドラゴンの口から巨大な豪炎が放たれた。

 超高温の炎が森を薙ぎ払う。

 その豪炎に晒された森の木々は幹すら残さず忽ち焼失していく。

 

「うわぁぁっ!」

「きゃあっ!」


 凄まじい熱波は近くにいた俺達の元にも押し寄せた。

 焼け付くような風に当てられ、しばらく目を開くこともできなかった。

 そして、やや熱が引いたと思った頃に恐る恐る目を開いて驚いた。


 豪炎が通った部分、そこだけ、まるで線を引いたかのように森の木々が焼失していた。深い緑の中に引かれた土色の線は地平の果てまで伸びているようで、目で確認できる範囲ではどこまで続いているのかも分からなかった。

 500年前、ドラゴンの放ったブレスは街一つを易々焼き払ったと聞いているが、目の前の光景を見ていると、それが誇張でも眉唾話でもないことがハッキリと理解できた。


 そして、その土色の線の中に、小さくモゾモゾと蠢くものがあった。


「……う、ぐっ……」


 それは、今まさに灼熱の豪炎に晒されていたイザラムだった。全身が黒く爛れ、立ち上がる事ももままならない。もはや瀕死と言うべき状態だったが、イザラムは生きていた。


『ほう、我がブレスを耐え抜いたか、只の雑兵というわけではないようだな』


 ドラゴンがゆっくりとイザラムに近寄る。ドン、ドンと大地を揺らしながら。少しずつ近づいてくる地響きはイザラムにどのように聞こえているのだろう。イザラムには走って逃げるような力は残っておらず、ただ芋虫のように地をズルズルと這うことしか出来なかった。


「……当然だっ……。お、俺は十二魔将の、一人。……こ、こんな所で……」


 唇を噛みしめ、必死に生きようとするイザラムの頭上に、無慈悲な影が浮かぶ。


『―――知らんな』


 その影――ドラゴンの尾が、イザラムに躊躇なく振り下ろされた。

 ドスンッという音が大地に響き、イザラムはピクリとも動かなかくなった。


 

 圧倒的な強さと冷酷さ。

 まさに最強種と呼ぶに相応しいドラゴンの姿。

 それを目の当たりにし、俺もルフィナも身動ぎする事すらできなかった。


 イザラムにとどめを刺したドラゴンは、俺とルフィナの元に戻ってきた。

 巨大なドラゴンが俺達を見下ろす。

 その鋭い視線に晒され、俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 ドラゴンが口を開く―――。


『勇者よ―――、む、時間切れか』


 ドラゴンがそう言った瞬間、その巨体が霞みのようにフッと掻き消えた。


「えっ!?」


 急にドラゴンが消えた―――。

 何が起こったのか全く理解できず、俺とルフィナは顔を見合わせる。

 すると、今度はなんと目の前に美しい少女が突然現れた。

 さっきから何が起こっているのか、サッパリ理解できない。俺達がポカンとしていると―――。


「お、上手くいったわ。この姿なら魔力消費も少ないから顕現出来るみたいね」


 その燃えるような赤い髪を携えた美少女は、そんな言葉を口にした。


「あ、貴女は……?」

「あ、私? さっきのドラゴンよ」


「はぁ!?」


 サラリとそんな事を言う少女に、俺達は素っ頓狂な声をあげるのだった。

文字数が少な目になってすみません。

なかなかキリの良い所がなくて……。

次回、第一章のエピローグの予定です。

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