Dreamf-6.2 忠臣の鬼(A)
1
東都大学への進学率が高い公立校として有名な赤日谷高校にほぼ進学できるだろうと言われたことがある。もっともそれは中学二年の頃の話で、しかも高校受験という日が訪れる前に、円は死んでしまった。なのでそもそも入れたのかという事すら知る由もない。ただ、勉強は――好きではなかったが――得意ではあった。だからなのか、主要五教科程度ならば参考書で事足りていたりしている。最も、それが高卒認定試験の日までに高校三年の範囲まですべてこなせていなければならないのだが。
「あぁ……終わったぁ、中学三年!」
椅子の背もたれに体重全てを乗せて背伸びをする。中一の範囲の復習から中学の三年までの勉学を、たった一ヵ月少しで済ませられただけ凄い物だと、誰かに褒めて欲しい。
単純計算では後一か月で高校三年までの勉強が済むことができそうだが、そんなうまくいくはずもないと円自身でも分かってはいるので見積もってあと三ヵ月ぐらい必要だろうか。
――勉強せえや。
などと、SSC司令官に言われてはどう言い返すことも出来ない。
* * * * *
「は?」
「やから、勉強はせえや?」
突然何を言うのかと思えば、
「勉強?」
「おお」
「数学とか国語とか外国語とかの?」
「そうや」
ブリッジにて、そんな事を円に命じるのはベースボールキャップを被る糸目の老人。彼こそが、東アジア全域のビーストから都市の防衛を任されているSSCの司令官、吉宗正嗣である。
「何でです?」
「何でやって、勉強なんか出来て当たり前やないかい。せめて高校ぐらい卒業せな」
「つまり、高校受験受けろと? 受かったらどうするんですか? 毎日地上に降りて行けと?」
「お前がそうしたいんやったらそうしたらええで?」
「いや勉強しろっていうから」
「お前程頭ええ奴やったら高校なんて入らんでも高卒程度の能力出せるやろ」
「いやそれは言い過ぎでは?」
「何でや。中学の頃は模試で学年トップ。三教科は校内でトップやったらしいな? 中学二年始まり頃で」
「いやそれは中学の頃の話だし、さすがに高三って。昔先輩に高校の勉強メチャクチャ難しいって教えてもらってたし」
「やから勉強せえよ」
「勉強してどうするんですか?」
「せやな……いっその事高卒認定の試験でも受けたらどうや?」
「受けれるんですか? 僕」
「気にすんなや。いくらかの条件やったらウチで何とかしたるさかい」
「…………」
これが、〝権力の濫用〟というものだ。大学の裏口入学よりもタチが悪く聞こえる。そして吉宗がサラリとそんな事を言うのであれば、法に触れるような真似は無いだろう。誰も咎を与える事も出来ないという事だ。
当然円にもそれは出来ない事なので黙るしかなかった。
* * * * *
などと、その時の事を思い返す。調べてみたところ、中学を卒業していなければ受けられないようで、恐らく吉宗が何とかするというのはそこだろう。
そもそも中学を卒業していないという一六歳以上の人間が日本の中に実在するのか怪しい所なので、今の円の扱いがどうなっているのかも気になる所。
ふと、ついこの前給料で買った携帯のパネルに表示された時計を見る。
時刻は12:38。
日付は二月二日、日曜日。
昨日の夜からずっと勉強していたとするのならばよくも一二時間も集中力がもったものだ。勉強は好きではないが問題がどんどん解けていくうちに知らぬまにテンションもあがっていたのだろうか。
だがさすがに頭の使いすぎか、スピリットになって身体的な疲労に強くなっていたとしても精神的な疲れと言う物の感じ方は人間だったころからちっとも変っていない。
寝れば疲れもマシになるかと、
円はベッドで横になって目を閉じる。
思った通り、円の意識は微睡の中へ――
と、思った時部屋のインターホンが鳴った。。
居留守を使ってやろうかと構わず、
「zzz...zzzz......」
そしてまたコール音。しかも何度も鳴らされる。
せっかく気持ちよく眠りにつけそうになったのに一向に意識が落ちない。それにつれ、コール音が徐々に鬱陶しく感じ始めたので、ベッドから立ち上がりドアを開く。
「おお、マドカ!」
そこに居たのは、米国人の青年である、SSC所属ビースト殲滅部隊αチーム、〝チーム・エイト〟の副隊長、ケイス・レイリーであった。
「何用ですか、ケイスさん」
「何用って、昼飯行こうぜマドカ」
「だったらチームの人と一緒に行けばいいでしょう?」
「キャップは今筋トレ中だし、ファンは狙撃場だし? トシキは……見当たらねえし」
「それでいいのか副隊長……」
「任務以外ならやりたいときに勝手にやるのがウチのチームのモットーって奴だからな! 腹減れば腹いっぱい食う! ってなわけで行こうぜ」
「…………」
ただ単に昼飯を食べたくなったので、一人で食べるのもつまらないから円を誘ったという事であるようだ。
頭をガシガシと掻いてしばし考える。
当然、断る理由は無い。
「じゃあ待っててください」
と、円は部屋のテーブルの上に置いてある携帯と、引き出しの中にある財布を取り出し、部屋を出た。
ラウンジへと向かう廊下の道中――
「今日一日出動無くってなぁ、ちょっと暇なんだよなぁ」
「そんな事ってあるんですか?」
「いや、滅多に無いな。最低十か十一出るから最低三、四回だな。出動チームは基本ローテで回されるし」
「ふーん」
「で、今日は俺等がローテの一番手で一回も出てないってことは、」
「ビーストは出てないってことか」
「気楽でいいぜ。俺たちみたいなやつが、武器を取らないって事が一番の平和なんだからな」
なんとも皮肉な話だ。SSCは国家間で行う様な戦争で人に向けて銃口を向けてはいない。生き物の命を一方的に奪うビーストに銃口を向けているのだ。それで尚、普通の軍隊と変わらない。存在しない事が平和の証となる。
最も、だからと今すぐに解体される事にもならない。ただ殺されるほど人間も愚かではない。人間同士でさえ銃口を額に当て合って関わり合うというのだから、否応なく引き金を引くビーストが相手ならばこちらも引き金を引かねばならない。
そんな、人の心が無ければ一生をかけても解決されることのないジレンマ等どれだけ考えたところで無駄だと、余計な思考をそこで止める円。
「そういえば、日本にはセツブンってのがあるらしいな」
「節分? ああ、そういえば明日ですね節分の日。それがどうしたんですか?」
「何でも豆を歳の数だけ食べるらしいな」
「その前に豆まきですよ」
「マメマキ?」
「鬼は―外、福は―内って。ケイスさん知らないんですか?」
「俺はまだ日本に来て短いからなぁ。IAが発足されてからしばらくはUCAAに居たもんで」
「UCAAって、北米本部にある?」
「ああ、そこでも対ビースト殲滅部隊に入ってたな」
「最強の軍隊なんでしたっけ?」
United states
Creature
Assault
Attackers
IA(Internnational Aegent)は北米に本部がある。その北米の対ビーストの防衛を担っているのが、UCAAだ。
曰く、「人類史上最強の軍隊」であるらしい。普通ならば、強化体のビーストが出現した場合、防衛軍の全殲滅部隊が投入されるのだが、UCAAの場合はそれが相手であっても一部隊で事が足りてしまうらしい。
そしてそんな部隊が六隊も編成されているのである。
「本当に最強だな、あれは。ジャスティス・リーグとアベンジャーズが手を組んだのかって思っちまったぜ」
「凄まじいな、それは」
もはや人類支配すら出来るのではないかぐらいのオーバーな表現である。そこまで強いならばもうUCAAだけで地球防衛をすればいいのではと思ってしまう。
ジャスティス・リーグと聞いて、ふと、ケイスがスーパーマンの恰好をして飛んでいる姿を思い浮かべてしまった。
「ぶふっ」
瞬間、思わず吹き出してしまった。思った以上にツボにハマった。
「どうした? マドカ。何笑ってんだ?」
「いや、別に?」
「……? まあ、そんな化けもんばっかだが、お前の強さには程遠いだろうがな」
「ええ……まぁ……」
返答に困った円は話を変える。
「日本に来て間もないって言うのに、日本語上手いですよね。イントネーションもしっかりしてるし」
「ああ、ガキの頃は日本に住んでたからな」
「……? なんか矛盾してません?」
「ん、何が?」
「だって日本に来て間もないってさっき言ってたじゃないですか。節分も知らないって」
「ああ、知らないぜ? ガキの頃は半年ぐらいだけだったしな。確か四月から十月ぐらい。俺の親父が沖縄の駐在米軍に居たからな。それについてきて半年ぐらい一緒に暮らしてたんだ。そこで友達が何人か出来てな? アメリカに帰った後はネットで何回も通話してたから覚えた日本語は忘れなかったんだ」
「へえ……」
そんな、やり取りをしている最中に食堂ラウンジへと着く。
一二時から二〇時までならばいつもテレビがついている。しかもいつもの44型型テレビではなく、世界最大サイズの200型テレビがなので、映画でも見たいという気分にさせる。もちろん、円はまだそんな事したことが無い上そんな事をする度胸は無い。どんな顰蹙を買うか分かったものでもないからだ。
チャンネルは日本の関西のお昼のバラエティ番組。
駅周辺の一押しグルメの特集がやっていた。
ケイスと円は各々カウンターで食事を購入。円は和風ツナマヨパスタで、ケイスはLサイズハンバーグとごはんを買い、カップサラダを付けた。そしてテレビが見やすい所の席に着く。バラエティ番組でやっている特集をネタにしておしゃべりもしていれば時間などすぐに通り過ぎる。
が、もうすぐCMが入ろうという所。番組のテーマ曲が流れると同時にVTRが終わり、CM――
『お昼のニュースです――』
と思ったがニュースの時間だった。
『本日正午、神奈川県鎌倉市滑川沿岸にて首を切断された二十代の女性の遺体が発見されました』
そして画面は警察が遺体発見現場で調査している場面へと移り変わる。
『本日の正午、神奈川県鎌倉市、滑川沿岸にて、首を切断された二十代女性の遺体が発見された件について、今日で同様の殺人が四件発生し、その殺害方法から見て同一犯によるものだと警察が調べています。死体検証の結果、殺害時刻は昨晩の十一時半ごろから十二時の間であるとして、現場上流付近での住民への聞き込みなどをして、調べを進めています』
「ギロチンかよ。日本の殺人も怖いもんだなぁ」
「そんなものどこの国でもそうでしょ。僕だったらアメリカの方がそういうの多いって気がしますけど」
「犯罪の数は間違いなく超えてるな。エグイのは……まぁ、対比的にはどっこいどっこい?」
「多いんじゃん……」
犯罪の数は多くてその内残虐性が高いのが対比的には同等であるというのであればアメリカのほうが多いはずだ。
円はフォークを絡めたパスタをクルクルと回し、取り損なったキノコとツナをフォークに刺し、一緒に口へ運ぶ。
今日はスカイベースが作られてスカイシフトに入っていた当初から務めていると言われる、食堂のおばちゃんが作ってくれているらしい。
上手い食べ物を、腕がいい料理人が作ると上手いよりも一つ上の味になる。日本語でおいしい食べ物の味を上手いとしか表せないのが惜しい所だ。
がっついて一気に食べきるのももったいないのでしっかり噛んで味わう。
円と向かい合って座ってハンバーグをバクバクと食べているお兄さんとは違う。おかわりする気なのだろうか。
「お、よく食うな、ケイス」
とつぜん、その声とともに巨大な気配を感じ取った。
「……ッ!? キャップ!?」
そしてケイスが食べ物を飲み下しキャップと呼んだことから、ケイスが所属する部隊の隊長である本木大吾である事が分かった。
ふと振り返ると筋骨隆々とした男が、その片手にお盆を持って今日の昼食を持っていた。
先ほどまで筋トレをしていたためか冬であるというのに袖をまくっていた。
本木はケイスの横の席に座る。昼食は照り焼きビーフバーガーとフライドポテト、飲み物はサッサと飲めるアイスコーヒーである。
昼食に手を着け始める本木。
「キャップ? もういいんですか? 筋トレ」
「いや、ご飯を食べてから出動でもない限りはもう四時間は続けるつもりだ」
つまり夕方までやるつもりだ。一日中である。
「筋トレがお好きなんですね、本木さんは」
「体を動かしていないと落ち着かないだけだ」
と、ハンバーガーを片手にポテトを一本とって口に運んで租借し、飲み込む。
「どうだ、円とケイスもやらないか?」
「いや、僕は……」
「キャップ、マドカはスピリットですよ? 機材壊すでしょ。あのジムの機材の六割、キャップが買い込んだんでしょ?」
「だったら、壊れたらまた買い直せばいいだけさ」
と、身を乗り出す本木。
「で、どうだ? 一緒に体を動かせば、親交も深まると思うんだが?」
「ええ、まあそうでしょうけど……」
「けど何だ?」
「僕だったら、体動かすなら筋トレよりも格闘術の方が……」
「いいだろう、付き合おう」
「キャップ!?」
本木の即答に何を驚いたのかケイスが止めに入ろうとする。
「何でだ? 前の俺たちじゃスピリットと手合わせなんてできなかっただろうさ。今ならできるだろ? 貴重な経験だじゃないか。これからだって強力なビーストとやりあうには、十分すぎる対策だろうさ」
が、何を言うのかを先に読んだ本木が口を入れる。
だがその答えに対して顔を青くして何を想像したケイス。
「キャップの筋肉がつぶれるところなんて見たくない……」
「おい……っ」
思った以上に物騒なことであった。
「水風船みたいにベチャッベチャッて」
「大袈裟だなぁ。なあ? 円」
突然話を振られ、円は「まあ」と答え、
「多分。今の僕じゃ出来ないかなって」
「ほらな。ご飯食べ終わったら、闘技場に集合にしよう」
そうして、ご飯後の予定が決まった。
確かに勉強ばかりでしばらくしっかりと体を動かす機会がビーストとの戦い以外無かったものなので、気軽に体が動かせるものだと、円は内心、賛成の意を持った。
「へぇーい」
「ん?」
「了解です」
気だるそうな返事をするケイスに少し圧がこもった声で答えた本木に、ケイスは返事をし直した。やはりというべきか、最前線に出るだけあってチーム自体が体育会系であるようだ。
2
円が思う、「スピリットになってよかった事」の一つに、「体が頑丈になった」というのがある。
力を解放すれば地面や山を粉々にするほどの一撃を受けて尚立っていられるが、解放していない場合では人間よりも少し体が頑丈であるという程度で、例えばマンションの五階ほどの高所から体を打ちつけても少し痛い程度で平気である程度であった。。
言い換えればそれ以上は痛いでは済まない可能性がある。
故に、本木の腰の入った拳は受けてはならない、と、
「くっ――!」
こめかみをを穿つ拳を捌き、
カウンター――
と、踏み出す事は無い。
「ゼァッ!」
「ちッ――!」
踏み出せばボディが飛んでくる。
しっかり受け流したはずなのに、受け流した腕から鳴る音が重い上、
円も少し体勢を崩しそうになる。
そしてもう一撃、
円の顎下を真横から穿つ――
「ッ!」
今の体勢ではもう一撃は受け止めきれない。
スッと身を下げて交わす。
この時、もう片方の手で逃げた先から拳を撃たれてしまっては意味がない。
動きを制しておく。
そして、今度はもう一撃を与える事も出来ないところへと完全に躱しきる。
本木の体の斜め後ろ。
攻撃をした後の、ほんの少しの隙。
「ハッ!」
倒す気で行かなければいけない、と、円は裏拳を本木の首筋へと――
「――ッ!?」
本木は円へと体を密着させる形で一歩後ろへと下がる。
すでに拳は振るわれてはいるが完全に狙った所とは違う。
拳は、本木の顔の横の空を穿つ。
そして完全に伸びきった円の腕を掴んだ本木は、
「デアッ!!」
円の脇を掴んで腰に乗せ――
「ぐあッ!」
瞬間、円の視界がグルッと反転し、定まったときには天井を見上げていた。
投げられた。
本木は円が頭を地面に打たないように腕を引き上げてくれていた。
「いい反応だ。人間だったころから研鑽されていたのが分かる」
などと三分近い手合いだったというのに涼しい顔をしてしている本木。
手合い初めからここまでの図が見えていたのかとさえ思えてしまう。
「強い……」
「当然だろ」
と、ケイスも手を差し伸べてきてくれるので、それを掴む。
二人に体を引き上げられ、上半身だけを起こした円は地面に両手をついて二人の顔を見上げた。
「伊達に隊長してる訳じゃないんだよ、この人は」。
二回も手合いをして一度も勝てない円――どころかケイスも三回も挑んで本木を地面に伏せることさえ出来ていない。技術もそうだが何よりもパワーに圧倒されて取りつくことが出来ないのだ。どのタイミングで間合いに入ればいいのか分からない、ぐらい隙が無い。友里とはいい勝負を繰り広げそうだ。
「まあ、これが出来てもビースト相手には中々通用しないものだ。悪人を取り締まる程度なら、使えそうだが」
と、本木は自嘲的に笑った。
投げられる際にねじられた肩と手首を振り、立ち上がる円。
「さあ、分かりませんよ? もしかしたら人型のが出たりするかも」
「まさか。それは相手し辛さそうだ」
「何でです?」
「人の形をして動く奴に引き金を引くのは好きじゃないんだ。気持ちは分かるだろ」
「まぁ、なんとなくは」
気持ちは分かる。
だが、円の場合は少し違う。
手合いや組合いなど、正式なスポーツの試合形式で戦うのならばまだいい。どちらにせよ寸止めである上、お互いがそれに合意しているのだから。
「よしっ」
本木と向かい合うケイスと円。
「こんどは二人でかかってこい。まとめて倒してやる」
「まだやるんですか……」
思った以上に、本木は楽しんでいるようだ。
本木が望むなら、と、
ケイスは円の肩をトンと叩き、言葉無く「やるぞ」と意志を伝えてきた。
もうすぐ第六ラウンドが行われようとしたとき、闘技場の出入り口のドアが開く。
「おお、精が出とるやないか」
「コマンダー!」
入ってきたのは吉宗であった。
「円と手合いとはなぁ、どうや? 大吾」
「センスは申し分ない。荒削りですが、鍛錬を積んでいたんでしょう。ビーストとは格闘術で戦う円ですから是非磨いてやりたい」
「おお、なら円の訓練係はおまえに任せてもええんか?」
「ええ、喜んで」
その吉宗と本木とのやりとりの中に円の意志はどこにもない。すべて勝手に決められた。ただ、戦いの中で生き抜く上で技を磨くのは大切なので拒否する気はない。コミュニケーションをかねて体を動かすことも出来そうなので悪いことはない。
あえて言うなら、やはり決定に円の意志が介在していないことだろうか。
「で、コマンダー」
「ん?」
本木、話を切り替えさせる。
「わざわざそんな事を言うために来たんですか?」
「そうやったな……」
一拍おかれ、
「任務や」
と、一言、告げられた。