捕獲
だいぶ空いてしまいました…
次投稿は3ヶ月以内に収めたいですね…あの「この小説は〜」のやつが出ないうちに投稿したい…!!
店を出ると先輩の目の前には白と黒のよくあるメイド服に身を包んだ女の人がいた。切れ長な碧い瞳、モデルのような容姿、金髪ショートカットに白いカチューシャをした超がつく位の美女だ。
メイド服の女は無機質な声で先輩に言った。
「見つけましたよ、お嬢様。さあ、帰って学会の準備をしますよ。」
射るような、これまた無機質な目で先輩を見つめる。
見つめられた先輩は…逃げた。
「なっ、お嬢様往生際が悪いですよ!日本へは遊びに来たんじゃないんですからね!」
メイド服の女は先輩の首根っこを掴む。見た目とは裏腹に随分乱暴ですこと。
掴まれた先輩はぐえっと蛙みたいな声を上げた。
「ヤダー!まだ遊ぶのー!」
「駄目です。明日の学会の準備をしますよ!」
「マキナやっといて!」
「またそんな事を仰って!いい加減に帰りましょう!」
俺すんごい空気。しかも何故か店頭でこんなに大騒ぎしてるのに誰も気付かないし。金髪碧眼の美女と狐面が暴れてたら嫌でも注目を浴びるだろうに。これもきっと先輩のお面と関係があるんだろうか。
佇んでいると女の人が俺の存在にやっと気付いてくれた。
「!これは緑河様、お久し振りです」
メイド服の女は深々と挨拶をする。先輩の首根っこを掴んだまま。
「お久し振りですマキナさん。相変わらず大変そうですね、先輩のお守り」
「お言葉痛み入ります。ほんとにもう手がかかって…他の妹達が羨ましいですよ」
本当に大変なんだろうなぁ…顔に疲れが出ている。
当の本人である先輩はじたばたと暴れながら
「うー、こんなに口うるさいアンドロイドになるんだったら下手にハイスペックにするんじゃなかった!他の劣化品と同じぐらいに設定すれば良かったぁ!」
さっきからシスターズやらアンドロイドやら設定やら普通じゃない言葉が出ているからお気付きだろうが、彼女は正式名称をデウス・エクスマキナ、「機械仕掛けから出てくる神」の名を冠する先輩が作った超高性能アンドロイドだ。マキナというか名前はそこからとったらしい。
妹達というのは確実に人間と見間違う程の精巧さと動きの美しさ、滑らかさ、そして設定してやればお好みの性格(お淑やか系お姉さん、幼馴染みツンデレ、女王様と何でもできるらしい)すらも実装できる従順な人形で秘書などの細かい仕事からや護衛などの荒事、果ては夜のお相手として世界中の有力者やそういう趣味の人たちが買っていくらしい量産品(といっても殆ど見劣りしない)だ。
マキナさんは先輩が一番はじめに作ったそれらの初号機で研究の助手兼世話係となっている。ちなみに先輩曰く初めて作ったので初期設定をガチガチにしてしまったらしく先輩でももういじれないらしい。
「さあ、お嬢様帰りますよ。」
やだやだと駄々をこねる先輩を猫みたいに首根っこを掴んだまま小町通りを通ってゆく。女性の細腕でよくそんなことが出来ると思うがそこはアンドロイドだ。
そろそろ助け舟を出してやるか。
「あー、マキナさん。実は俺先輩に勉強を教えてもらう約束をしてまして…」
「そうなのですか?しかし今日は明日の学会の準備をしなくてはいけないので…」
「マキナやって!」
「はぁ?」
「だって約束は守らなきゃでしょ!信頼が大事だってマキナもいつも言ってんじゃん!」
「それはっ…そうですが…」
「だからー、マキナが学会の準備して私がその間緑河くんに勉強を教えるの。こうすればみんなが幸せ」
「…はあ、今回だけですよ?」
「やったー!」
大喜びではしゃぐ先輩。相変わらずマキナさんも甘いなぁ結局は先輩のわがままに付き合ってあげてる。
「なんかすみませんね」
「いえ、いつものことですから…
折角なので当家にいらっしゃいますか?」
「いいんですか?じゃあお言葉に甘えて」
先輩の家か。先輩が引っ越してからははじめてだな。昔は普通の一軒家だったが今はどうなってるか少し怖いけど楽しみでもあるな。
「じゃ、そうと決まったら早く帰ろう!」
「お車はこちらに停めてあります。さあどうぞこちらへ。」
こうして俺は久しぶりに先輩の家で勉強することになった。