表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こうじ君  作者: 秋山 魚
8/9

祖母の話

祖母の七回忌は、近所の寺で行われた。


祖母は、私が高校生の頃に、95歳で亡くなった。

ガンだった。もう歳が歳だったので、手術もできず、余命三か月と言われて三か月後に亡くなった。

部活の大会の後、帰宅すると祖母は冷たくなっていた。

しかし涙は出なかった。

余命三か月と聞いた時はボロボロ泣いたのだが、自分の中で覚悟ができていたのか、その時は泣かなかった。葬式でも泣かなかった。


三年ほど前から、祖母が夢に出てくるようになった。

内容はいつも同じで、祖母の食事介護をする夢。

現実にも何度かしたことがある。母が「悔いが残らないように」と私と弟にさせたのだ。

しかし、どうやら悔いは残っていたらしい。

夢の中で、祖母の食事介護をしながら、毎回私は「ばあちゃんはもうすぐ死ぬんだから、それまでいっぱい仲良くしよう」と決意する。

そして、決意した瞬間目を覚まして、祖母がとっくに亡くなっていることを思い出して虚無感に苛まれる。


寺には、たくさんの人が集まった。

父の看病の時にお世話になった人もいる。

お坊さんの声に合わせて読経する。


お経って、本当に意味があるのだろうか。

だって、もし私が読経される側だったら、どんよりと読経されるよりも、歌でも歌ってくれた方がいい。

しかし、それは私が生きているからそう思うのであって、死んでしまったら違うのかもしれない。

位牌に向かって、読経する。祖母はもう人間なんかよりずっと尊い存在になってしまったんだな、もう手の届かないところにいってしまったんだな。今更ながらそう思って、少しだけ視界が滲んだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ