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第八幕

「うん? 怪我はしてたみたいだが、回復魔法かなんかで応急処置がされてんな」

 デッドは、首を傾げる。意識を失ったグネーデルの怪我を確認していたのだが、傷口自体は既に薄くではあるがふさがり、銃弾などの異物も体内にはない。

「たぶん金月様のご加護かと! うっすら気配がございましたし! ありがとうございます金月様!」

 手を合わせて宙に祈るファルだが、雲に覆われて月は見えないのだがいいのか?

「月見えぬ時は心に抱けばよいのです! それでスミレ様の方は!?」

「骨は折れてねぇみたいだな」

 答えつつデッドがスミレの裂けた頬に軟膏を塗っていると、にゅるりと触手が手に伸びてきたので握り返しておく。

 幼い顔は打撲で膨れ上がって血に濡れて、デッドを見つめる瞳は弱々しい。

 ああほんと、口の中が苦くなるね。

 さて、ファルがスミレたちを感知してから、10分も経っていないか。とにかく彼女を確保をと車は自動運転に任せて降りた二人は、森や荒廃地など地形を強引に走り抜け、最短距離を一直線に進んだ。

 そしてスミレを抱えたグネーデルを見つけ、周囲にいた追手をミサイルで蹴散らしたというわけだ。

「ま、運ぶくらいなら大丈夫そうだ。頼めるか?」

「もちろん! おっと!」

 ファルが手をかざすと、周囲に半球形の障壁が現れ、四方から降り注いだ銃弾が音もなく弾かれていく。

 その辺りに転がった奴らと同じ、無愛想なローブに小銃、グネーデルたちへの追手がまだいたらしい。

「それを張ったまま移動は?」

「一面だけならいけますが、全周囲だと難しいですね!」

「分かった。そのまま維持しておけ」

 ファルにデッドが指示していると、今しがたミサイルで広がった炎に照らされて、2つの黒い影が砲弾のように空気を切って飛来する。

 ミサイルだ。もちろん、先ほどと同じくデッドが車から視線誘導で撃ったものだ。

 周囲に着弾し、爆発。燃え盛る草むらに、更に爆音と閃光が駆け抜ける。

「ひいい!」「足が、足がぁ」「腹が、なんで、血が」

 そして、追手たちの阿鼻叫喚が、辺りを満たすのにそう時間がかからなかった。

「ですからデッド様!」

 一瞬で地獄のような光景を作り出したデッドを咎めて、ファルは声を高くするが、

「ファル、今俺は機嫌がわりぃ」

「く、くそぉ! よくも、ぎゃ」

 デッドは、爆撃にも怯まず後ろから小銃を向けようとした追手の頭を、腰のホルスターから引き抜いたマグナムオートの拳銃で、振り返りもせず撃ち抜く。

 目を向けているのは、傷だらけで気を失ったグネーデルと、その腕に抱かれて浅い息を繰り返すスミレだ。

 怒りを口の中で抑えながら、デッドは語る。

「スミレは、俺のガキってことになっててな」

 まぁ始めはただ単に押し付けられただけの成り行きだが、それでもパンを無邪気に欲しがりメグプトとのんびり戯れる姿を数日眺めれば、情も湧く。

「それを傷つけられて、お行儀よくしろなんて話は聞けねぇなぁ」

「っ! お気持ちよく分かりますし、正しい怒りかと存じます! でも、それでも、どうか!」

 そうファルはその黒曜石のように鈍く輝く両手を合わせて、頭を深く下げた。

 ……たく、聖女様はこれだから、よ。まぁ100歩くらい譲ってやるか。

 ふぅっと息を吐いて、舌打ちと共に告げておく。

「死ななかったら殺さない程度はしてやるよ」

「それはっ! いえ分かり、ました!」

 ファルが歯を噛み締めて頷いたのを確認しつつ、デッドは周囲を警戒する。燃え盛る草むらの向こう、暗闇が満ちる平原からはまだ十数名以上の追手と思しき反応がある。

 こんなところでぼーとしてる暇はないな。

「とりあえずファル、車まで突っ切るぞ。先導する。こいつらに加護張って運べ」

「お任せあれ!」

 気を取り直したファルが、グネーデルとスミレを軽々持ち上げて両肩に乗せるのを背中で見つつ、デッドは進路方向の未だ暗闇に覆われていた草むらへ、擲弾銃を放つ。

 そして、駆ける。

「気づかれた! 守りを!」「いや待て! 来てるぞ!」「マジかよ! うわ!?」

 草むらに伏していた追手たちの守護の魔法と思しき障壁に、グレネードが衝突し爆発が起こる。

「しゃ!」

 そして爆風の端を強引に通り抜け、張られた障壁のすぐ横を越えたデッドは、抜き打ちで刀を疾走らせる。

 文字通り首が飛んだ。

「あっ」「う、うわぁ!?」

 仲間の首を打たれ、呆気にとられているもう一人の胸を突き、続いて銃を構えようとした別の一人の額を拳銃で撃ち抜く。

「ふざけやがってぇえええええ! なっ!?」

 更に長剣を振り上げ怒りとともに突撃してきた別の追手へ、足さばきで位置を変えつつ、胸を突き刺した仲間を蹴り飛ばして押し付ける。

「よっ!」

 その拍子に胸から引き抜いた刀で、まとめて追手二人の首を斬り落とした。

「う、うわあああ!?」

 足元に落ちた仲間の生首にビビり、最後に残った追手は恐怖に負けて転げるように逃げ出していく。

 その無防備な背中へ拳銃を撃とうとして、

「デッド様!」

 はいはい、分かりましたよ。

「とっとと行くぞ」

 デッドはぶっきらぼうに答えながら、全天周視界と熱源探知で周囲を確認する。すると、パラパラとではあるが追手と思しき奴らが、いきなりこのあたりに現れている。

 テレポートで転送されてきたであろう。無限湧きというわけではなかろうが、護衛対象がいる以上、いちいち相手をするわけにはいかない。

「皆さまと合流できればいいんですが」

「さっきここまで来るのに5分ってところだったが、今度は荷物と妨害付きだからな」

 そうファルに答えながら走り、ついでに擲弾銃を数発、熱源探知に引っかかった進行方向の追手たちへ撃っておく。

 爆発音とともに再び悲鳴と呻きが闇夜に増え、ファルの眉がきゅっと絞られるが、流石に文句はつけてこなかった。

 そのまま二人で闇夜を駆け抜ける。周囲は木々が増え始め林といった感じ。暗闇に加えてごちゃごちゃと生えた草で足場が悪く走りにくい。

 ただ幸い追手たちの追撃はない。デッドの見たところ、遠巻きに囲む形で動いているようだが、さて。

 と、腰に入れたスマートデバイスが振動し、通信が入る。バンを運転しているリザードマンからだ。 

『よう兄弟、人気者のようだな。こっちはまだ暇だぜ』

「そうかい。こっちにゃ名高い美少女聖女様がいるからな。テレポートまで使ってファンを送り込んでくるから大変よ。転移防止の結界は動かしてるのか?」

『やってけどスラッド一人じゃ限度があるってさ。こっちの車で無理やり荒れ地越えて、そっちを結界の範囲に入れることもできっけど』

「それはやめとけ。スラッドの奴を守るのが優先だ。スミレともう一人確保したから、とりあえず、っち」

 デッドは進行方向に、また何かがテレポートしてきたのを確認する。人型の金属で、高い魔力反応が複数。

「魔導鎧か! 面倒なものを!」

 遠目ではあるが、宇宙服のような全身を覆う装甲に丸ヘルメットを付けた姿が見えた。武装は先ほどの奴らと同じ小銃。魔力探知でも確認したところ、魔力は比較的高くはないから、ツバキのものとは違い軽装の廉価版か。

 それでも軍装であることは変わらないので、さっきの追手たちみたいに、ざっくり蹴散らすとはいかないだろう。

『はっはっは! お相手さんも本気って感じだな! まぁこっちも』

 リザードマンの言葉が、銃声に遮られる。転移してきた魔導鎧たちの攻撃だ。攻撃しつつ移動し、半包囲の態勢を取ってくる。

「守護をここに!」

 そうして四方八方から迫りくる弾丸を、ファルは木を盾にしつつ、小さな障壁を幾重に張って防ぐ。周囲を完全に覆ってるわけではないからか、そのまま先に歩を進めているが、やはりスピードは落ちている。

 なればと、デッドは先ほどと同じく駆ける。

 狙いは進路上の魔導鎧。デッドの動きに応じて正面と真横の二方向から銃撃が飛ぶ。

 後頭部近くを弾丸がかすめ、足元の草木がパパンと弾ける。

(なかなかうめぇな! さっきの奴らよりも使えそうだなっと!)

 デッドは走りながらも腰の拳銃を二丁抜き、正面と真横に伸ばす。

 そして射撃。狙いは魔導鎧たち、ではなく、奴らが放った銃弾だ。

 金属が砕ける音が鼓膜を裂き、前と横に鉄の花が咲いた。

 銃弾で銃弾を撃ち落とすと、衝突して砕けた銃弾たちが花火のように広がるのだ。

「うお!?」

 正面の魔導鎧が一瞬、怯む。生体強化などで超音速の弾丸すら視界に捉えられるようになった昨今、そこまで珍しい技でもないのだが、訓練はあっても新兵さんかね。

 そのまま距離を詰めたデッドは、片方の拳銃をホルスターにしまうと同時に抜刀。

「しゃ!」

 片手抜き打ち、銃を断つ。更に返す刃で頭。

「ぬぅ!」

 魔導鎧は即座に銃を放し、左腕を盾にして右ストレートの構え。淀みない対応で、やはりなかなか使える。

 そうデッドは感心すると同時に、もう片方の銃で相手が踏み出そうとした足先に銃弾を放った。

 もちろん拳銃程度では装甲は貫けないが、しかし弾丸の衝撃はそのままだ。

「く!?」

 銃弾で出足を払われた形になった魔導鎧が、大きくバランスを崩す。

 そこへすぐ顔面を刀で押し、同時に後ろの軸足を払うと、魔導鎧は宙をぐるりと舞い、背中から仰向けに倒れた。

「よっと」

 そしてデッドは、バリッと光った刀の切っ先を、首にある鎧とヘルメットの繋ぎ目へ押しこんだ。

 すると、魔導鎧の中身が、びくっと痙攣して動かなくなる。

 雷の魔法を先端に集中させ、スタンガンの要領で浅く刺すと同時に感電させたのだ。

(これで一人。残り4体くらいか。ちと手間だな)

 切り抜けられないほどではないが、転移がある以上時間をかけるのは当然、愚策。さて、どうする? と思考を巡らせたところで、追手たちとは別の影たちに気付いた。

(反応的に別の魔導鎧が4名、これは)

 デッドが観察している間にも、影たちは追手の魔導鎧たちの背後に近づく。

 追手たちは、こちらに集中してそれに気づいていない。

 そのままざくりざくりと影たちは、魔導鎧の胸や首を貫いた。

 断末魔すらあげさせない、鮮やかな手並みだ。

「これで進路の掃除は終わりました、デッド様」

 影の一人が、近づいて声をかけてきた。兜の前立と鎧、そして剣と盾にハンマーのような特徴的な紋章があしらわれている。

 レヴィアルタのお付きだ。同様の装備をした他の影たちも、こちらに会釈する。

「助かった。だがバンの方の護衛はどうした」

『ファルフニル様のために行きたいって言われてな。大分、そっちは忙しかったしちょうどよかったろ』

 スマートデバイスからリザードマンが、説明してくる。まぁ結果オーライではあるから、文句は我慢しておく。

「しかしかなりの手際だが、お前さんらも暗殺とかやってたのか?」

「まさか。デッド様たちが目立っていたのと、夜討ちは騎士の基本というだけです。これでやっとファルフニル様のお役に立てました」

「そう、ですね。ありがとうございます!」

 誇らしげなお付きの女性に、こちらへ来たファルは勢いよく礼を言う。

 若干、その笑みが固いのは、まぁ敵とはいえあっさり殺してたからな、こいつら。

 聖女というのも大変さ。俺が言うようなことじゃないが。


 さて、レヴィアルタのお付きたちと合流し、闇夜の荒れ地を移動する。先ほどと同じく草が深く茂った林が続き、2つの月は雲に隠れて視界は悪い。お付たちの進路の掃除をしたという言葉通り2,3の死体はあるくらいで、敵影はない。

(転送阻止の結界内には入ったが、どう動いてくるか。ちらちらと遠くから反応があるから、見失ったわけじゃなかろうが)

 とりあえず一人側に残して、進路と周囲をお付きたちに偵察してもらっている。待ち伏せなどには対応できるはずだ。

「このまま諦めてくれればよいのですが」

 ファルがポツリと口にするが、さてね。なお、肩にグネーデルとスミレを担いだまま、汗一つかかずにでこぼこした不整地をひょいひょい歩いている。

 大した腕と足腰である。そう感心していると、側に残ったレヴィアルタのお付が気遣わしげに、

「本来は私共で運ぶのを代わるべきなのですが」

「戦え得る駒が減るのは困るっつってんだろ。油断してるところを結界外からの転送でいきなり、なんてアホでも考えつく手だ。気ぃ抜くにゃ早えぞ」

「分かっていますよ。魔女の拠点襲撃時の醜態、繰り返すつもりはございません」

 お付は、ふんっと腹に力を込める。さっきの闇討ちや今やってる偵察の動きから、基礎はできてるのは分かるし、魔導鎧も廉価版じゃないそれなりのものだ。

 頼りにはさせてもらおう。

「んで、そっちは?」

 デッドはスマートデバイスに声をかけると、リザードマンが応答する。

『今ん所なーんも。ただそろそろ気づかれっかね。とりあえずさっさとそっちも車に乗ってくれりゃ、結界もあっから気をつけるのは砲撃と、おっと』

 ガガンっとスマートデバイスから銃声が響いた。

『フラグってやつだったかね! お客さん来ちまったぜ! 中型の土ゴーレムと魔導鎧の混成! 両方銃器装備! 結界外からわざわざ歩いて来たみたいだな! ご苦労なこった!』

「りょーかい! バン壊されんなよ!」

『そんなヘマしねぇさ! こっちにゃツバキちゃんもいるしな!』

 そうリザードマンが車の発進音と共に答える。

「だ、大丈夫でしょうか?」

「まぁなんとかすんだろ。やられるのは俺の車くらいだよ。その場合、レヴィアルタ副教区長猊下様に車の買い直し頼めませんかね?」

「えーと、今回の報奨金の代わりとしてなら、その」

 若干、歯切れ悪くお付が答える。準備で結構な金使ったら仕方ないか。

 ファルが一つ、気合を入れるように大きく呼吸して、

「なんであれ急ぎましょう! 合流してお助けしなければ!」

「常道だな。もっともこういう時は同時攻撃を、っと上!」

 デッドの頬を冷気がなでると同時に、上空から黒い人間より大きい程度の球体が飛んでくる。

 見れば追手たちの死体、それを黒い蔓で貫き強引にまとめた代物だ。或いは死体から蔓が生えてると言ったほうが正しいのか?

 なんであれ、

「趣味が悪いこったな!」

 デッドは擲弾銃でグレネードを放って、飛んでくる死体の塊に命中させる。爆風が闇を照らすとともに、死体の球はあらぬ方向に着弾し、黒い蔓を周囲に撒き散らす。

「あらあら、撃ち落とされちゃった。つまらないの」

 そして、まだ幼さを残す少女の声が、どこからともかく闇夜に響くと同時に、三方向から巨大蔓が立ち並んだ。

 周囲を警戒していたレヴィアルタのお付きたち3人の眼の前だ。

「っち!」「こんなもの! 『火の目覚めを!』」

 一人は難なく避け、もう一人に至っては魔法で火柱を立てて一気に燃やしてしまいすらしたが、

「きゃあ!?」

 残る一人が巨大蔓に絡め取られる。

「うーん、一人だけかぁ。話に聞いてたよりやるじゃん」

 少女の声が再び響くと共に、砲弾が落ちた場所からパステルカラーの赤色をした三角帽子が現れる。

 スモックを着た魔女っ子風な出で立ちで、ファルと同年齢くらいの少女。人型だが右目が2つあるのが特徴的。魔眼かなにかだろうか?

 デッドは擲弾銃を構えて問いかける。

「魔女のお出ましか。アルラとは違うが、弟子かなんかか?」

「アデプトはちょっと準備中だからね。それより他人行儀じゃない、デッドさん? 一緒に食事をした仲だっていうのに?」

 魔女の声音が、聞いたことがある大人びたものに変化する。

「あなた! ポモナ様!」

「先ほどぶりです、竜聖女様。まさかこんな早く再会できるなんて光栄です!」

 ファルへ満面の笑みを向けて、スモックの端をつかんでカーテンシーなぞきめてくる。

 堂に入った所作だが、しかしまぁ、

「こんなガキだったのかお前。ボロの出し方といい、道理でアホだったわけだ」

「いきなりご挨拶ね。レディの扱いがなってないんじゃない?」

「色気づくには10年はええよ。痩せ過ぎだぞ。ちゃんと好き嫌いせずハンバーグでも食べとけ」

「ご心配に預かりどうも! でもバカな大人の血は、いっぱいすすってるから大丈夫よ!」

 魔女は声を弾ませて答えるが、口角がピクついている。大した軽口じゃないはずだがね。

 そんな風に喋ってる間にも、蔓を焼いた方のお付きが絡み取られた同僚を助けようと動いているが、いやまずい!

「地面から魔力反応! 来てるぞ!」

「え!? うわ!?」

 スマートデバイスの無線で指示を飛ばすも、その時には既に草むらから巨大な蔓の塊が湧き上がり、大波のようにお付きたち二人を呑み込んでしまう。

(さっきの砲弾の蔓か!)

 撃ち落とされた後、草に隠れながら地面をはっていたのだろう。

 そのままこちらへ襲いかかって来ようとしたが、

「守護の光を!」

 ファルが障壁を張り侵攻を許さない。

「地面の奥深くまで張ってるとか、周到じゃない!」

「褒められるようなことではございませんよ! っあ!」

 魔女とファルの言い合いに轟音が割り込む。そしてすぐ、赤い尾を引いてミサイルが林の影から飛び出した。

 デッドが撃ったものだ。障壁に阻まれていた蔓の波に着弾し、爆発。

「きゅ、救援に感謝を!」「ひぃ!? 死んじゃう死んじゃう!?」

 一瞬の光の後、爆発四散した緑と炎の中から、目を白黒させながら二人のお付きが出てきた。

「で、デッド様! 無茶苦茶ですよ!」

「魔導鎧にお前の保護がかかってんだ。無茶でもなんでもねぇ、さ!」

 ファルの文句をデッドは軽く流しつつ、擲弾銃を撃つ。

 同時に側のお付きが、盾と剣を掲げて駆け出した。

「覚悟!」

「命知らずね! っ!?」

 グレネードを大蔓の盾で防いだ瞬間、魔女が振り返る。そこにはまっすぐに飛んでくる長剣、蔓に絡め取られなかったもう一人のお付きが、後ろから投げつけたものだ。

 それを魔女は右手に蔓をまとわせて弾き飛ばすが、

『火の目覚めよ!』

 その隙を逃さず魔導鎧が、魔法で文字通り全身を火の玉にして魔女に突撃する。応じて突き出された大蔓は一瞬で燃え散り、守るものがなくなった魔女は3つ目を見開いて、

「まぁ出し惜しみする必要もないか」

 嘲笑って左手を突き出す。

 すると辺りに満ちていた冷気が鋭くなると同時に、燃え盛っていた全ての炎が消え去った。

 魔導鎧を包んでいたものも。

「っく!?」

 そして魔女の左半身は落葉の色をした黄霧となり、突き出していた左腕も霧となって伸びて、魔導鎧の突進を軽々と止めてしまった。

「このぉ! 『火の目覚めよ!』」

 それでも軽く右後ろにステップしたお付は、剣に火の柱をまとわせ再び斬りかかろうとする。

「ふふふふふふふ! 無意味よ! っと!」

 魔女が伸びた左腕をムチのように振るおうとした時、左側から回り込んだデッドが片手に銃を構えて発砲。更に後ろで剣を拾い直したもう一人のお付きが、魔女へ逆胴を放たんと踏み込む。

 三方からの連携同時攻撃は、

「甘いんだよ!」

 魔女を中心とする、黄色い霧の爆発に阻まれた。

「っとっとっと! あぶねぇなぁ!」

 吹き飛んで着地したデッドの周囲を、白い膜が包んでいる。ファルが事前に張っていた守護の加護だ。距離もあったので、ダメージとしては大したことはない。

 それでも黄色い霧は冷気と共に全身を焼き、肌どころか金属すら変色させ、ピシピシと細かな傷が生まれる。擲弾銃と構えていた銃もボロボロと銃身が崩れて、使うのは危なそうだ。

「つぅ!」

 一方、間近で爆発を受けたお付きたちの魔導鎧も変色して、そこかしこがボロボロと崩れている。装甲としてはもう期待できそうにないか。晒された肌も青くただれ、吹き飛ばされて倒れた体こそ起こしているが、戦闘継続はどうかといったところ。

 なれば、

「ざーんねんでした! どう!? 黄冥神様の力はすごいでしょう!」

「いいや、別に。大したことねぇな」

 爆発で生まれた舞台のようなクレーターの真ん中で、踊るように一礼した魔女に対して、デッドは端的に切り捨てる。魔女は、ピクリと眉を動かしたが、すぐに不必要なまでな明るい声を続けて、

「なぁに? 負け惜しみ? ぶっ飛ばされた癖にさぁ?」

「その霧、アルラと初めて会った時、ファルと俺をボロボロにした神様のだろう? どういう理屈でお前が使ってるのか知らんが、なら大したことないで間違いないさ」

 実際、あの時は攻撃がほぼまったく効かず守ることも出来ず、金月神とスミレ、ミリメのお陰でなんとかだったわけである。

「そんな力を使ってるのに、この程度で済んでるんだ。使いこなせてないんだろ、お前さん?」

「っ! だからどうしたっていうのさ! あんたたちの方がダメージ食らってるのは変わら」

 たーんと乾いた音が闇に響く。デッドが無事だったホルスターのマグナムオートを抜き打ちしたのだ。

「ひっ、あ」

 魔女の少女が息を呑んで、一歩後ずさる。

 弾丸は右目の手前で、黄色い霧に防がれていた。

「ほーん、随分と可愛い悲鳴をあげるじゃん。そこは年相応だな」

「な、この! ふ、防がれた癖に、偉そうに!」

「ひっ、あ、ってな」

 デッドは、直後の少女の悲鳴をわざとらしく真似してやる。やってて大人げないとは思うが、お付きたちの継戦が難しそうな以上、挑発してこちらに注意を引き付ける必要がある。

 そんな思惑通り、魔女の少女は顔を真っ赤にこちらを睨みつけてきたが、すぐに無理くりに頬を持ち上げた。

「そのムカつく態度! これを見ても続けられるかしら!」

 魔女が陣取るクレーターの下から、大木のような茎がぼこりと伸びてくる。

 その先には鮮やかな赤の蕾。落日を直に眺めるような、焼け付くような朱色の花。

 それがゆっくりと開くと、中には人の首。内側から目や口を貫いて黒蔓が飛び出し、しわがれた皮膚がえぐれてまだ赤黒い肉や機械の残骸が晒された、老人の頭蓋。

「じ、ジンスケ様! どうして!?」

 ファルが顔を真っ青にして叫んだ通り、そこにあったのはジンスケの生首だ。

「ふふふふふふ! どう! これ! 惨めでしょう酷いでしょう! こんなのが円卓軍の英雄、魔法剣豪とか言われてたなんて! 笑っちゃうわよね!」

 魔女の腹の底から発される哄笑が、べっとりと暗い夜の闇に響く。

「何をとち狂ったか知らないけど! スミレだっけ! そこの化け物触手女を助けようしてさぁ! この達人気取りは私に殺されて結局このザマ! ザコはザコらしく身の程をわきまえてないから、こんな無様な姿になるのよ!」

「うる、さい」

 今までぐったりとファルに担がれていたスミレが、うっすらと、それでも声を発する。

 それでますます魔女は増長し、高らかに笑う。

「あははははははは! なぁに悔しいの!? 化け物のくせにさ! そうだよね! あんたを助けるためにこんな悲惨な死に方したんだもんね! 悔しいし残念よね! ははははは!」

 魔女は、音量調整を間違えたスピーカーのように、けたたましく嗤いながら、デッドの瞳を覗き込んだ。

「あんたはどう!? 死にぞこない! このみすぼらしいジジイ! あんたの師匠なんでしょう!? 悔しい!? 悲しい!? それとも怖い!? どうなの!? ねぇねぇ!? どうなのさ!?」

「あーと、そうだな。ありがとな」

「はぁ?」

 ぽかんと、闇夜が静かになる。ただ風が草木を鳴らし、遠くから銃声らしき爆発音が小さく聞こえてくる。

 今まで興奮していた魔女だけでなく、ファルも、レヴィアルタのお付きたちやスミレですらも虚を突かれたかのように、デッドへ目を見開いていた。

 そんな驚くようなことでもあるまいに。

「あの人は、ずっと、ずっと死に場所を探してたからな」

 人に博打のツケを押し付けたりつまんないケンカの後処理させるたびに、俺はあの時死ぬべきだった、ヴニル様の前で死にたかった、などと愚痴るのが常だった。

 後悔と惰性の中で、何も誇れず何処にもいけなくなった、かつての英雄。

 それが、眼の前の魔女のような外道から子どもを、スミレを救うために死ねた。

「これほどの花道はねぇ、だからありがとな」

 デッドは穏やかに語り、ゆっくりと頭を下げた。

 じゃあな、師匠。

 ボロボロの頭部は何の反応も示さないが、ま、もう地獄で酒でも飲んでるだろうさ。

「ふ、ふざけるなふざけるなふざけるなぁ!」

 静謐が満たした夜を、魔女の金切り声が切り裂いた。

「何一人で納得してやがる! こいつは! 惨めに死んだんだ! 私が汚してゴミのように殺したんだ! そうでないといけないんだ!」

「なーにを癇癪起こしとるんだ、お前は。師匠に恨みでもあんのか?」

「そんなものはない! ただあんたが! あんたたちが気に入らないってだけよぉ!」

 魔女は霧の左腕を大きく振り上げる。何がそこまで気に障ったのか知らんが、まぁちょうどいい。

 会話に時間をかけたお陰で、準備はできてる。

 デッドは一気に踏み込み、ファルを介して師匠から受け取った、瑠璃色の銃を腰から抜き放つ。

 再び静かな銃声が、闇夜を貫いた。


(つ、貫けるわけがない!)

 放たれた銃弾が迫るのを眺めながら、枯葉色の霧に包まれた魔女は、確信する。

 再び不意を突かれて驚きこそしたものの、先ほどの射撃や或いはその前の老人の銃と同じだ。

 彼女を守る黄冥神の霧、ありとあらゆる事象を無効化する滅びと静寂の力は、ただの銃ごときでは突破できるはずがない。

(魔力を込めて魔弾にしたみたいだけど、それだってあのジジイの時と同じ! 効くわけがないんだ!)

 眼の前のムカつく鉄男は、小癪にも左手の一撃をかわそうとしているが、なに、焦ることはない。霧を突破する手段がない以上、こちらが負ける道理なんてないのだ。

(さっきぶっ倒した兵士たちを人質にでもして、なぶり殺しにしてやる! その時、あのスカシ野郎の顔は、どんな風に歪むかしら!)

 自然とこぼれる笑みとともに、胸に当たった弾丸が、枯れ葉色の霧に阻まれるのを眺める。

 口紅を思わせる円柱の金属片が無意味に潰れ、ひしゃげていく。

 この銃弾と同じように、あいつを、いや待って? 何かの魔力が胸にーー、

 それに気づいた時、魔女の視界が突如、真っ暗になった。

「ーーえ?」

 暗い、まっくら、怖い、どうして? あれは、葉っぱ? 木? なんで? 胸が熱い、胸が冷たい、どうして? 穴が空いてる、血が流れてる、なんで? 腕が動かない、なんで? 足も動かない首も動かない? なんでなんで? 息が苦しい体に力が入らない、どうしてなんで? なんでなんでどうして!?

「ま、こんなもんかね」

 暗くなった視界を、淡く光る目が見下していた。

 ーー所詮、邪悪な魔女ね。

 それで、思い出した。

「私を、見下ろすなぁ!」

 仕込んでいた緊急用の回復術式を。それで穿たれた胸を応急処置しながら、蔓を無茶苦茶にぶん回して牽制。

 並行して別の蔓で自分の身体を投げ飛ばし、距離を取った。

「おおう! 心臓ぶっ壊したってのに元気なやつだな」

 悪あがきの蔓を刀の抜き打ちでバッサリ両断しつつ、光る目のスカシ野郎、死にぞこないことデッドは、瑠璃色の銃に弾丸を込めながら、

「まぁでも、その様子じゃもう無理だと思うぜ? 死にたくなけりゃ大人しくしろ」

 特に何の感慨もなさそうに呟いてきた。


「ーー魔力を集中させた弾丸、それは分かるわ! でもそれだけじゃあ黄冥神様の霧は貫けない!」

 魔女はしゃべりながら、大蔓を無茶苦茶に生やしてデッドへけしかけてきた。

 心臓を撃ち抜かれたせいか、既にあの不吉な霧はなくなり元の体に戻っている。襲ってくる蔓たちも、動きに精彩がなく単調だ。

(ただ数が多い。対処は難しくねぇがっと、なかなか近づけないな)

 時間を稼がれてる。相手の目は死んではいないし、なぶるのは下策だが、決め手がない。

(擲弾銃やられたのがまずったな。ミサイルは4発打ち尽くしたし、極点撃ちをもう一発するには時間がかかる。他の奴らは応急処置中だし、どうしたもんか)

 デッドが思案をしながら蔓をさばいている間にも、魔女の口は回り続ける。

「実際に弾を防いだのも見えた! それなのになんで、私の胸を撃ち抜ける!? なんでよ! 確かに魔弾だったけど、あんたの師匠の方が威力も魔力も強かったわよ! それでもなんなく防げたのに! なんで!」

「ま、色々と研鑽があるんだよ!」

 デッドが身につけていたタクティカルポーチから、空き缶のような筒を取り出してぶん投げる。

 すると、閃光が周囲を駆け抜けた。スタングレネードだ。

「つぅ! こんな単なる光!」

 魔女が悪態を付くが、一瞬、動きが止まる。まぁ回復したとはいえ、胸を砕かれてすぐだ。万全の時のように、まったく平気とはいくまいよ!

「しゃあ!」

 踏み込みつつ片足の力を抜くことで、体重を強引に傾けて曲がり、迫った蔓をすり抜けるように避ける。

「クソ! なんでなのよぉ!」

 そのまま接近し、鯉口を切る。相手は喚いているが無防備、首を落とすまでもないが、手足くらいは切り落として、

「ーー極点撃ち。魔力を極限まで集中して完全な点を作り、理を穿つ必殺の銃撃」

 突如、上から女の声が響くと同時に、殺気。強引に横っ飛びをすると同時に、デッドがいた場所に巨大な塊が叩き降ろされた。

 土煙が舞い、その中に佇むはくすんだ青色。三角帽子にローブ、幽鬼のようにコケた顔立ちのまさに魔女と言った出で立ちの少女。

 魔女アルラは、俵ほどの大きな穂先の箒にまたがって、嫣然と微笑む。

「伺ってはおりましたが、本当に完成していたのですね。あなた様が目指した剣理の先、理外の技を」

「本当に詳しいもんだ。ストーカーかよ。しかし随分とまぁ、急な登場じゃねぇか」

 デッドは立ち上がりつつ、ため息をつく。ああクソ、こりゃあかんな。

「弟子のピンチですもの、多少の無理はいたしますわ。こちらの準備もほぼ終わりましたし、ね」

「アデプト! あの技は! あの技はいったいなんなの!?」

 背丈は同じくらいだが、赤い魔女は子どものようにすがりついてアルラへ問いかける。

「それは少しお待ちなさい。あなたは休まないといけないし、それにもうすぐこの局面のフィナーレが始まるのですから!」

 弟子を軽くたしなめつつ、箒に乗ったアルラはふわりと浮き上がった。

「てめぇ! やっぱ飛べるのかよ! ずるいぞ!」

 デッドが罵声を浴びせつつマグナムオートで銃撃するも、アルラの魔術か、銃弾は明後日の方向に飛んで行ってしまった。

「魔女ですもの! 嗜みです! それより先に会場で待ってますから、すぐいらしてくださるかしら!?」

 そう朗々と宣言したアルラは、どんっと砲弾のように飛んでいく。

 方角は、デッドたちの進路。

 仲間たちの車が待っていて、今襲われているであろう方向だった。


「くぅ! このような無様、また晒すことになるなんて! 申し訳ありません! ファルフニル様!」

 レヴィアルタのお付の歯噛みに、ファルはそのゴツい指で手際よく包帯を巻きながら、

「謝ることなぞ何もありません。相手の魔女が一枚上手だったというだけです。それより、他に痛みなどは?」

「大丈夫です! 多少の無理は効きます!」

「いや痛いところを正直に言ってくださいね」

 ファルは苦笑しつつ、応急処置を続けていく。

 魔女たちが去ってからまだ何分も経っていない。遠くから銃声や爆発音が方向を変えつつも聞こえてくるが、まだ取り立てた動きはなさげだ。

「それでもすぐに動いてくるはずです! 急がなければ!」

「急いだところで使えなきゃ意味がねぇ。まともに動ける時間を増やすためにも、ちゃんと処置受けとけっての」

 逸るお付に注意しながら、デッドも装備を確認しておく。タクティカルポーチとその中身の過半がボロボロになってるのが痛いが、何か使えるものは残ってるかどうか。

「しかしデッド様! さっきの魔女ぶっ倒した銃すごかったです! どういう原理なのですか!?」

 お付の一人が、場違いなくらい元気な声で聞いてきた。ここにいる4人のお付の中では一番若い、ファルよりちょい上くらいの少女だ。

 先ほど、一人だけ蔓に絡め取られてた子でもある。まだまだ子どもって感じだな。

「魔力を集中すれば、魔法の威力を上がるのは分かるな?」

「はい! 私たちの火の魔法も、より集中して高温にしたりしますね! 極点撃ちとか魔女が言ってましたし、一点に集して超威力って感じですか!?」

「まぁそうだが、少しだけ違う。極端な集中で点になるくらい小さくなった魔力は、他の魔力の干渉を受けなくなるんだ」

 素粒子のトンネル効果に近い。最早あるのかどうかわからないくらい小さい素粒子は、通常の物理学の理屈を越えて、障壁を素通りしてしまうという現象。

 極端に小さくした魔力も、似たような現象が起こるというわけだ。

「点にまで圧縮した魔力を弾丸で慣性を付けて放つ。そうすれば、例えばあの霧みたいなもので弾丸を防がれても、圧縮した魔力は守りを素通りして相手の内にたどり着く」

 そしてドカン、と相手の胸の中で爆発させたのがさっきの戦闘というわけだ。

「え、えーと? つまり、どういうことなんでしょう!?」

「あなたねぇ」

 頭に?マークを恥ずかしげもなく並べる同僚に、もう一人の無事だったお付きが渋い顔をする。まぁ怒るなって、言葉にするとめんどくさい小理屈ではあるのだし。

 デッドは、傍らの丸い布包を眺める。ジンスケの生首を包んだものだ。

 デッドとしてはその場で焼き捨てても良かったのだが、幾らなんでもとお付の一人が包んでくれた。

「元々は、師匠の技さ。あの人のは魔力で点ではなく線を作り、それで相手の守りの影響を最小限にして叩き切るんだ。その技で、師匠は神すら斬った」

 だから、そんな技が欲しくて真似をした。

 師匠の技さえあれば、もう何も取りこぼさなくなれるんだって、無邪気に伝授を頼んだものだ。

 その時、師匠は随分と困った笑いをしたものだったが、まぁなんだ、アホなガキだったよ、まったくさ。

 その後、線にしても魔力が足んねぇからと二人で悩んで、メグプトとも相談して精霊銀で特注銃まで作って……。

 っと、存外、自分もセンチメンタルだったらしい。

「まだ鉄火場だってのに、面白くもねぇ昔話をしちまった。わりぃな」

「いえいえ! 元気だしてくださいね! 元気が一番です!」

 そう元気のゴリ押しをし始める最年少お付。周りが再び頭を抱えてるが、まぁいいじゃないの。実際、元気が一番さ。

 ファルもキュッと包帯を締め終えて同意する。

「はい! 私もそう思います! しかしなんでアルラ様は、デッド様の技に詳しそうだったんでしょう? ええっと、魔女の方々と因縁とご関係でしょうか?」

「ん、まぁ因縁はあるっちゃあるが」

 実際、何回か魔女をぶっ倒す時に使ったことがあるから、そういう技をデッドが使うのは知っててもおかしくはない。

(ただ、名前まではなぁ?)

 極点撃ちなどという技名は師匠が付けたもので、知ってるものなんてほとんどいない。

 一応、メグプトは知ってるが、細かい話をべらべら漏らしたりしない。必殺技だからと技名で見得を切ったこともない。

 ーー完成が見れること、楽しみにしてる。

 古い記憶が頭をよぎったが、もう死んでるし姿形が似ても似つかないからなぁ。

(まぁ分からんものは分からんし、おっと?)

 突如として振動したスマートデバイスに、デッドの思考は中断された。

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