騎士と姫の異世界初ハロウィン
なんだこの見渡す限りの見知らぬ造形物は……ここが死後の世界…………なのだろうか?
人らしき者が出入りしている様子から建物であることは分かるが……あの者たちも剣を携えているのか。
やはり死後の世界だとしても魔物が存在するのか。
そうなると姫様が心配だが……分かっているこのエドガルドは姫様を護って死んだのだ。
だからたとえ理想論だとしても姫様は彼方で生きていると私はそう信じている!!
ここに姫様がいることは決してあってはならないのだから
「お姉さん一杯どう? 無理そうならせめておつまみだけでも」
なんだこの軽薄そうな男はと軽蔑しかけだが、人は見かけによらないことはアイツと関わって知ったことだが
「すまないな、私には今……懐が寂しいのだ」
「でしたら、お金は渡せませんが…………あった。ハッピーハロウィンどうぞお菓子です。せっかくのハロウィンですからお姉さんも楽しんでくださいね」
「ありがたいが、私はハロウィンというものを知らないのだ。無礼を承知でお願いするが教えてもらえないか?」
「う〜ん俺も詳しく知らないんですけど、確かお盆と同じ意味ですよ」
「お盆? あぁ食器を乗せるアレか。なるほど勉強になった礼を言う」
「食器の方じゃなく亡くなったご先祖様が帰ってくるとか感謝するとか、そういうのです」
「そうなのか、私の誤りを直してくれたこと礼を言う」
「楽しんでくださいねお姉さん〜」
「ああせっかくだ楽しむとするよ」
ここが死後の世界だとして私は姫様と再会する可能性があるのなら、姫様と再会したときに私の話を聞いてもらおう。
「あれはゴブリンか……被害が出るまでに排除する」
ピピピピー
「ちょっと君〜こんな危ないの人に向けたらいかんでしょ」
「だが被害が出てからでは遅いのだ。話は後で聞く」
斬っ!!
「ぐごごげ!?」
ボトン
「ちょっこれ君殺人だよ!! なんだこいつ血が緑……オエッ」
「だから言っただろこいつはゴブリンしかも悪の方だ。善のゴブリンは肌の色も赤っぽいのだ。なぜゴブリンに気づかなかった? 他にも魔物が視界内でも沢山いるが」
私がそう発言すると隣を歩いていた人が話しかけてきた
「だったらよ善と悪が混ざったゴブリンはどんななんだよ」と。
聞かれた私は
「混ざっている者は肌の色が赤と緑だ。善の血が濃いのなら赤の割合が多い悪の血が濃いのなら緑の割合が多い。だが、混じっている者は悪が濃い者でも話し合えば分かることも当然あることからすぐに殺すことは出来ない」
「貴方たちは危険だからちょっと下がって、悪魔がいる」
悪魔が周囲の人に攻撃しないように注意を私に向けさせなければ。
「おい悪魔私が楽しませてやる!!」
だっだめだ、訓練漬けの毎日で注意を向ける言葉のレパートリーが……もう斬るしか
「いや私別に誰かを襲うつもりないけど……というかエドはこっちで何してるの? 生きててくれてるのは嬉しいけど」
「なぜ私の名前を知っているのだ悪魔!!」
ザワザワ
「何かの撮影か?」
「知らねえ……撮影だったら珍しいし撮っとこうぜ」
「ちょっと来てエド」
悪魔は私の手を握り魔法で生み出した扉に入った。
「悪魔……私に何を望むのだ。攫ったのには何か理由があるのだろう」
「いやいやいやいや私シエルだよ。……ほら見てよ」
脱ぎ脱ぎ
「じゃじゃ〜ん久しぶりエドどうどう? 姫様だよ」
「…………姫様がここにいるということは、私は姫様を護れなかったということですね。申し訳ありません姫様」
「もう謝らないでよエドそれにさ今日はハロウィンだよ。トリックオアトリート……はい、ちょうだい」
「とっとりっ……姫様何ですかそれは?」
「お菓子くれなきゃイタズラするぞってやつなんだって、お菓子頂戴」
「貰った一個しかないのですが、どうぞ」
「それなら半分こね」
ビリビリ
バキッ
「はい、半分」
「姫様これ、半分じゃないです。私の方が大きいです」
「まあ気にしない気にしない。量じゃなくてさ一緒に食べることが大切なの!!」
「……そうですね。私は姫様と当分会えないと思っていたので嬉しい反面姫様を護れなかった不甲斐なさを実感するばかりです」
「それじゃあ言うけど私は死んだよ。だけど殺したのハルベスト様だから」
「ハルベスト様って……神ですよね」
「そっ、なんだが『すまねぇうっかりミスで殺しちゃったテヘペロだから転生ボーナスつけちゃうから』って言われたからさ『エドと同じ世界に転生したい』ってお願いしたんだ」
「姫様このエドガルドどこまでも付き従います!!」
「ありがとねエド、ハロウィン楽しもっか」
「はい、しかし私ハロウィンというものについてよく分かっていないのですが姫様はご存知なのですか?」
「大丈夫安心して、トリックオアトリート言ってお菓子もらう貰えなければイタズラそしてご先祖様に感謝するなら知ってるから」
「安心要素はありませんが、先ほどの方々を見るに楽しむのが良いことだというのは理解しました。ですが姫様お金はあるのですか、私はありません」
「五千円なら神様から貰ったから大丈夫」
「姫様大丈夫なのでしょうか?」
「まあ大丈夫でしょ」
姫様に連れられ扉を出た私が見た景色は先ほどとはまるで違い
「綺麗」
思わずそう呟くほど変わっていた。
姫様が隣にいるその安心感が強いのだろう
「姫様お菓子でしたら私に選ばせてもらえませんか? 姫様に今までの感謝だけでは伝え足りませんので、どうか」
「お言葉に甘えてお願いしちゃおっかな」
「このエドガルドにお任せを」
私は姫様との時間を決して忘れることはないと確信できる。
そう思える濃厚な時間だった。
二時間後
「申し訳ありませんお菓子を選ぶだけで時間をかけてしました」
「謝らないでいいから楽しかったからさ私としては感謝したいぐらいだから。楽しい時間をありがとねエド」
「お礼を申したいのは私の方ですよ姫様」
「ねえエドあの場所なら食べるのにいいんじゃない?」
「姫様がお座りください」
「ダ〜メエドも一緒に座るの、はい座って座って」
トントン
「それでは失礼します」
「まずはエドが選んでくれたこのクッキー食べよっか」
トテトテトテ
「お姉ちゃんたちトリックオアトリートお菓子ちょうだい」
「タケシ貰えるか分かんないんだからやめようよ」
「でもハロウィンなんだから楽しもうってハルが言ったんじゃん」
なんだか姫様みたい
「ふふっ」
「かっこいいお姉ちゃんが笑った。お菓子もらえるかもちょうだい」
「そんなに連続で言って前怒られたでしょ」
「運命を決まるのも変えるのも己自身、己の選択に悔いが残ることはしない……だから怒られたっていいんだよぉ〜。僕は楽しむんだ!!」「ほんと変わんないねタケシは、分かったわよ。おっ、お姉ちゃんたちトリックオアトリートお菓子……ください」
「渡してもいいですか姫様」
「もうたっくさん渡しちゃっていいよ。減った分はまた一緒に買いに行けばいいんだしさ」
「「ありがとうお姉ちゃん」」
キャッキャッ
これがハロウィン……か、楽しみものなんだ。
この楽しい時間を過ごせるのも産んでくれた両親にそしてご先祖様にお礼申し上げます。
「ねえエドもう子供たちみんなに配ろうよ」
「いいですね姫様……しかし魔物退治も忘れずにしますからお忘れなく」
「は〜い」
これは私と姫様が初めてのハロウィンを楽しんだ物語です
おしまい
「ヴァリエ、ミシリア二人の様子はどうだった?」
「エドガルドもシエル双方問題なさそうかとそれとこの世界ではタケシです。ハルベスト様」
「私としてはエドガルドが心配でしたが、あの様子では安心出来ます」
「いやぁ本当は勇者のところに行かせなきゃいけない魔王を間違えてあの子らのところに行かせちゃったから転生させたけど心配でさぁ、二人ともお仕事お疲れちゃん。この後飲みに」
「「行きません」」
「即答なのね、トホホ」
この物語は僕ちゃんハルベストの仕事を失敗した時の話なんだよね
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
ハロウィンなのでハロウィンネタを書こうと思って書きましたがハロウィンネタなのか?と疑問にも思います




