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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
襲撃編

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1-2.久々の学院



ガルクス公爵令嬢の後ろには王太子たちまでおり、教室内の生徒は一斉に頭を下げる。周りには目もくれずにガルクス公爵令嬢はナイクル侯爵令嬢の方に歩み寄り、ずいっと顔を近づけた。



「貴女、怪我で一ヶ月も療養していた彼女に向かってその八つ当たりはなんです?」


「ガルクス公爵令嬢には関係ない事でしょう。」


「いいえ、私は彼女が完治するまで責任を持って見守ると決めているんです。嫉妬だかなんだか知りませんけど、彼女を攻撃するのは間違いです。」


「はっ……! 嫉妬だなんて!」


「他に何があるんです? 彼女の実力は、貴女以外に先生たち含め皆認めています。彼女に絡んでる暇があったら、鍛錬でもすればよろしいでしょう。」


「……あれは! 彼女がズルをして…!」


「まあ、なんてこと! 学院の伝統ある競技大会でズルがあったということですか!?

それなら三年間優勝した私やゼファル公爵令息も何らかのズルをしたのではとお考えなのね!」


「い、いいえ、そんな……」


「ですってよ! 先生に弁明に行かなくてはいけないわね!」


「そうですね、侯爵令嬢が言うなら相応の証拠があってのことでしょう。身の潔白を証明しに行きましょうか。」



明らかにこじつけなガルクス公爵令嬢の話だが、王太子の横に控えていたウィリアムは悩むそぶりもなく淡々と答える。

陶酔するウィリアムにまでそのように言われたナイクル侯爵令嬢は、「誤解です!」とヤケクソに謝罪を叫びながら、そそくさと教室を後にした。



「……ミファ様。ありがとうございました。」


「彼女、大会が終わってからずっと騒いでいたから、もしかしたらと思って来てみたら案の定だったわ。失礼な人よね。」



セリーナが静かにガルクス公爵令嬢に頭を下げると、頬を膨らませてセリーナに近寄った。



「この一ヶ月で仲良くなったのに、そんなことして……」


「人前ですから。」


「真面目ね、セリーナは。とにかく、学院に登校できるようになってよかったわ。もう少し治療が続くみたいだけど、ガルクス公爵家は全面的に貴女をサポートするわ。何かあればいつでも私の教室に来てね。」


「……ありがとうございます。」



ニコニコと見つめてくるガルクス公爵令嬢にセリーナは曖昧な笑みで応える。自分を守るためにわざわざ教室に足を運び、こうして大勢がいる前で【公爵家が味方だ】と宣言しに来てくれたのは容易に想像できた。

私のためにそこまでしなくても、と思う反面、たった今面倒な場面を切り抜けられたのも間違いなくガルクス公爵令嬢のおかげであった。


本人は気付いていないが、今や崇拝の域に達しているセリーナを咎めるのはナイクル侯爵令嬢くらいである。



「セリーナが登校できるようになったことだし、大会の表彰式も近々行われるのではないかしら?」


「学院長も至る所からせっつかれていると言っていたよ。少しでも早くやりたいみたいだったけど、僕とルークでもう少し先にしてくれと頼んであるから。

せっかくなら怪我が快癒してからの方がいいだろう?」


「……はは、そうですね。」



できることなら表彰式なんて出たくない、というのが本音であるが口が滑っても王太子にそんなことは言えないセリーナは苦笑いをするしかない。



「……ところで、ゴルドー伯爵令嬢、大会前に話した例の……」


「ちょっと殿下、登校初日のセリーナにいきなりそんな話をしなくても。」


「まあ、それもそうなんだけど。ただ重要なことだろう?」


「……。」


「ミファ様、構いません。私はいつでも構いませんので、ルーク兄様と一緒に伺います。」


「……そうか、助かるよ。じゃあ今日の昼休みにでもルークを迎えに寄越すよ。ルークもいいかい?」


「勿論です。」


「ゴルドー伯爵令嬢がいいのであれば、ユグネル子爵令嬢も一緒で構わないよ。」


「えっ……私は……」


「ありがとうございます、では彼女も一緒に。」



セリーナが迷わず即答するとルイーザも少しばかり驚いた表情を向けた。すぐ後ろにいたルイーザに小声で「その方が結果的に怪しまれないでしょ」と声をかけると何とも言えない表情で頷いた。



「……じゃあそういうことで、よろしく頼むよ。」


「じゃあね、セリーナ。また後で。」


「ありがとうございました。」



去っていく王太子やガルクス公爵令嬢に礼をして見送ると、入れ替わりでセリーナに近付いてくる人物がいた。



「……セリーナ、おかえり。待ってたよ。」


「……ありがとう、ルーク兄様。」



言葉少なにセリーナに声をかけたルークはすぐに王太子たちの後を追って教室を出た。しかし、その少ない会話は、大会後に更に強固となった二人の信頼関係が故であった。


王太子たちが去った後もセリーナの周りには人だかりができていた。

その様子を、教室の後ろのドアからナイクル侯爵令嬢が憎らしそうに見つめていた。



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