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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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7-3.終幕


「とにかく、脅威がないなら救護班を呼ぼう。」


「そう、ですね……早く、ルーク兄様を……」


「いやだから君の方が重症……っておい、どうした!」


「だい、じょうぶです……だいじょうぶ……」



治癒魔法で和らいではいたものの、痛みが限界に達し、更に対ディカエの防御魔法を使ったことで魔力量の消費が激しくセリーナの体は悲鳴をあげていた。



「どこが大丈夫だ!! 救護班! 入場を許可する!」



その声に結界の制約が取れ、待ち構えていた救護班が雪崩のような勢いで入ってくる。



「遅いですよ!!!! 何ですぐ入れてくれないんですか!!!」


「事情があったんだ、令嬢を見てくれ!」


「ああ、なんて酷い……こんな……急いで医務室に行きましょう、急がなければ跡も残ってしまうわ。」


「令息のほうも攻撃魔法の余波で内臓が少し損傷してる!」


「クーデン先生が二人とも治癒魔法をかけたんですか!?」


「いや、令息のほうは俺が駆けつけるギリギリまで令嬢がかけていた。」


「ああ、まあなんてこと……! こんな状態で……!」



クーデンも微力ながら継続して治癒魔法をかけ続けているが、セリーナは完全に意識を失っていた。そんな中、救護班が駆けつけたことで一気に騒がしくなったためにルークが静かに目を覚ました。



「……うっ…うう……」


「あ、ファベルク伯爵令息の意識が戻りました!

大丈夫か! わかるか!?」


「……こ、こは………令嬢は……?」


「まだ競技場だ。公爵家の二人は無事だよ。」


「……セ、リーナ……は?」


「ガルクス公爵令嬢の魔法をまともに食らった上に君を庇って重症だ。」



クーデン先生の言葉にふわふわとしていた意識が一気に現実に引きずり込まれるような感覚に陥る。はっ!として起き上がると、身体中に激痛が走る。

救護班として応急処置をしていた男性教師が慌てて止める。



「お、おい、まだ起き上がっちゃ駄目だ。二人とも重症だ。」


「お、おい、セリーナ! 大丈夫か!? な、んで、こんなに……!」


「言ったろ、重症だ。そしてお前も重症だ、大人しく治療を受けてろ。」


「そんな、彼女は……防御を張って……」


「だから前に言ったろ? 何かあったら彼女をとれって。」



ルークは、大会の申込時にクーデンの元を訪ねたときに言われた言葉を思い出していた。





【……でもな、いいか。殿下たちと彼女、選ばなければいけなくなったら、迷わずセリーナ嬢を選べ。】





この言葉の真意は一ヶ月ほど経ってもわからないままであったが、先程の事態から今のこのセリーナの状況を見てルークもついにその意味に気付く。


" セリーナも、契約者だったのか…! "


そうと分かると、今まで不思議に思っていたこと全てに説明がついた。

この規格外の強さも、叔父が何よりセリーナを最優先していたことも。そしてセリーナをとれ、ということは彼女が契約している精霊は、彼女を優先したとしても許されるレベルの上級精霊の中でもトップクラスということだろう。

そして彼女自身も、元来自分よりも他人を優先するきらいがあった。ディカエが見えていて何か術を知っているとしたら咄嗟に相手を守るだろう。

となれば今のこの状況も、距離はあっても目の前で現れたディカエに、セリーナが自身で張っていた防御を解除してガルクス公爵令嬢を守ったのであることは容易に想像できた。

その結果、ガルクス公爵令嬢の魔法を食らった上に自分のことも身を挺して守ってくれたのであろう。自分のすぐ近くで気を失っているセリーナはボロボロであった。


セリーナがディカエを止める術を持っていたとしたら、自分がセリーナに防御魔法をかけていたら彼女はここまでの怪我を負うことはなかった。


その全ての意味においての、【彼女を優先しろ】だったことに気付き、後悔の念が押し寄せる。



「……僕を守るって、言ってたの……本気だったのか……」


「……命に別条はない。二人とも重症だから、絶対安静だ。揃って医務室に行くぞ。」


「……アレは?」


「大丈夫だ。もういない。」


「……よ、かった……。」



ルークも意識は戻ったものの満身創痍であることに変わりはなく、再度体を倒して寝転がった。



「……僕は……なんてことしたんだ……。」


「お前は悪くない、今回は不測の事態だ。自分を責めるな。とにかく今は休め。」


「……お、願いします……セリーナ……」



ルークはすぐにまた意識を失ったが、セリーナがかけ続けた治癒魔法と救護班の応急処置により、静かに寝息をたてていた。



「……よかった、眠ったみたいです。」


「これ以上パニックにならないでよかった。彼はこちらで運びます。」



ルークが担架で運ばれていく間も、救護班によるセリーナへの応急処置は続いた。少しずつ顔に血色が戻ってきたタイミングでセリーナも担架で医務室に運ばれていく。





見たことのない緊迫な様子に、観客席の者たちも心配そうに見つめていた。



「二人とも意識がないみたいだったぞ。」

「どちらもまともに攻撃を食らってたろ?」

「あんな強固な防御魔法を展開してたのに急になぜだ?」

「令嬢なんてボロボロだったぞ、大丈夫なのか?」

「彼女……ご婚約もまだでしょう?怪我は大丈夫なのかしら……」


それぞれが心配そうに見つめる中、ルイーザは担架でルークとセリーナが運ばれていくのを見届けると席を立った。



「待てルイーザ! 今行っても邪魔になるだけだ!」


「嫌よ、こんなところで待っていられないわ! ルークもだけど、セリーナ! あの子! あんなボロボロなのに……!」


「……大丈夫、大丈夫だ。落ち着け。少し離れたところで見守ってよう。一緒に行くよ。」



ルイーザが目に涙をいっぱい溜めながら必死に我慢する姿に周りの全員が彼らを思って心を痛めた。





そんな一連の様子を見ながら、ある人物はそっとほくそ笑んでいた。



「……あの女を殺すことはできなかったが、()()()()、契約者だったとはな。

ふっふっふっ、これは面白い、よくもまあここまで……。



ふむ、


とりあえず、消すべき邪魔者が増えたな。」



こうして静かに席を立つと、騎士団幹部たちからの遠慮のない視線をものともせずに颯爽と観客席を後にした。



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