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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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7-2.終幕


……時は、試合直後に遡る。




「おい、君たち! 大丈夫か!」


「……先生。」



クーデンがルークとセリーナの元に辿り着いた時は思わず息をのんだ。ウィリアムの攻撃魔法をまともにくらったルークは勿論だが、それ以上にセリーナも大怪我であった。



「……もう治癒魔法はいい、相当魔力を使うだろう。彼は大丈夫だ。」


「いえ、大丈夫です……ギリギリまで……」


「正直君の方が重症だ。頼むからやめてくれ、俺がシリウスに殺される。」



クーデンは、左手で幼馴染にひたすら治癒魔法をかけ続けるセリーナをどうにか止めようと必死だった。



「……こりゃまともに食らったな。タイミングが悪すぎた。」


「……そう、ですね。痛いです。」


「だから言ったろ、重症だ。」



攻撃魔法をまともに食らったのはルークも同じであるが、魔法事態が後発型魔法の中でも基礎に分類されるものであったことや、咄嗟でも防御魔法を張っていたこと、そしてセリーナの捨て身の防御で状況ほど酷くはなかった。

そんな中、セリーナはガルクス公爵令嬢の上級ともいえる攻撃魔法が直撃しただけでなく、その魔法が火と電流だったことから右腕全体が火傷と裂傷、そして麻痺で感覚すらない。そしてルークを咄嗟に守ったことで、ぶつかる瞬間に防御魔法を張りはしたものの体全体にかなりの衝撃を受けた上に、額や色々な箇所から出血していた。



競技大会史上初と言えるほどの大怪我である。



未だ安全確認ができていない競技場に無闇に人を入れるわけにいかず、クーデンはあまり得意ではない治癒魔法を必死にセリーナにかけていた。



「……ありがとうございます、先生。」


「……すまないな、あまり得意ではないんだ。」


「いいえ、ありがたいです。」


「……救護班が入ってこない理由を聞かないんだな。」


「ええ。そんなことよりルーク兄様の方が心配で。」


「……そうか。左手はまだ動くか? その額の傷はちょっと深そうだからこれで押さえておいてくれ。」



ハンカチを取り出すとセリーナの額の傷に押し当てた。痛みに一瞬顔を顰めるも、セリーナも素直に左手で傷を押さえた。



「……俺も見えてるんだ。隠さなくていい。」


「……何のお話です?」


「ディカエだ。君も見えてたな。」


「……。」


「実を言うと前にシリウスから軽く聞いてたんだ。君のお母さんもそうだったから、特に驚かなかったよ。それに君の精霊はかなり心配症のようだな、君に幾十も精霊の守護がかかってた。」


「なんだ……シリウスおじ様もいってくれればよかったのに。」


「油断するからだろう。僕にもヒントを与えた程度だった。おかげで君を見てるのは面白かったよ。」


「私が必死に送っていた日々を面白がられていたのは心外ですね……。でも、先生も……」


「ああ、俺も隠してる。俺は次男だったからな、面倒なんだよそういうの。」



信じられないほど嫌そうな顔をする教師に、セリーナは思わず笑ってしまう。気を紛らわすための雑談であったが、少しでも笑う余裕があったことにクーデンは密かに安堵する。



「……ディカエはもう大丈夫ですよ。」


「どうしてわかる?」


「私の守護精霊が元に戻しましたから。」


「待て結界が……、いや、そんなの無いようなものか。お礼を伝えておいてくれるか。とんでもないことになるところだった。」


「わかりました。」


「……攻撃を防いだのは、君の魔法だろ?」


「そうです、ディカエ専用の防御魔法です。透明なので誰にも見えてなかったと思いますが……」


「もう契約者であることを露呈させてでも俺の守護精霊を呼ぼうかと思っていたところで、何もないのに急に動きがとまったからな。」


「……ある程度魔法が使えるようになってすぐ、シリウスおじ様から、極めろ!と言われて教わった魔法です。何が何でも咄嗟にでも完璧にできるようにしろ、って。」


「……そうか。」


「小さい頃から特訓したおかげでミファ様を救えたみたいでよかったです……突然のことで顔に出てしまったのでミファ様にはバレてしまったかもしれませんが。」


「俺がうまく誤魔化すよ。心配するな。」


「……ありがとうございます。」



セリーナがディカエの姿を視認した時、考えるまでもなく対ディカエ専用の防御魔法を発動していた。しかし、それにはかなりの魔力を使うため、自分やルークを守っていた防御魔法を解除しなければならなかった。

間が悪く、ガルクス公爵令嬢に防御魔法を施した瞬間に彼女が放った攻撃が自分にあたっていた。防御魔法を張るために前に出していた右手に激痛が走り、思わず痛みに顔を顰めるが、レンの精霊力の気配を感じたためルークを守ることに舵を切った。

ルークの名前を叫んだ時にはどう考えても間に合わず、必死に彼への衝撃を和らげることだけを考えて動いていた。我ながら無茶をしたな、と思い出して笑ってしまうほどだった。



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