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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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6-3.伝説の決勝戦



ウィリアムは気配の出所を探すが、すぐに霧のように消えてわからなくなってしまった。本来であればすぐに試合を終わらせて確認をしたいところだが、理由もなく中断させることは難しく、だからといってディカエの可能性を示唆すれば観客がパニックを起こすことは目に見えていた。


" 万が一の時は、失格になってしまってもルタを呼ぶしかないな…… "


魔法競技大会ということで、例え契約者であっても精霊の助力を受けることは禁止事項となっていた。純粋な魔法の力を競うという趣旨だからである。そのため、競技場内は精霊が入れない弱い結界が張られており、ウィリアムたちはじめ契約者の精霊であっても場内に入れることは禁止であった。


ウィリアムがどこか切迫した表情になったことに気付いたルークは、不測の事態が起きたことを悟った。攻撃の手を緩めようかと思ったその時、



ガルクス公爵令嬢のすぐ後ろに突然ディカエが現れた。




警戒していたウィリアムですら気付くのが遅れるほどに、姿を視認できるまで全く気配を感じなかった。そのため、姿が現れ気配を察知できるようになった時には、まさにディカエがガルクス公爵令嬢に攻撃しようとしているタイミングであり、ウィリアムやルークも互いに向かって攻撃魔法を放った後だった。


ウィリアムとルークは気付くと同時にガルクス公爵令嬢の周りに防御結界を張るが、慌てて作った防御結界であることや相手が元は精霊であることからディカエの攻撃を完全に防ぐことは難しかった。急に防御結界が複数現れたことでガルクス公爵令嬢もようやくディカエの存在に気付いた。ディカエについての知識はあっても、初めて見る禍々しい存在を前にガルクス公爵令嬢は恐怖で立ちすくむことしかできなかった。

ルークは自分の防御に割いていた魔力を使ってディカエに攻撃を放ち、ウィリアムはガルクス公爵令嬢の方へ駆け出した、と同時にディカエの攻撃が何かに防がれた。


しかし、そこには確かにウィリアムたちが張った完璧とは言えない防御結界しか見えない。



「ルーク兄様!!!」



セリーナの声が届くと同時に、ウィリアムが前もって放っていた後発型の攻撃魔法がルークを襲った。ルークは咄嗟に防御を張るが魔法を相殺することもできず、衝撃に体が後ろへ吹き飛んだ。セリーナは風魔法で自分に追い風を吹かせ、何とかルークの背中に回り込んで受け止めるも、衝撃を止め切ることはできず、そのまま二人とも競技場の壁に激突した。


咄嗟に令嬢を庇いうずくまるようにしていたウィリアムは、ディカエの気配がなくなると同時にドカン!という衝撃音に顔をあげた。何らかの障害に阻まれ動けなくなっていたディカエはそのまま姿を消していた。不思議に思うと同時に、試合相手の二人の姿がなく、奥の壁で土埃がたっているのが見えた。

目を凝らしていると、気を失っているルークとその後ろで彼を守るように抱え込むセリーナの姿が見えた。自分が遅れて攻撃が発動する魔法を放っていたことを思い出したウィリアムは慌てて彼らの元に向かおうとするが、ディカエがどうなったかわからないままにガルクス公爵令嬢を置いてはいけなかった。


競技場内でとんでもない事態が起きていたことも気付いていない観客席の人間たちも、固唾を飲んでルークたちを見守る中、セリーナが静かに顔をあげた。咄嗟に幼馴染を庇った彼女の額からは血が出ており、観客席にいた女性たちはその姿に手で口を覆う者たちも多かった。



「……降参です。」



セリーナは全員がギリギリ聞き取れるような小さい声で降参を宣言する。その声に審判であるクーデンが間髪おかずに試合の終了を宣言する。



「東側、セリーナ・ゴルドーより降参の申し出あり。競技の継続不可能であることを認める。

勝者、西側、ウィリアム・ゼファル、ミファ・ガルクス!」



競技場の観客席から前人未到の三年連続優勝と稀に見る高レベルの試合に割れんばかりの拍手が送られる。


そんな中、優勝した公爵家のペアに喜びの顔が見えないことに気付く者も多かった。ガルクス公爵令嬢は未だに血の気がない顔をしており、その横でウィリアムが彼女の体を支えていた。



「二人とも、とりあえず急いで競技場内から出るんだ。」



クーデンが焦った顔で二人に駆け寄ってきた。



「……先生、でも二人……」


「大丈夫だ、俺が今から見に行く。君たちの安全確保の方が最優先だ。」


「彼らも、まずはここから出ないと……ディカ……」


「競技場内にいた俺たちしか気付いていない可能性が高い。王族方も気付いてないとなるとかなり巧妙な手段を使われている。その言葉は口に出すな。いいか、君たちの安全が最優先なんだ、意味はわかるな?」


「…………はい。」


「公爵令嬢も放心状態で一人では動けないだろう。君が付き添ってやれ。競技場から出たら精霊でも呼んで王族席まで飛ぶんだ、騎士団長もいるから安全だろう。」


「……わかりました。」



ウィリアムはもう一度ルークたちを見ると、セリーナが息も絶え絶えになりながらルークに治癒魔法をかけているのが見えた。自分の不甲斐なさにやるせない気持ちになりながらも、クーデンに言われた通りにガルクス公爵令嬢を連れて競技場を後にする。

二人が無事に出たことを確認すると、クーデンは一目散にルークたちの元へ駆け出して行った。



これまでのガルクス公爵令嬢は勝気な印象を受けた方もいらっしゃるかもしれませんが、お転婆で強気な令嬢ではありながらも、やはり公爵令嬢であり、長年王太子妃としての見聞を深めるために時間を費やしてきたため、生粋のお嬢様です。

初めて見るディカエの禍々しさに気を失わないだけ強い子です。


そして試合中の男性たちの行動について、ウィリアムがガルクス公爵令嬢の方に走り出したことで自分が放った攻撃が当たらないと確認したルークは、あえてその場に留まり攻撃魔法をディカエに打ちました。

この場での最優先は、とにかくガルクス公爵令嬢です。



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