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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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閑話.静かなる怒りの裏で



競技場内で最後の猶予が与えられていた五分間の間、それ以外の場所でも様々な反応がみられていた。



〜観客席〜

○ゴルドー伯爵家○


「なんだ、なんなんだ! あの娘、侯爵家の方々にあんな態度を取って……!

負けるに決まっているだろうが……!」


「…お母様……お姉様は大丈夫かしら……」


「……祈るしかないわ。無事に終わるように願いましょう……。」




○ユグネル子爵家○


「ルイーザ……いくらなんでも大丈夫なのかい?

あの侯爵家のお二人、あまりいい噂を聞かないよ。」


「侯爵令息は、以前試合相手の利き腕をわざと攻撃したことがあるのでしょう?

流石にあの温和な嫡男の方が戒めたってお茶会でも話題になっていたわよ?」


「お父様、お母様。ルークとセリーナならきっと大丈夫よ!

でも……セリーナも実は物凄く怒っていたみたいだから違う意味で心配ね……。」


「そこはルークがうまくやるだろう!」


「……ルーク、セリーナの気迫に流されやしないかしら?」


「……心配だな。」

「……心配ね。」




○王族席○


「……エオルや、そなたの護衛騎士は相変わらず控えめだな。」


「だからいいのですよ、父上。実力は申し分ないですし、護衛騎士が喧嘩っ早くても困ります。何より小さい頃からの付き合いですからね、信頼が不可欠です。」


「それもそうか……。だが相手がなあ……件の令嬢だって実戦経験はないのだろう?

流石にあのルールは……」


「今更何をおっしゃっているんです?

あまり口出しするのはよしとされないにしても、心配なら先程の時点で介入すればよかったんですよ!

あの子、これで怪我をしてしまったら可哀想だわ……」


「母上、おそらくそれは大丈夫ですよ。心配なのは侯爵家の二人ですね……ゴルドー伯爵令嬢の実力を見誤っているようなので。」


「相手の力量を見誤るのは致命的だな……、どうだね、騎士団長よ。」


「……騎士であればどんな相手でも警戒しなければなりません。相手を侮ることは自分、ひいては主人や仲間を危険に晒しますので。かの侯爵令息は実力はあるものの以前からそういったきらいがありますので、騎士を目指す以上は改める必要があるかと。」


「騎士として以上に、人としてもどうかと思うけどね、僕は。」


「それも王太子殿下のおっしゃる通りですね。」


「なんだなんだ、護衛騎士殿が慌てふためいておるわ。あやつの甥っ子とは思えんな。」


「ゴルドー伯爵令嬢は意思がしっかりしているようね。ここからでも怒っているのがよくわかるわ。なんだか可愛いわね、ふふふ。」


「……はあ、ルークの奴……大丈夫かな。」




○ファベルク伯爵家○


「……父上、大丈夫ですかね……あれは完全にセリーナを止めにいってますよ。」


「セリーナも弟の変なところを引き継いでしまったな……ルークが色々言われていたことが彼女も本当は我慢ならなかったんだろう。」


「……先程のルークの焦りようとクーデン先生の様子を見るに、セリーナも相当の怒りようですね。放っておいていいんですか?」


「ルークもセリーナも馬鹿じゃない、加減はわかっているだろう。何よりセリーナが追加ルールで制裁をしないと確約させたから彼らも表立って手出しはできないだろうし、後はもうセリーナの問題だ。」


「……これから荒れそうですねえ……叔父上はいつ帰ってくるのやら。」


「手掛かりが掴めたようだから、そろそろ戻ると言っていたよ。」


「シリウス様が間に合わないなら、今度こそセリーナは私たちで保護すればいいだけのことよ。ついでにルイーザとユグネル子爵家の皆様にも来ていただけばいいのよ。彼らは何してくるかわからないわ。」


「ちょっと母上、こんな所で話すのはやめてよ。」


「まあまあ、とりあえずセリーナの成長をしかと見届けようじゃないか。私たちが待ちに待った日だ!」




○某公爵家○


「……うっ、ぐすっ」


「いい加減泣き止んだらどうだ? 試合が始まるぞ。」


「ぐすっ……だって、彼女のっ……うっ…忘形見よ。あの時公爵家の力を使って無理にでも引き取ればよかったって何度後悔したことか!」


「こうして立派に育っているじゃないか。ほら、噂の護衛騎士殿がタジタジになっていて面白いぞ。あいつの甥っ子とは思えないな!」


「大丈夫かしら……何かあったら……!」


「平気さ。あいつの愛弟子だそうだし、何よりあの目。あれは相当怒ってるぞ……よく相手の侯爵家の若者たちは気付かないな。」


「……シャロンにそっくりね。怒ると目の奥で火がゆらゆらして見えるほどだったもの。目は口ほどに物を言うっていうのはまさにあれのことよ。」


「……それはどうなるか楽しみだな。」


「この大会が終わったら彼女を絶対に公爵家に招待しなくちゃ!

なんなら息子のお嫁さんになってほしいくらいだわ!」


「……自分の息子の試合より彼女のほうが夢中だな。」




〜控え室〜


「あらあら、彼女とっても怒ってるわ……。ルイーザと違ってクールかと思っていたけれど、隠してただけなのね。」


「ルークが諦めたような顔になったぞ……大丈夫なのか?」


「相当の手練れのようだし、ファベルク伯爵令息の立場を考えて彼女が動くんじゃないかしら?

これは決勝が楽しみね!! どんなルールにする?」


「……まだ俺たちは準決勝が残ってるんだぞ。」


「大丈夫でしょ。あんな端っこの方でさっきから震えてるもの。私たちの何がそんなに怖いのかしら?」


「……まあ君だろう、容赦ないから。」


「なあに?」


「……いや。……程々にいこう。」



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