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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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3-4.開幕!競技大会



観客席で一悶着起きていた頃、控室に戻ったルークとセリーナの間にはなんとも言えない空気が漂っていた。セリーナは確かに防御結界のレベルを下げていた。しかし、単純に彼女のレベルが高すぎるが故に、防御結界のレベルが十段階中の三だとしても完成度が十段階中の十を更に上回るものであったために、規格外の防御結界となってしまった。

現役の学生ということを考えても、防御結界も五段階目あたりを使いこなせば優秀だといわれるレベルだが、既に二年連続大会に出ているルークの肌感では、序盤の試合は防御結界も三段階目で十分だろうと考えた。現時点で学院のほとんどの者がセリーナの能力を知らない点から考えると、三段階目の防御結界を張れるだけでも驚かれるだろうと思ってはいたが、少し違う形で全員の度肝を抜いてしまった。



「……ごめんなさい、ルーク兄様。レベルは下げたのよ……。」


「いや、分かっているよ。セリーナは悪くない。……正直相手も君のことを見くびっていたようだし、一発目に出す攻撃魔法にしては強力なものだったよ。あちらの作戦によるところもあったろうから、何度も言うが君は悪くない。」


「……次から、大丈夫かしら。」


「……まあ、どうにかなるだろう。相手が怖気付いて攻撃してこないなら、こちらから仕掛ければいいだけだし。」


「……次は、どのくらいにしましょう……」


「……一回戦より下げるわけにはいかないから、そのままでいこう。相手もどうにか対策を考えてくるだろうけど……まあどうにもならないだろうから、まあ準決勝あたりまでは順当に進むと覚悟しておいてくれ。」


「そうね……もうかなり他の出場者の方に遠巻きにされてしまっているし……」


「まあ無理もないよ、規格外すぎるからね……これからの生活が一変する覚悟を決めておいた方がいいよ。」


「……やっぱりルーク兄様のお願いを聞くんじゃなかったわ……」



ルークとセリーナがそんな会話をしている間も、共通の控室内にいる出場者たちのほとんどは

「今年も決勝戦はあの方達になりそうだ……」

と遠い目をしている者がほとんどであった。


それほどにセリーナの防御結界は完璧以上で、出場者たちの希望を叩き折るには十分すぎるものであった。

そんな出場者たちの様子をガルクス公爵令嬢は微笑みながら見つめており、「ワクワクするわね!」と隣にいるウィリアムに話しかけていた。本来ならすぐにでもセリーナの元へ言って話を聞きたいくらいだが、控室内では他のペアとの接触は極力控えることがマナーとなっているため、遠くから頭を抱えるセリーナを見て笑うに留めていた。いつもならガルクス公爵令嬢のそんな様子を嗜める立場のウィリアムも、先程のルーク達の試合を見て「もし戦うことになったら面白い試合になりそうだ」と自然と楽しみに感じるほどに、セリーナの実力を認めていた。


そんな二人の様子を見たルークは彼らの考えていることが手に取るように分かり、また小さくため息をついた。




その後も、ルークの予想通り二人は何の問題もなく試合を勝ち進めていった。相手が彼らに全く歯が立たないという方が正しい。

準決勝まで駒を進めた二人だが、トーナメント表を確認しながら二人揃って本日一番の苦い顔をしていた。



「……ある意味、ウィルたちよりも当たりたくなかった人たちと戦う羽目になったな。」



準決勝の相手は、あのナイクル侯爵令嬢のペアであった。

ウィリアムが好きすぎるあまりにとんでもない行動力と思考力を兼ね備えているナイクル侯爵令嬢ではあるが、魔法の実力が比較的高く、またペア相手のレイオール侯爵令息も騎士団入団希望の実力者であった。ただ、二学年同士のペアではあるが、その戦い方はあまり評判がいいものではなく、どんな相手であろうととにかく【勝ち】にこだわり、相手の怪我への配慮などは一切ない、所謂激しい戦い方をする者たちであった。

実際、先ほどの準々決勝で二人と戦った男子生徒はその場で応急処置を施されるほどであった。



「……ここで勝たないと決勝戦はウィルとナイクル侯爵令嬢が戦うだなんて色んな意味でカオスなことになりそうだし、ただ勝っても負けてもナイクル侯爵令嬢は僕へのあたりが更に強くなるだろうな。」


「面倒ね……しかもペア相手のレイオール侯爵令息。彼も剣術の授業で爵位の低い方を相手に利き腕ばかりを狙って怪我をさせたそうよ。幸い軽い怪我だったようだけど、弱い奴らが悪いと言って謝罪は拒否したんですって。」


「彼の話は少し耳にしたことがあるな……、なんだか今年は随分波乱だな。もう棄権してしまいたいよ。」


「あら、私は構わないわよ。」


「……後で殿下に何を言われるかわからないからそれはできない。悪いな、セリーナ。君も同じ学年だからこれから目をつけられるかもしれない。」


「まあクラスは違うからどうにかなるでしょう……面倒ではあるけれど。」


「目に余るようであれば僕から殿下に頼むから。クーデン先生も動いてくれるだろうし。

それとセリーナ、ここからは防御結界のレベルを上げたほうがいい。何かと言われてはいるが、レイオール侯爵令息も実力があるのは間違いないからね。君の温度感で任せるよ。」


「分かったわ。ルイーザのためにも貴方に怪我をさせないように頑張るわね!!」


「……まあ何か方向性が違う気がするが、とにかく頑張ろう。」



二人は背中から負のオーラが出ているかのような雰囲気を抱えたまま、準決勝に向けて競技場に向かったのであった。




キリがいいので、本日が年内の最後の投稿とさせていただきます!

今後もお楽しみいただけるように頑張りますので、来年も引き続きご覧いただけると嬉しいです!


皆様、よいお年をお過ごしください。



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