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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
魔法競技大会編

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2-2.変化の兆し



「セリーナ、お待たせ。行こう……か……」


「……。」


「……ごめん、やっぱりもう広まったか。」


「ええ!! さっきまであの人だかりの中にいたの!」



ルークを恨めしそうに見つめながら、教室の奥の方を指差した。そこには男女関係なく、目をキラキラさせた同級生たちがルークとセリーナを見つめている。

ルークが午後の授業前に教室でペア相手がセリーナだと宣言したため、全ての授業が終わるまでには学院中に広まった。どうしてこうも話が回るのが早いのか不思議でしかないが、そのせいでセリーナは好奇の視線に晒されることになり、同級生には

「まさか貴女が出るなんて!」

「魔法が得意だったの!?」

「ファベルク伯爵令息が選ぶくらいだもの、私たち応援するわ!」

と立て続けに声をかけられ、既にヘトヘトになっていた。これは良い機会だ、とルイーザは横でニコニコしているだけで一切助け舟を出さなかったため、セリーナが一人で複数の相手をして今に至る。



「……ごめん、なんか噂の回りが異常に早いとはわかっていたんだけど、どうせ掲示されるから先に宣言しておいたほうが楽だって殿下に言われてさ……。確かに僕は楽だったけど、セリーナはそうなるよな……すまない。」


「いいのよ、私が引き受けたことだから。いいんだけど……これ一ヶ月ずっと続くのかしら……。それは流石にしんどいわ。」


「いいじゃない、セリーナもたまには中心になったって!」


「流石に疲れるから勘弁して……」


「……とりあえず行こうか……。」



一行は教室を出て、競技大会への受付場所へと向かった。道すがら、三人を見かけた生徒たちの様々な声を嫌でも聞かなければいけなくなった。


「ほら、あの子よ……ファベルク伯爵令息様のペア相手になったのって……」

「婚約者の方の従姉妹ですって。」

「あんな子いたのね……」

「ファベルク伯爵令息が選ぶだなんて、俺ももっと気にかけておけばよかった。」

「バカ言え、まさか成績上位者でもない相手を選ぶだなんて誰が思うか!」

「幼馴染だからって出たいってせがんだのかしら……」



「さっきから黙って聞いてれば!! セリーナに失礼よ!!」


「まあまあ……」



セリーナ本人は「まあここまで目立たない地味な生徒に対して思うことは同じよね……」と開き直っていたが、一緒にいたルークとルイーザはそうはいかなかった。

すれ違いざまに視線で圧を与え続けていたが、ルイーザはいつもの如く我慢の限界を迎えるのが早かった。普段ならルイーザを宥めるルークも、ここぞとばかりに同調して周りに圧を与えている。

三学年で、かつ将来の王太子護衛騎士候補であるルークに見られた(睨まれた)者たちはブルっと震え上がり、静かに頭を下げて逃げるように離れていった。



「二人ともいいのよ、こうなるのは当たり前よ。ルーク兄様が優秀だから尚更。気にしてないし、二人の評判が下がることはしないで。」


「こんなことで下がる評判なんてこちらから願い下げよ。」


「……ルイーザって、そこらの男性より男前になる時があるわよね。」


「そりゃあ私だって! 二人に敵わないことは多いけど、大切な人たちを守るために盾くらいにはなれるわ!」


「……ありがたいし、とても嬉しいけれど、程々にね。私もそうだけど、ルーク兄様も、貴女に何かあったら悲しむんだから。私たちなんて相手をどうするかわからないわよ。」


「またそんな大袈裟な。」


「大袈裟なわけがあるか。殿下たちは気にしてないけど、家格でしか見てこない奴はいくらでもいる。気をつけてくれよ。」


「大丈夫よ。迷惑かけるようなことはしないわ。」


「(本当にわかってるのかしら……?)」

「(本当にわかってるのか……?)」


「ほら! 教員室よ、ここよね!」



気がつけば受付の教員室の前に辿り着いていた。今日が申込期限とあって、教員室前は普段より人が多くなっていた。その中でも、目立つ集団が一組……。



「おお、やっときたか。用紙をもらっておいたぞ。」



エオルとウィリアム、そしてガルクス公爵令嬢が教員室周りのフリースペースで一行を待ち構えていた。



「……殿下、帰ったのでは?」


「一緒について行こうとしたら断られたから、ここで待っていた。」


「……ウィル。」


「止めたさ。無駄なのはわかってるだろ?」


「はあ……」


「セリーナ!! お久しぶりね!」



ルークが下を向いてため息をついているのを見て苦笑いを浮かべていたセリーナに、ガルクス公爵令嬢が声をかけた。ルークに非難の目を向けられようが、お構いなしである。



「ガル……ミファ様。お久しぶりです。」


「ふふ、聞いたわ。貴女も競技大会に出るって。魔法が得意だなんて知らなくってびっくりしたのよ。」


「ええまあ……あまり公に使う機会もなかったもので。平均的かと。」


「あら、彼が選ぶくらいだもの、それ以上でしょう。楽しみね……!」


「……そうですね……。」



セリーナはルークと同様、先ほどの昼休みでの話を思い出し、ミファ様たちとは対戦せずに静かに終わりたいと願わずにはいられなかった。




年末の駆け込みなのか本職の仕事に追われてまして、作者ヘトヘトです……。

一日一話を目標にしているんですが、気長に待っていただけると嬉しいです。


皆さまもお体ご自愛ください……



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