1-4.突然の要望
結果して、昨年の決勝はとんでもない試合となった。
まずは人数を減らすべく、ガルクス公爵令嬢はルークに狙いを定めて徹底的に攻撃を仕掛けた。同時に二人からの攻撃を受けることになったルークは、観覧席で見ていたルイーザが時々「ひっ!」と悲鳴をあげるほどに容赦ない攻撃を受けていた。そんな状況でも、元々実力者であり、ダントス伯爵令嬢の特訓にも付き合っていたルークは攻撃を見事に捌き、ダントス伯爵令嬢も完璧に防御を展開しつつもガルクス公爵令嬢に攻撃を仕掛けられるほどに上達していた。
女性も攻撃に参加するという異常な光景に全員が固唾を飲んで見守っていたが、学生とは思えない高度な戦いに大人たちですら感心して試合に見入っていた。
それでも、ウィリアムの実力が群を抜いており(攻撃をしつつ、ルークからの攻撃を防御し、ガルクス公爵令嬢を庇いつつもダントス伯爵令嬢への反撃はできないというカオスな状況に限界を迎えたため)、ルークを壁際に吹き飛ばして戦闘不能にさせると、ガルクス公爵令嬢の防御を一手に引き受けた。攻撃に集中できるようになったガルクス公爵令嬢はダントス伯爵令嬢に猛攻を仕掛けて戦闘不能にさせた。
トドメの一撃を与える際、ウィリアムもガルクス公爵令嬢も、怪我をしないように相手に薄い膜を張って防御していたことでルーク達に大きな怪我がなかったことも「文句なしの優勝者だ!」と言わしめる所以となった。
この決勝戦以来、ルークやダントス伯爵令嬢へ魔法の実力について文句を言う者はピタリといなくなった。魔法競技大会直後、ガルクス公爵令嬢は皇太子妃となった際の護衛をダントス伯爵令嬢を任命させるつもりで騎士団長に依頼をした。まさかそのためにあんな提案を…?と全員が信じられない顔を向けても知らぬ存ぜぬと言った雰囲気であったが、エオルに改めて問われると
「貴方と同じように、有望な方を捕まえておきたかっただけよ?」
と笑って答えたという。
ダントス伯爵令嬢の皇太子妃の護衛というのはまだ内々に決定したもので公表されていないが、騎士団長である父から打診を受けた際に王太子の婚約者がガルクス公爵令嬢であると勘付いたようであった。それ以来、わかりやすくガルクス公爵令嬢との距離が縮まったが、周りは
ガルクス公爵令嬢が手懐けた!
としか受け取らなかった。
こうして伝説となった一戦を今年も見れる!と楽しみにしている者が多く、今年の魔法競技大会は生徒や保護者以外の観覧希望が例年より増えているらしい。
そんな中でのダントス伯爵令嬢の負傷である。
将来の主と言っても、負けず嫌いの彼女は今年こそは!と雪辱を誓っていたがそれは叶わぬこととなってしまった。
「……まさか昨年の決勝の件から、セオリーが最初から崩れるなんてことはないよね?」
「それはない! 相手が僕らだったからだ、って彼女も明言していた。」
「私もルークが心配で気が気じゃなかったわ……ミファ様だから心配ないとは分かっていても、やっぱりね……。」
「……とりあえず少し時間をもらえないかしら? 考えさせてほしいわ、競技大会のこと何も知らないし……」
「それなんだけどさ……ごめん、セリーナ。今決めてほしいんだ。受付が今日までなんだよ。」
「…………。」
セリーナがジトっとルークに視線を向ける。断るにも断れない状況に頭を抱える。
「……急で本当にごめん、でももう本当にいないんだ……エオルもウィルも、当てがないって言うし……。」
「……ルイーザ、私が組んで嫌じゃない?」
「何言ってるの? 嫌なわけないじゃない!
寧ろダントス伯爵令嬢と同じくらい頼もしいわ。貴女の実力は私たちもわかっているもの。」
「……正直、叔父さんに手解きを受けていた事を考えて、ダントス伯爵令嬢より魔法の扱いには長けてると思ってるんだ。ちょっとこれからの一ヶ月、一緒に特訓は必要だとは思うけど……。」
「……セリーナ、もしかして叔父様のことを心配してる?」
ルークは思い出したようにハッとセリーナを見つめた。必死すぎてついセリーナの父親の存在を忘れていたが、彼女の懸念事項は常にそこだった。
これは断られるな……と内心で覚悟を決めたが、セリーナから出た言葉は予想外のものだった。
「……いいえ、お父様のことはもういいの。だからルーク兄様、私でいいなら一緒に出るわ。特訓には付き合ってくれるのよね?」
「……も、もちろんだ! 一緒にやろう。でも、本当にいいのか?
ごめん、忘れていたけど、君のお父さんは……」
「いいの、それは大丈夫。実はね……」
彼女は仮面舞踏会に参加した事は伏せて、先日久しぶりに会った父親から学院卒業までの自由をもぎ取ったことを話した。そして、これからはもっと学院生活を謳歌するために目一杯楽しんで自由に過ごすと宣言する。
突然の朗報にルイーザは目に涙を浮かべてセリーナを抱きしめ、ルークは優しく微笑んで前からセリーナの頭を撫でた。
「なによ、二人して……」
「だ、だって……! ぐすっ……偉いわ、セリーナ!」
「ルイーザの言う通りだ。よく頑張ったな。」
「……ありがとう。自分でも気分がスッキリしてるの。」
「はは、だろうな。セリーナが卒業する頃には僕もある程度は立派にやれてるだろう……と思うから、何があっても助けてあげる。それに叔父さんだって必ずすっ飛んで帰ってくるはずだ。僕の父だって、ユグネル子爵家だって君の味方だ。絶対に力になるから、どんな要求にも屈するなよ。」
「ええ、そのつもり!
貴族の籍を抜けたとしてもお父様の思い通りにはならないわ!」
「大体、セリーナが害をもたらすだなんて失礼な話だわ!」
「だからここである程度の成績をおさめて、少しお父様を驚かせておこうと思うの。私が魔法を使えるってわかってなかったみたいだから。」
「嘘でしょ?」「嘘だろ?」
「本当よ。でも病弱だって言って回ってたのは嘘だってバレちゃうわね……どうでもいいけれど!」
「セリーナ、本当に吹っ切れたのね。これからの事を考えるとこっちまでワクワクしちゃうわ!」
セリーナのウジウジを書かなくてすむようになったので私もワクワクがとまりません!!!
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