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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
仮面舞踏会編

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7-1.七年ぶりの対面



「セリーナはどこだ!!」


「本宅に来させないように仕向けているのは旦那様ではありませんか。あの子は別宅です。」


「どうせ学院の仮面舞踏会に行ったのだろう!

家長である父親の命令を無視したのだから放ってはおけん!」


「今日は私と一緒にお茶をした後、体調が優れないからとすぐ別宅に戻っていますよ。お帰りになって早々どうなさったんです?」


「嘘をつくな、ならばさっさとセリーナを呼んでこい!!」



ゴルドー伯爵邸は一大事が発生していた。

セリーナの父親であるダリオ・ゴルドーが、想定より早く帰宅したのである。普段、長子であるセリーナのことなど気にも留めないが、帰宅して一番に彼女の所在を執事に確認したところから全員に緊張が走った。

当初考えていた通り、執事が「別宅でお休み中でございます。」と返すと、特に何も言わずにその場を後にした。出迎えていた使用人や伯爵夫人たちは安堵するが、夫人が自分の部屋へ向かっている途中、衣装部屋のドアが開いていることに気が付いた。中へ入ると、夫であるダリオがドレスをかき分けていた。

呆然としている夫人に気付き、いきなり「あの娘に作ったドレスはどうした?」と声をかけてきた。非難をするもお構いなく、ただドレスの所在を聞いてくる。既に彼女に渡したことを伝えると、仮面舞踏会に行くためか、と激昂しだしたのである。



「一体それがどうしたというんです?

私が、義理の母として、あの子にドレスを作ったんです。あの子のために作ったドレスをあの子に渡して何がいけないんですか。

もっと言えば、私は今年こそあの子に仮面舞踏会に行ってほしかった、そのために手直しまでしていたのに貴方がいきなり……」


「あの娘を社交界に出すことは絶対に許さん。毒婦のようになっては困る!」


「実の娘になんてことを! あの子はそんな子ではありませんよ!!」


「実の娘だからだ。お前に何がわかる!!」


「少なくともシャロン様が亡くなってから全く見向きもしなかった貴方よりは私の方があの子のことを理解しています!!!!」


「あの女の名前を口に出すな!!!!」



既に騒ぎを聞きつけて使用人たちが集まってきており、一部の使用人は別宅へ報せに走っていた。

この場に家長であるダリオの味方は一人もいない。ましてや、女性の衣装部屋に勝手に入ったこともよしとされない行動であった。



「大体、私に直接聞けばよろしいのに、勝手に衣装部屋に入るだなんてどういうことですか。以前、ドレスのことは貴方はお許しになりましたよね?」


「作ることは許した。渡すことは許していない。」


「あの子のために作ったドレスを本人に渡さないなんてことがありますか。屁理屈はおよしになってください。」


「元々あの娘にドレスを作ること自体、許し難いことであった。それでも、お前がどうしてもというから気が済むように許可したに過ぎない。」


「離婚という醜聞が自分の身に降りかかるのが怖かっただけでしょう。」


「な、なんだと……!」


「精霊との面会が終わった貴族子女が、彼女の年齢まで一度も社交の場に出てきていない時点で周りからどう思われるかお考えにならなかったんですか?

社交は女性中心ですのよ。貴方がどんなに“ 娘は病弱で ”と触れ回っても、それは所詮男性相手でしょう。現に学院にも問題なく通っているのですから、聡い方なら既にお気づきでしょう。その時点で貴方が気にする世間体なんてたかがしれてませんこと?」


「お、お前……!」


「ならば学院も休ませるだなんておっしゃいませんよね?

学院は貴族の子であれば卒業は義務ですもの。今では優秀な平民の方なども特待生として卒業していくのに、まさか()()()()()()()セリーナが()()()()()で卒業できないだなんて、そんなふざけたお話があるわけありませんわよね?」


「ル、ルチア……! お前……!」



伯爵夫人であるルチアは、今までの鬱憤を吐き出すように止まらない。実子に対して許されることではないと常々思っていた上に、セリーナの亡き母であるシャロン・ゴルドーはルチアの憧れの人物でもあった。

周りにいたルチア付きの侍女や使用人は、伯爵夫人の猛攻を固唾を飲んで見守っていた。未だ戻ってきていないであろうセリーナのため、全員が解雇を覚悟して、文字通り主人を体で止めるつもりだった。そんな中、先陣を切って地雷を踏んでいく女主人を心配そうに見つめる使用人もいた。



「………お前、相当離婚したいようだな。」


「貴方がお望みとあらば。私は、貴方に目を醒ましてもらいたいだけですわ。」


「……何も知らないのは、お前だ。」



ダリオは虚ろな、それでいて悲しそうな視線をルチアに向ける。

拗れた事情があるとはわかっていたが、予想以上だと確信したルチアはどうにかそれを聞き出すために声をかけようとするが、ダリオが言葉を続ける方が早かった。



「……そなたと離婚する気はない。衣装部屋に無断で入ったことは申し訳なかった。

……しかし、セリーナのことは譲ることはできない。今すぐ彼女を呼んでこい。来ないならば、私が別宅に行く。」








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