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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
仮面舞踏会編

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1-2.日常



私の守護精霊は、白い虎の姿をしている。

人によって犬であったり猫であったり、はたまた鳥であったり様々だ。

目の前にいるナタリアには、小鳥の守護精霊がついている。



「あなたと話せることが表に出たら好転どころじゃすまないわよ」


『なぜだ。精霊と話せる者らの中で、それを隠すなんてほんの僅かだぞ。』


「公にしている方たちはほぼ高位貴族、もしくは王族の方でしょう。

そんな中に、私もです、なんて入っていけないわ。絶対に面倒事に巻き込まれるもの。」


『ふむ。何度聞いても納得できん。そなたの母親もそうだったが、我らを視認できるだけでも特別なことだぞ。』



ほとんどの者が精霊の間に行かない限りは自分の精霊と会うことも叶わない。

精霊の間に入ろうとも、自分の精霊と言葉を交わすことができないのが通常である。


そんな中、精霊の間で突如目の前に現れた白い虎に話しかけられ、目が点になっている間に

『私に名を付けてくれ。』

と言われ、平均的な十歳よりも達観していた私も、驚きのあまりに腰を抜かしたほどである。


こうして精霊と名付けをした者は、精霊の間でなくとも普段から精霊を視認することができ、会話も可能である。

私はこの白い虎をレンと名付けた。

レンは常に私の側にいてくれるが、身軽に動けるように普段は猫サイズ、というよりほぼ猫に変化している。


今でも私がなぜこんなことが可能か理解できないが、レン曰く、精霊にもランクのようなものがあるらしく、高位の精霊であることと、精霊自ら選んだ人間との親和性が高いことが最低条件らしい。



「レン様はいつも通り膝の上にいらっしゃるの?」


「うん、丸まってる。私のことを言えば好転するだろうって。」


「それは私もそう思うわ。」



ナタリアは精霊の姿が見えない。

いや、国中を探しても精霊と契約をした者はほとんどいない。

それだけ貴重な存在で、それだけで人々から尊敬の眼差しを受けるくらいである。



「十歳の私は、とにかくこれはお父様に知られてはいけないってことしか頭になかったのよ。

その判断が正しかったかは今でもわからないけど、でもそのおかげですごく普通の生活が送れているから満足よ。」


「オープンにしていれば、王太子様とまでは言わないけど、高位の方からお声をかけていただけたかもしれないのに。」


「嫌よ、面倒じゃない。」


「はあ…これだからリーナは……先が思いやられるわ。」



当時、精霊の間でレンと話し込んでしまった私は、中々出てこなかったために神官にかなり心配された。

同時に、選ばれたのではないかと期待されたが、ずっと精霊様を眺めていましたと言って誤魔化した。


精霊の間を出た途端、人々の周りにいる精霊たちが見えるようになってしまい大変だった。

視線でバレてしまう…というよりは不審者認定されてしまうということに早々に気付き、何年もかけて見えないように振る舞う特訓をした。これがとてつもなく難しかった。言い方は悪いがなにせそこら中にいるのである。


私がこうして精霊が見えることを知っているのは、ナターシャとナタリア、そして元家庭教師である恩師の三人だけである。




「考えても仕方ないわ。

とりあえずこのまま無難に過ごせば、学院の卒業までは恙なく過ごせるでしょ!」


「はあ…せっかく奥様譲りで綺麗なのに…外も内も全て隠すなんて…、無難といっても限度があるわ…」


「私この姿結構気に入ってるのよ?

びっくりするほど普通で当たり障りない女子生徒になれるの! 最高よ!」


「はあ……もったいないわ……」



母親譲りの白に近いプラチナブロンドの髪は少々目立つため魔法で父と同じ茶髪に見えるようにしている。ナターシャやナタリアは、せっかくサラサラの御髪を……と残念そうにしているが、低めのポニーテールに結わいている。

せめてもの抵抗でナタリアがサイドを編み込みしたり、控えめながらも綺麗な髪飾りをつけてくれたりとしているため、そこまで野暮ったく見えていない。自分としては野暮ったいくらいでちょうどいいと言ったが、こればかりは二人とも首を縦に振らなかった。

極めつけに、黒ぶちの眼鏡をかけて瞳の色を誤魔化し、他者から「ああ、そんな人いたかも」くらいの認識になるようにして完成だ。


眼鏡をかけているのは、レンと契約したことにより瞳の色が変化したから。

精霊と契約をした者は、瞳の色が変化していくようで、セリーナも白に近いグレーの瞳だったが、レンと出会ってからは瞳が薄くピンクになっている。徐々に色付いたため、一緒に住む二人を除いて気付かれてはいない。

【精霊は見えていません】特訓をどんなに極めようとも、瞳の色を見られれば一発アウトである。


こうした努力の末に、可もなく不可もなく、無害な女子生徒という肩書を手に穏やかに学院生活を送っていた。(満足しているのは当人だけである)




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