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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
仮面舞踏会編

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4-3.最後のチャンス



「学院の中だ、あまりかしこまらないでくれ。ガルクス公爵令嬢、随分…嬉しそうだね。」


「ええ、ようやく私と同じ使命を全うしたセリーナと会えたんですもの。お友達になっていただいたわ。」


「へえ、それはよかった。あのナイクル侯爵令嬢の件はこちらの学年にまで噂が届いたよ。見事だったね。」


「い、いえ……それほどでもございません……(そんな噂が回っているなんて知らなったわ)」


「僕たちの中でも話題だったよ、ガルクス公爵令嬢以外に彼女をげきた…、…穏便に事を終わらせられる人なんて見たことなくてね。一体何があったか聞いてもガルクス公爵令嬢は教えてくれないんだ。」


「ええ、流石の私でも話せませんわ。セリーナの優しさが詰まったあの行いに泥を塗るようなことになってしまいますもの。万が一、それが広まってしまえば疑われるのはセリーナですからね。あれは女の秘密ですわ。」



セリーナは、ガルクス公爵令嬢の思慮深さに感銘を受けていた。正直、あの時は周りに野次馬もいたからナイクル侯爵令嬢がページを開いた時に見えた人もいるのではないかと心配だった。学ぼうとする気持ちがある相手を馬鹿にするなんて、とセリーナは思うが、そういった人間は少数であろう。それができて当たり前のことだとなおさらだ。

ただその噂が広まれば一番に疑われるのはセリーナであることは本人も危惧していた。それを正しく理解していたガルクス公爵令嬢は、もしかしたらその場にいた者たちに口止めをしてくれたのかもしれない。ガルクス公爵令嬢を見ると、向こうもセリーナを見てにこっと微笑んだ。自分の想像が間違っていないことを確信し、静かに頭を下げた。



「気になるところだが、やめておこう。言い方は悪いが、弱みを知っておくのもいいことだ。」


「あの件はルイーザが散々自慢してきたな……、セリーナがかっこよかっただなんだって…」


「あの時はこっちが心臓止まるかと思ったんだもの! まさかあそこに入っていくなんて思わなくて!」


「あなた、さっきまでナイクル侯爵令嬢に一言物申すって息巻いてたくせに…」


「それとこれとは別よ!!」


「……ところで、ウィルはなんでそんなに落ち込んでるんだい?」


「ああ、この方でしたら、仕事はできるけど令嬢への気遣いがからっきしだったので先ほど私が叱責しました。十分に反省なさるべきですから、そのままほっといて差し上げてください。」


「あ、ああ……、ウィル、一体何をしたんだい?」



ぷいっと顔を背けたガルクス公爵令嬢を見た王太子は、そっとゼファル公爵令息に話しかける。自分なりの気遣いが間違っていたせいで迷惑をかけるところだったと端的に説明すると、王太子は顔を引きつらせながらそっと自分の婚約者を見た。バチっと目が合うと、そっと微笑まれたため、自分は最大限気をつけねばと気を引き締めた。



「全員揃いましたし、そろそろ行きましょうか。」



セリーナは、この目立つ集団の中に自分がいることに居心地の悪さを感じながらも、ガルクス公爵令嬢に腕を組まれているため逃げ出すこともできず、ルークとルイーザは嬉しそうに見てくるので助けを期待できないことを悟り、諦めて一緒に歩き出した。

その間もガルクス公爵令嬢はセリーナのことを根掘り葉掘り聞きだした。公爵令嬢でありながらも親しみやすい雰囲気を持った彼女と、セリーナも楽しそうに会話していた。

その様子を後ろからじっと見つめている者が一人。



「おい、ウィル、見すぎだ。」


「お、おう、ごめん。なんか、……やっぱり不思議な雰囲気なんだよな。」


「まあ、言いたいことはわからないでもない…、悪い気ではないが、難しいな。お前が気にしてたのはこれだったのか?」


「ああ、さっき見かけた時から気にかかってさ。」


「なんだ、てっきり一目惚れかと思ったよ。」


「いや、そういうのではないな。にしても、不思議だな…気にはなるが……って、ん?」



その時、セリーナの頭に子猫が乗っかった。後ろにいるウィリアムたちの方に顔を向け、シャーッと威嚇のようなものをしている。横にいるガルクス公爵令嬢もこれには驚き、セリーナと会話を続けながらも思わず吹き出してしまいそうになった。



「……お前、嫌われたんじゃないか?」


「……何もしてないんだが。詮索するなってことか。」


「まあ、そうだろうね。頭に乗っかっても全く気にも留めていないし、精霊も見えていないだろう。色々事情もある令嬢だし、先ほどルークも、()()姿()()()()()()を、と言っていた。何かあるのかもしれないが、あまり詮索するのは野暮だ。」


「…そうだな、ガルクス公爵令嬢にもまた怒られそうだ。悪い気じゃないならいいんだ。」


「とにかくお前は、帰宅したらさっさと手紙を書くんだな。最後のチャンスかもしれないぞ。」


「…ああ、分かってる。」



セリーナの頭の上に乗った子猫は、勿論レンである。ウィルが魔法を使って彼女が自分自身にかけている魔法などを確認・解除させないように威嚇したのであった。

ウィリアムがそんなこと考えているとは知らないセリーナは、急に頭にのぼったレンに、内心はかなり驚いていた。馬車へ入るやいなや、レンへお説教したのは言うまでもない。



そんな中、セリーナの最大の秘密に気付きかけた人間が一人。



「あの子……もしかしすると、契約者かしら…自分に幾重も魔法をかけていたけど…何かあるのね…。」



可愛らしい外見とは裏腹に、エオルやウィリアムと互角な魔法の実力を持ち、膨大な知識と魔力量で魔法使用のみの対戦であれば将来の王太子護衛騎士であるルークをも圧倒する人物。

ミファ・ガルクス公爵令嬢は、腕を組んでいたセリーナからとてつもない魔力を感じ取っていた。それでも、心根の良いセリーナのことを気に入った彼女は、その事実を心の中にしまった。誰しも秘密の一つや二つはあるものだし、と秘密を探るのを控えた。ここでエオル達に相談していれば、今後起こる最悪の事態を防げたかもしれないが、この時の彼女はまだ、そんなことになろうとは思ってもいなかったのである。



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