特殊能力ってなに?
さて、それではまず『特殊能力』というものについて説明しておこう。とは言ってもそこは読んで字の如しで『特殊』な能力の事だ。
では特殊とはなんだ?となるはずだが、一般的には『普通と違う事。または性質が特異である事。』と辞書には載っている。
だが、この中学での『特殊能力』とは、簡単に言えば『超能力』の事である。もしくは『魔法』。まぁ、確かにどちらも普通は持ち得ない能力であり、人として特異である事なので『特殊能力』とは言い得て妙な表現だ。
で、この世界では超能力または魔法に関して才能、または資質を持っているかどうかは12歳の誕生日の夜に判明する。
つまり『夢』という形で神様から教えてもらえるらしいのだ。まぁ、夢なので信憑性はイマイチと感じるかも知れないし、自分の能力はこんなのだったっ!と人に言っても信じて貰えるとは限らない。
因みに、『特殊能力』を持ち得ていなかった子に対しても神様はちゃんと「あなたには無限の可能性がある。だからがんばりなさい。」と湾曲した表現で教えて下さる。
まっ、これは所謂『サクラ、チル』という古典的表現の神様版だ。
とは言え、12歳と言えば多感な歳である。故に言われていない事を言われたと信じてしまう子もいなくはない。
と言うか『無限の可能性』というワードのみがリフレインして「僕って『最強』なんだっ!」と勘違いしてしまう子もいたりする。
だが『神は偉大なり』とはよく言ったもので、12歳の誕生日を過ぎてからは神の信徒たる教会が公正な第三者の立場から、その者が神から授かった『特殊能力』の有無とその能力名を記した証明書を発行してくれるのだ。
因みに証明書の発行には『お金』が必要です。1枚3千ギールです。結構高いです。でも一応公的書類なのでちゃんと教会と王国の保証が付きます。
と言う事で、特殊能力を持ち得なかった者が「自分にはすごい特殊能力があるっ!夢でそう告げられたんだっ!」と言い張っても、教会が証明書を発行してくれなければこの世界では誰も取り合ってくれない。
そう、この世界では12歳の誕生日とはまさに人生の分岐点となる日なのである。
とは言え、特殊能力はあくまで『特殊』な能力というだけで、それが役立つかどうかは人によるし、中にはどう使えばいいのか判らない特殊能力もある。
更には特殊な能力ではあるが、どう考えても使い道のない能力もあるにはあるのだ。と言うか殆どの特殊能力はとても微妙な能力であり、例えば果物の食べ頃が判るとか、ボールに触れる事無くボールを『10m』飛ばせるなどのように、普通の人でも収穫時期や見た目で十分判断できる事や、普通に投げた方が遠くに飛ばせるよな?と思ってしまうような能力が多かったのである。
勿論、それらは場合によってはとても役立つ事もあるだろう。果物屋を営んでいれば果物の食べ頃が確実に判るのは商売としてとても強力なアピールポイントだし、ボールを『10m』飛ばせる能力も、これはイカサマになるのであまり宜しくないのだが、野球の試合で後10mボールが飛べばホームランになる場合などは魅力的な能力なはずだ。
とは言え、殆どの特殊能力はその程度のものなので仮に特殊能力を持ち得なかったとしてもこの世界の人々は然して落胆はしない。
だが、中には誰から見ても凄いと思う能力や資質を持っていると判明する子もいる。そしてそんな子たちはその能力を開花させる為に『ウロナ王立特殊能力開発機構』へ放り込まれるのだ。
まぁ、これは所謂エリートコースに乗るようなものである。だがここにも落とし穴があって、能力は保有していてもその能力を『発現』させる事が出来ない者も中にはいるのである。
そして残念ながら僕はそんな者たちの内のひとりだったりする・・。でも僕は諦めないぜっ!がんばっていつかはこの特殊能力を発現させるんだっ!
という一途の望みにすがって今も僕は『ウロナ王立特殊能力開発機構』で修行をしている。
はい、中学33年生とは僕の事です。中学生ではあるが今年で46歳になります。世間からは税金泥棒と陰口を叩かれています。
でも僕の特殊能力は凄いんだぜっ!だからおいそれとは発現しないのさっ!
・・、と自分で自分を慰めるのが僕の最近の日課です。いや~、本当に能力自体は凄いんだけどね。でも発現しないんじゃ意味が無いんだよなぁ~。