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第6話 指名依頼

「うわ、大金だ……あの、アリシアさん。この分の税務は──」


 元戦姫シエラレーゼから受け取った皮袋をそっと開けて、俺は中を確認する。金色の輝きが目に眩しい。


 俺は慌てて袋の口をしめる。

 小心者だと馬鹿にするなかれ。何せここは探索者ギルド併設の酒場なのだ。黄金色の輝きを無遠慮に光らせていて、良いことなど一つもない。


「もちろん、私の方で責任をもって処理させていただきます」


 俺のその様子を当然のように見ながら、力強く肯定してくれるアリシアさん。

 その冷静な顔には頼もしさしかなくて、後光すらさして見える。


「よろしくお願いいたします。いやーありがたいです」

「そんな、業務の一環ですから」


 俺とアリシアさんが話しているところに、ローラさんがおずおずと声をかけてくる。


「あの、カジュ?」

「え、ああ。もう、大丈夫ですよ、ローラさん。元戦姫さんはもう居なくなったので」

「良かった──あ、依頼のお話が途中でした」


 そういって、両手の指先を合わせるローラさん。

 それを合図にしたかのように、俺たちは改めてそれぞれ自分の席につく。


「そうね。ローラ、それでは概要を」

「はい、アリシアねえ様」


 そうして、ようやくエールを傾けながら、俺はローラさんたちから今回のSランク指名依頼を聞く。


「──なるほど、北のドラゴンの予兆、ですか。それは確かに大事だ」


 指名依頼の内容として、討伐依頼、それもドラゴンの討伐のようだ。

 アリシアさんとローラさんの故郷の北の辺境は、歴史上何度かドラゴン禍とよばれる、ドラゴンによる襲撃の被害に定期的に見舞われているらしいのだ。


 北の果てにはドラゴンの生息する地域があるとされ、数十年から数百年に一度、ドラゴンたちが南下してくるらしい。


「もちろん、他のSランクの探索者の方々にもそれぞれ指名依頼が出ているのですが」

「長期のダンジョン探査で戻ってこない方や、そもそもが行方知れずの方などばかりなんです」


 アリシアさんの言葉をローラさんが申し訳なさそうに引き継ぐ。


「それに、カジュ様にはドラゴンの討伐実績もおありですよね」


 確かに、ダンジョン内でドラゴンを討伐したことはあった。アリシアさんに清算してもらったモンスター素材の中に、ドラゴンの素材もあったはず。


 覇竜の迷宮のダンジョンボスはドラゴンもどきだったのだが、他のダンジョンでは、ちゃんとドラゴンがボスで出たところもあったのだ。


 少し前のことなので、討伐したときの記憶はあやふやだが、なかなかタフなモンスターだった気がする。


「わかりました。お二人の故郷に被害が出るというのも目覚めが悪いですし。ドラゴンと言っても、少しタフな程度のモンスターですから」

「た、タフ?」

「た、確かに生命力の強い種族だとは言われてますよね、アリシアねえ様」


 俺の台詞に、顔を見合わせる二人。

 俺はそれを不思議に思いながらエールを傾ける。

 気を取り直した風の二人と俺は改めて出発する日時を打ち合わせるのだった。

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