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第4話 同行者

「Sランク証を」

「はい、こちらに」


 そういって、アリシアさんがSランクとかかれた探索者証を手渡してくる。


 白銀に輝くそれはずっしりと重たい質感で、それ自体がかなりの価値あるものなのだとわかる。俺はFランク証を返却して、その新たな探索者証を受けとる。


「私が事務処理に関して専任となります。改めてよろしくお願いいたします。幻影のカジュ様」

「ああ、アリシアさんほどの力量があるなら、頼もしいな。それと俺のことはカジュでいいから。その、二つ名とか慣れないし」

「まぁ──そんな……こほんっ。ではカジュ様と」


 実際に先程見せてもらったアリシアさんの手際の良さはとても素晴らしく、こっそり内心でアリシアさんのことを戦友だと認定しているほど。

 だから、その誉め言葉も、俺の本心からのものだった。


 ただ、その俺の誉め言葉に少しだけ顔を赤らめ照れた様子を見せるアリシアさんは、いままでの冷静で有能な様子とはギャップがあって、思わず少しだけ、俺は彼女のことを可愛いと思ってしまった。


「幻影のカジュ殿は、なかなかのたらしのようだ」

「り、リュカリエーレさん!? そんな、やめてくださいよ。全くそういうつもりでは……」


 俺とアリシアさんの様子を見ながら、幼女の真顔でそんなことを言ってくるリュカリエーレさん。


「責めている訳ではない。さて、無事にSランク証を受け取り、Sランクとなった幻影のカジュ殿に、指名依頼がある」


 なんだか、急にとんでもないことを言い出す、リュカリエーレさん。

 その横で、ローラさんが依頼書らしきものを両手で広げて掲げてくる。


「指名依頼って、たしかSランク限定の、指名されると断れない依頼じゃ──」

「その通り」

「はぁ……謀りましたね」

「まさに」


 ──うわー。それでSランクに昇級を進めてきたの、この見た目幼女。臆面もなく肯定するし……やっぱ、こえー


 俺がじと目でリュカリエーレをみていると、なぜか俺の横にいたアリシアさんが申し訳なさそうに話しかけてくる。


「誠に申し訳ありません。でも、どうしても急ぎで、なんとかしないといけない案件なのです。頼める方が、カジュ様しかいないんです」


 アリシアさんのすまなそうな言葉に、うむうむと他人事みたいに頷いていたリュカリエーレが、アリシアさんに続ける。


「ちなみに場所はアリシアとローラの故郷となる。そして今回は特別措置として、二人も同行させる」

「──は?」

「詳細は依頼書に目を通したのち、二人より詳細を聞くように。武運を祈る」


 それは明らかにギルドマスターの部屋から退室を促す言葉だった。


 何か最後、聞き捨てなら無い言葉があったなと思いながらも、俺は仕方なく、アリシアさんたちとともに部屋を出たのだった。



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