第21話 救護と生存者
完全に目が覚めた様子のアリシアさんたちと本館につくと、そこは恐れていた通りの惨状だった。
「これは、酷いです……」
手で口を覆い、固まるローラさん。
「まだ、助かる人がいるかもしれませんっ、ローラ、気を確かに!動きましょう!」
ローラさんの両肩をもって、激しくゆすり、さとすアリシアさん。
俺はそんな二人に声をかけると、先に生存者を探しはじめる。
「俺はこちらを。二人も、二次被害には気をつけてっ」
「──はいっ」
すぐにローラさんもアリシアさんとともに、動き出す。
俺たちは投下された岩で破壊された本館の建物の残骸のなかを手分けして探索をはじめるのだった。
◆◇
「──どうやら、生存者は彼らだけのようです。一応はSランクと言ったところ、でしょうか……」
探索の結果は、芳しくなかった。
生存者は五名だけ。
爆炎のハールーガスと、そのパーティーメンバーのうちの二人。
そして、泊まりで勤務だったのであろう、新人っぽかった受付のシャリナさんと、チーフと呼ばれていた女性スタッフだけだった。
シャリナさんとチーフさんは居たのが客室から離れていた場所だったようで、そのお陰が、幸い、擦り傷程度だ。
ただ、二人ともショックは隠しきれない様子だ。だが、それでも生き残った者への救護や、救援の応援を呼びにと、懸命に立ち働いていた。
一方、ハールーガスと、生き残った仲間二人は、重傷だった。
そのなかでも、なぜかピンクのイチゴ柄のパジャマを着たハールーガスは岩が直撃したのだろう。俺が発見したときは、完全に岩の下敷きになっていた。
俺のもつ乏しい救護の知識でも、この場合、急に岩を退かすと、状態が悪化する可能性があることは容易に想像がついた。
そのため、俺は医務官の到着を待ちながら、その周囲の瓦礫を取り除いて、作業のためのスペースを作っているところだった。
「ごひゅ……くっそ……、不甲斐ない、ぜ……。こんな、岩ごときで。なぁ、あんた。やっぱり、減塩、なんだろう、すまなかったなぁ──」
ぜーはーと荒い息の合間に、現状をぼやいているのは、その岩の下敷きになっているハールーガスだった。
「俺が言うことじゃないかもしれませんけど、あんまりしゃべると、傷に障りますよ」
「はっ、そう、だな。──なぁ、本当に、ゼハルトたちは死んじまったんか?」
ゼハルトというのはたぶん、ハールーガスの仲間の一人だろう。
「息は、してないです。今、医務官を呼んでいますので……」
俺の横でローラさんが代わりに答えてくれる。
「皆さんっ! 医務官をお連れしましたっ!」
そこに、医務官を連れたチーフさんが戻ってくる。
「負傷者は、五名ですね!」
医務官らしき女性が手早くその場にいる負傷者たちの様子を見ていく。
「──こちらの岩の下敷きの方は、岩をどかさないことには──。でも今から人を集めていては間に合いません」
医務官さんが、ハールーガスから少し離れて、アリシアさんと相談しているのが聞こえてくる。
「──どかすだけなら、すぐに出来ますよ?」
俺は声をかけるか迷いながらも医務官さんに告げる。
「え、ほ、本当ですか」
「はい。ほら。こんな感じで」
俺は近くにあった、ハールーガスを潰しているのと同じくらいのサイズの別の岩を、両手で抱えるようにして持ち上げる。
初級身体強化の力で十分、持ち上がる。
「え、本当なんですね──これなら、彼を助けられます!」
俺の持ち上がている腕をペタペタと触りながら、医務官さんは興奮した様子でそう告げるのだった。




