第20話 緊急事態
「カジュ、遅れましたっ! もしかしてこれをおひとりで?」
俺が墜落したドラゴンを集めて魔石だけ手早く回収していると、後ろから声がかかる。
ローラさんと、アリシアさんだ。
アリシアさんは、なんだかとても眠そうだ。
目は半分くらいしか開いてないし、反応も鈍い。そしてその装備品も、まるで無理やり着せられたかのように、少しだけ乱れていた。
普段のきちっとしたアリシアさんからは考えられない様子に、思わずまじまじと見てしまう。
「カジュ?」
ローラさんがすっと俺の目の前に出てくると、名前を呼ぶ。
俺はアリシアさんに見とれていたのが恥ずかしくなって、慌ててローラさんの質問に答える。
「あ、ああ、そう。一人で倒したよ。とは言ってもレッサードラゴンだけだし、逃げちゃったのもいたけどね」
「いったいどうやったら、こんな傷がつくんですか──こちらなんて、ほぼ、バラバラです」
「あー。ドラゴンたちが岩を落としてきたから、受け止めて投げ返した」
「──それは、なんというか、すごいです」
目をパチパチとしながら告げるローラさん。
「そうそう、それでさ、早速で悪いんだけど。本館の方を確認にいくから、一緒について来てほしいんだ」
「っ! もしかしてあちらにも攻撃がありましたか?」
ローラさんも、状況判断が早い。
「そう、たぶん被害が出てるかもしれない」
「すいません。カジュは私とねえ様を待っててくださったんですね」
「いやーまあ、このレッサードラゴンたち、結構な数がいたからね。俺が、二人から離れて守れない隙を狙われたらと思って、さ」
「──」
俺が答えると、なぜだかローラさんが急に黙りこんで、もじもじしはじめる。
その反応をみて、俺も今のは少し格好つけすぎたかと焦ってくる。
こういうときの頼みのアリシアさんは、相変わらずだ。というか、立ったままフラフラと前後に頭が揺れている。
「──じゃあ、行こうか……って、行けそう?」
俺はアリシアさんの方をうかがいながら、ローラさんに改めて尋ねる。
「──はい、お任せください。現状を最大限の緊急事態と判断して、最終手段を取りますので」
そういって、指をワキワキとさせるローラさん。どこかで見た仕草だ。
そのままローラさんが両手の指をアリシアさんの脇腹辺りの服の中へと、滑り込ませていく。
「っうくっ!」
変な声がアリシアさんから漏れたと思った次の瞬間、激しい笑い声が辺りを満たすのだった。




