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第11話 ドラゴン討伐

 俺が走っていると、途中の少し先に、泥だらけになったものが見えてきた。


 それは、いきなり熱めのお湯に全身が浸かったからか、着ている装備品を慌てて脱ごうとして、濡れて泥と化した地面を、はいまわっているようだった。

 その全身は当然、泥がびっしりで、装備品を脱ぎ捨てて下から現れた部分も、すぐにまた、泥にまみれていく。


 仮にもAランク探索者だった面影はもう、そこにはなかった。そしてジタバタと見苦しく動いているので、当然、周囲にも泥が跳ね飛んでいる。


 俺は一瞬、それを迂回しようか迷うが、跨いでいくのがドラゴンへと向かう最短距離なのだ。


 なので、走る勢いのままに、距離をおいたところから、余裕をもってそれをジャンプして越えていく。

 暴れて飛び散らかしている泥が、万が一にも体に触れないように、気をつけて。


 そうやって泥まみれの元戦姫を越えて走ると、すぐに目標のドラゴンだ。


 こちらはさすがの最強種の一角。


 ぶつかった水球で撥ね飛ばされた衝撃から、すでに立ち直った様子で、こちらを攻撃しようとしている。


 ──ブレスかー。撃たせる訳には、いかない、なっ。


 射線的に、ドラゴンブレスを撃たせてしまうと、列車に当たる可能性が高い。

 それと戦闘中なのに装備品を脱ぎ捨てているという、探索者の風上にもおけない人物も、射角にきっと入るだろう。


 そちらはまあ、自業自得なのでどうでも良いのだが、何はともあれ、俺は列車を守るためドラゴンブレスを阻止しようと、両手を伸ばす。


 今まさにドラゴンブレスを放たんと開かれたドラゴンの口を掴むと、俺は両手で思いっきりそれを閉じる。


 口を強引に閉じられたドラゴンと至近距離で目が合う。

 爬虫類特有の、感情の読めない瞳。だが、不思議なことにその瞳に、戸惑いと焦りが浮かんだのがわかる。


 すぐに、手のなかが、熱くなってくる。

 ドラゴンの瞳が今度は絶望に染まる。


 密閉空間で爆発的に生まれたエネルギーが、戻る場所もなく、行き場を無くしているのだ。

 必然的にその一部は熱に変換され、その他は、空いている所から噴出し始める。


 そう、ドラゴンの鼻と耳。そして目だ。

 それは、ドラゴンの目玉を焼き、鼻と耳を焼き潰していく。


 そのあふれでたエネルギーの奔流に触れないように、俺は身を屈めてやり過ごす。

 屈んだ俺の上を通り過ぎていくエネルギーの奔流。まるでそこに太陽が現れたかと思うほどに、眩しい。


 ただ、それだけではエネルギーの排出はとうてい間に合わない。

 最終的に逆流を始めたドラゴンブレスがドラゴンの喉を裂き、その胴体を八つ裂きにしながら通りすぎて、最後に残った穴から激しい破裂音とともに噴出していった。


轟くばかりの音と光のあとに、静寂が訪れる。


「──ふう、討伐、完了したけど、魔石はどこかねー」


 俺が持っていたドラゴンの口回り以外、完全に肉片となって四散してしましまったドラゴンの肉体。

 俺はその素材の飛び散り方から、目星をつけると依頼完了の報告のため、ドラゴンの魔石を探し始めるのだった。

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