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第11話:イゾルデの絶望


「うーん。美味い。さすが俺」


「…………わ……美味しい」


 で、この森の開拓は後日として。俺から取れるコーヒー豆をお湯で抽出して、サトウキビから取れる黒砂糖を入れて飲む。カップはオールゴール王国から仕入れたものだ。一応王様も助かったらしいし、ハンドベルは俺たちに恩義を感じているらしい。皿やカップが欲しいと言ったら揃えてくれた。で、実験的にコーヒーと砂糖を調達したのだが、これが可能だという。神樹と呼ばれているが、その本質は植物網羅。パーフェクトプラントと呼ばれるソレだ。果実の類は枝から生り、野菜の類は根の傍から生えてくる。これによって自給率百パーセントで食事に困ることは無く。たまに肉が欲しいときは狩りをすればいいし。


「美味いぞ。お前も飲むか?」


 ルミナスとコーヒーの試飲会をしている最中。俺が呼んだのはイゾルデだ。ドヨーン……と鬱屈したオーラを纏って体育座りしているイゾルデは草の数を数えていた。多分それ一年かけても終わらんぞ。


「まぁまぁ。気にすんなって。神樹様も別にダークエルフに寛容だろ?」


 大樹の方の俺も別にダークエルフを差別したりしない。


「むしろなんでアーゾルとルミナスは平然としているんですか」


「最初からこうだったしな」


 生まれつきの業を呪うのも違って。色々とダークエルフの低俗さとエルフの高貴さを熱弁するイゾルデの言葉を噛み砕くと。


『今まで女性にモテモテのイケメンが一晩で女性に嫌われるキモデブに変身してしまった』


 という話らしい。そもそもダークエルフをキモデブと呼んでしまうその差別意識に物申したいのだが、言っている意味が分からんでもない。実際にイゾルデはエルフであることに誇りを持っていたし、ダークエルフを唾棄していた。その唾棄していたダークエルフが我が身に降りかかればショックの三つはするというもので。


「いいじゃん別に。気楽に行こうぜ?」


「いきなりキモデブ悪役貴族に転生しても同じことが言えるでありますか!」


「言えんけど。ダークエルフは別」


「うがー! 草木からは嫌われるし! 神樹様は寛大だし! こんなザマを里の皆様に知られたら……」


「怒られる?」


「殺されるであります!」


 それは過激すぎないか? 神樹と共生するダークエルフがいてもいいじゃない。


「ダークエルフは植物の敵なんであります! マジで嫌われ者!」


「そもそもエルフってそんな御大層なモノなのか?」


「? 超越種の一種なんですから当たり前であります」


「ちょーえつしゅ?」


 今度はこっちがハテナだ。


「知らないんでありますか?」


「中々なぁ」


 超越種か。少し厨二的にドキドキする。


「…………教えて……イゾルデ」


 ルミナスも知りたいらしい。そもそも俺とルミナスは二人だけで過ごしているので、外のことはよう知らん。


「いわゆる概念と呼ばれるものがこの世には存在しまして」


 概念ね。


「情報とも呼ばれます。これが自我を以て独立したものを精霊と呼ぶんです」


「概念が自我を持つのか?」


「ええ。そこを不思議に思うんでありますね」


 そりゃ概念が自我を持つとか。まだしもコンピューターが神に祈るとか言われた方が信じられる。


「で、その精霊が受肉化した存在を超越種と呼ぶのでありますが」


「とするとエルフって」


「植物の精霊が受肉化した存在でありますね」


「はー」


 それで植物と親和性が。


「だというのに……」


 ギリギリと歯を食いしばるイゾルデ。


「私をダークエルフなんかにしてくださってー!」


「まぁいいじゃん。キモオタもキモオタで楽しいぞ」


「そもそもキモオタとかそういうレベルすら超えて嫌悪感が酷いんでありますけど!」


「だってさ。ルミナス。戻してやるのは」


「…………却下」


 そう言うよな。


「とりあえずコーヒー飲め。美味いぞ」


「むー。そんなんで絆されたり美味ーッ!」


「だろ」


「ナニコレ? なんでありますか?」


「コーヒーっていう豆で淹れたお茶」


 コーヒーを豆茶っていうし。これでいいだろう。


「そもそも不思議が過ぎるんでありますよ。アーゾルは反射させるし、ルミナスはダークエルフにするし。どういう技術!?」


「呪術」


「じゅじゅつ?」


「まぁタタリとでも思っていただければ」


「神罰を具現すると仰りたいのでありますか!?」


 意味を精査しなければ、それでもいいかもしれない。俺の陰陽二兎インフィニットはあらゆる全てを反射するし、ルミナスの畏怖イフはもしもを実現する。


「は。まさかダークエルフってそういう能力が?」


 いや、意識があれば誰だって理論上できるけどな。あくまで職人芸だから出来ない方が多いってだけで。


「そもそもこのままだと私もヤバいでありますよ」


「いや、でもキモデブ悪役と化したところで、イゾルデがエルフの姫なのは確かだろ。手の平返すか?」


「むぅ。そう言われると」


「そもそも俺はダークエルフでも問題ないぞ」


「アーゾル様……ッ!」


 キラキラした瞳で大樹に畏敬を示すイゾルデだが、根本的にそれはアバターの俺と同一なんだが。


「そもそも肉とか食ってる時点でエルフでは……」


「肉美味いぞ?」


「…………美味しい」


 これはダークエルフであるが故だったのか。それとも単にエルフに肉食文化が無いのか。


「ちなみに破滅のカウントダウンは始まっているであります故な」


「なんで?」


「私が返ってこなかったら、エルフの里にも不振が伝わるであります」


「あー。なるほど」


「なわけで私をエルフに戻すであります!」


「なぁ。ルミナス。いっそエルフ全員ダークエルフに堕とすってありか?」


「…………時間をかければあり……一気に全員は私が無理」


「戦争になるでありますよ!?」


「返り討ちにするだけだ」


「…………同じく」


「まぁ実際にアレを見て勝てないかと言われるとそれも違う気もするでありますが」


 そもそもダークエルフだって生きているんだから、存在そのものをピーチクパーチク言われても鬱陶しいだけだ。エルフと全面戦争になったところで構うかって話。


読んでくださりありがとうございます!

作者のモチベ維持のためにも★で評価していただければ幸いです。

応援もしてくれていいのよ?

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