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上弦の月

作者: イプシロン


  星ひとつ見えない夜空に

  上弦の月が浮かんでいる

  ぽっかり何も囁きもせず


  夜の帳に包まれた道々に

  光の彩が花と咲いている

  通り過ぎる前照灯(ヘッドライト)尾灯(テールライト)


  花壇を照らす電灯は温かく

  頬を撫でる一陣の風を感じる

  僕もまた光を撫でる風になる


  赤く、青く、(とう)く灯った明りは

  音もなく通り過ぎてゆくだけ

  風になった僕も音も光もなく


  きっと僕は、囁くことのない

  あの上弦の月陰なのだろう



  English version


     Waxing Moon


  In a night sky where no stars appear,

  A waxing moon floats, silent and clear,

  Drifting softly, without a whisper.


  On paths wrapped in night’s gentle shroud,

  Colors of light bloom bright and proud,

  Headlights and taillights pass, unbowed.


  Streetlamps warm the flowerbeds bright,

  I feel a breeze brush my cheek, just right;

  I too become a wind of light.


  Lights in red, in blue, and in orange glow,

  Silently fading, they ebb and flow,

  As I turn to wind, with no sound to show.


  Surely I am, without a sound,

  That waxing moon’s shadow, profound.

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