キラキラ系王太子は監視されていたようです~光魔法と司法局って相性バツグンでしてよ~
「悪女ベルフェリーチェよ!」
ばばーん! と効果音が付きそうな声量で、ディーヴ王太子殿下がホールの中央を陣取る。
かすかに金色の光が舞うその姿は、パーティーに参加している人々の目を惹き付けるに充分だった――たとえ面倒事の予感がしていても。
珍しいチェリーピンクの髪のご令嬢をエスコートしている――水運で財を成すアリーマム伯爵家の、現当主のご令孫であるマニシュ嬢。
嫁期を逃しつつあるご令嬢よりも谷間を強調したシュガーピンクのドレス。それでいてデザインは腹部を締め付けないものだから、恐らく一人の身体ではないのでしょう。
フラつくのを隠すためか、怯えるように殿下の腕にすがる立ち姿。そんな状態でも、今夜のパーティーは王宮主催だから出ないわけにはいかない。
それにしても、これは『アレ』かしら? 庶民に流行りの。表では言えないだけで、実は貴族にも流行っているという――婚約破棄かしら。
何を隠そうわたくしも読んでいるから知っているのだけど。
貴族の子女が大衆向けの娯楽を嗜むなんて褒められた話題ではないから、表では言わないのが淑女の礼儀。でもひっそり読者は多いはずだから、今夜の余興としては充分ね。
「貴様は邪心を以て、我が最愛たるマニシュに危害を加えた。浅ましき嫉妬に狂う女など未来の王妃に相応しくない。よって貴様との婚約は今を限りに破棄させて貰う!」
すごいわ、本当に形式通りの台詞ねぇ。どこの脚本家に書かせたのかしら……なんて、とぼけているわけにもいかないわね。
――わたくし、当事者ですもの。
「御呼びと伺いまかりこしました、ハーバリエ公爵家のベルフェリーチェでございます。――して、婚約破棄でございますか? パーティーの余興にしてはお戯れが過ぎますわよ、殿下」
仕方なく、会話を成立させるために前に出る。
呼びつけておいて、わたくしが顔を出したら『顔も見たくない』とばかり眉間にシワを寄せるのやめてくださらない?
「余興などではない。公爵令嬢であることを鼻にかけた不遜な言動の数々は王太子たる我への二心と見なす。取り巻きの女どもを使ってのマニシュへの迫害は未来の王妃への謀反。ましてやマニシュは既に我の子を宿した身。未来の国母への狼藉、いずれも赦しがたい!」
「未来の王妃と仰せですが、殿下とわたくしは王命による婚約。それを改めるならば、既に陛下のご了承はおありですの?」
「父上にはまだ話していないが、これだけ参加者の多い場で宣言すれば貴族社会に事実上の効力を持つ。それを以て追承認を頂く予定だ。つまりこの場を迎えた時点で、貴様に婚約破棄を回避する方法はない!」
確かに、社交界の大半が参加するこの場で宣言すれば貴族社会全体に伝わってしまうから、実質的に婚約は破棄されたものとして扱われるのも否めない。
法律上の手続きをすっ飛ばした、既成事実路線という概念ですわね。
もちろん、内務省司法局に勤めるわたくしが、そんなもの認めるわけがないのですけれど。
「さようでございましたか。それでは法的な根拠がございませんから、現時点ではまだわたくしが『未来の王妃』ですわ。アリーマム伯爵令嬢はただの不貞のお相手。お間違えのなきようお願いいたしますわね」
ピシャリと切って捨てれば周囲から忍び笑いが漏れる。バカにされていることは分かるのだろう、次第に激昂の様相を帯びる。
明るい金の髪に深い緑の目をお持ちの殿下。見た目はいいのよね、見た目だけは。
ただ頭の中身がコレなので、黙って立ってるのが一番役に立つんじゃないかしら。
「まだそんなことを抜かすか!? 大体貴様、二言目には『法的には』と、いつも小煩い! 小賢しい正義で王族たる我の言葉を妨げるなど言語道断!」
「そうは申しましても、我が国は政情の安定した法治国家ですもの」
「それがどうした!」
見た目だけはキラキラと光を背負う、顔だけはいいバカ王太子。
おそらく今のやり取りで、パーティーに出席している大半の貴族はそう認識したのではないかしら。
これまではわたくしが必死に表に立って取り繕っていた。知っていたのは王家と王妃陛下のご実家と婚約相手である我が家くらい、ごく内輪の関係者だけ。
なのに、わたくしの手を離れた途端にこれですか。これまでの努力は何だったんですの、もう。
『法は民に仕え、民は王に仕え、王は法を私するなかれ。』
我が国は二百年ほど前に絶対王政が崩壊し、憲法の第一条にこれが掲げられた。
歴史的経緯を含めて要約すると『これからは王であっても、以前みたいに気分で法を自由にねじ曲げたり、贅沢や戦争したいからって王命で税金を新設することは許されないよ』ってことですわね。
王に許されないのだから王族全体にも許されない。
当然ながら今も『陛下の承認』という法的根拠なく、王太子が勝手に婚約という契約を破棄する言動は許されない。
そんな単純なことも忘れたのですか? と揶揄したのに、それすら通じない無能王太子。
この無能を向こう二十年以上支え、王妃という激務に耐えねばならないかと思うと……心底イヤではあるのよね。
どう考えても度重なる尻拭いでわたくしや実家が高いコストを払わされますもの。王家のツケを払うために外戚になりたいわけではない。
十年前に王命で「うちの息子を支えてやってほしい」と強制的に婚約させられたけれど、将来の損失を考えると当家にとってのメリットが低すぎる。
その点については、陛下に何度も抗議していた。
公爵家の力を削るために不良品を押し付ける気ですか? とハッキリ言えば不敬になるけれど、要約すればそうなる。
妥協点として、三年前に陛下の言質を取らせていただいたのが役に立つのは、少し複雑だけれど。
『もし不貞の上で殿下の方から婚約破棄を望むことがあれば、王家有責にて婚約解消する』
『婚約継続の有無に関わらず、もしも殿下に法的な罪があれば、それは司法局の立場で取り締まって良い』
の二点について、法的効力のある書面も作らせていただいた。
作って以来、誰にも奪われないよう光魔法で不可視化して常に身に着けておいて正解だったのも微妙な気持ちだ。
常々そうやって準備はしていたものの、決定的なコトを起こすきっかけが掴めなかった。丁度いいから今やってしまいましょう。
なにしろ、ロケーションが最高なのだもの。
今日は王宮主催の、社交シーズンの開幕を告げるパーティー。この時ばかりは記者も入れて華やかな記事を書かせ、我が国の今年一年の安泰をアピールさせる。
隣国との平和も長くつづき、文化が爛熟しつつある我らがグレナード王国。かつては国境線の戦況を報せるのみだった新聞も、今や貴族のスキャンダルと新作舞台の宣伝を載せるばかり。
そんな状況に放り込まれた王太子の一言。
今なら明日の朝刊に間に合うぞ!と記者たちが色めき立ったのも無理はないわね。
そこに少しばかり、取材協力して差し上げるわ。この国を揺るがすほどの一大スキャンダルをね。
「それがどうした、ではございません。法治国家の王族が法的根拠を蔑ろになさるのは、自らを法に守られる立場から追い落とすのと同義ですもの」
パチン。手に持っていた扇を閉じ、魔法を使う。
詠唱も何も要らない。扇を閉じる時に魔力を流すだけで発動するように仕込んだ複合光魔法。
ホール室内を暗くし、壁の一部にとある光景を流す――王太子殿下とアリーマム伯爵令嬢が一線を超えている決定的映像。
王宮内に与えられた殿下の執務室、その隣に付属する休憩室のベッド。行為を終えた二人が服を調えて扉を開け、王太子の執務室に出ていったところまでばっちり映っているのだから、場所は確定。
法的には殿下はまだわたくしの婚約者だから、これはまごうことなき不貞の証拠となる。
とはいえ、これは前座。
本当に告発したいのは、こんなものではない。
「なっ……なんだこれは!? 止めろ、映すな、今すぐその魔法を止めろ!」
「あら、何の権利を以て命令なさってますの? 殿下は先ほど、法的根拠を軽視なさったではありませんか。王族を特別扱いする法を根拠として王族は敬ってもらえるのに、自らその特権を手放すのなら、貴方の命令など誰にも効きませんわよ?」
「そんなつもりで言ったわけではない!」
「ではどんなつもりで? などと、聞く価値もありませんわね」
例えば剣で王族を刺して『怪我させるつもりはなかった』と言っても、許されるわけがない。どんなつもりだったとしても、王族を刺せば死刑は確定だ。
やった側がどんなつもりだったかなんて関係ないのだから、弁明を聞く価値などありはしない。
それをゆっくり説明しても良いけれど、旗色の悪さに気づいてそろりそろりと腕を離して距離を取ろうとしているアリーマム伯爵令嬢を牽制する方が先かしらね?
無言で杖代わりの扇を持ち上げ、アリーマム伯爵令嬢を示す。そのまま人差し指で扇の腹を軽く叩くと、彼女の回りを濃い闇が覆い、視界を奪った。
物理的な拘束力はないけれど、人も物も多いホールで歩き回るのは危険が伴う。これで迂闊に動けないから、その隙に騎士たちが縛り上げてくれた。
「ねぇ、殿下。それより、不思議に思われなくて? 『確かに誰も見てないところで睦みあったはずなのに、どうしてこんな姿が撮られているんだ』って」
「そっ、そうだ! こんなの撮れるとしたらメイドくらいだろう! 一体誰が裏切ったんだ、今すぐクビにしてやる!」
二人が使う部屋を調える王宮のメイドか、二人がそこを使うと知っている最側近くらいしか、撮影ができる者はいないはず。
その考えは――常識の範囲では――間違っていない。でもわたくしは、光魔法の使い手。
「メイドに罪はありませんわ。わたくしに力を貸してくださる光の精霊様は、光のある場所であればどこにでも入り込んで、そこにある景色を写し取れますの」
この性質はおそらく、水魔法や風魔法の使い手にも理解できるのだろう。隙間さえあれば水や風も入り込め、その先にある空間に影響を及ぼせる。
それを知っているらしき参加者が何人か、ほうほうと頷いていた。
「だっ、だが、あの部屋を使うときは照明は消していたはず……」
「あら、光をよくご存じないの? 目の前にかざした自分の手も見えないほどの完全な闇でない限り、『そこに光はある』んですのよ? 少なくとも同衾したお相手の顔を見て会話ができる程度なら、そこにはたくさんの光の粒があり、光の精霊様はそれを介して出入り自由でしてよ」
「そんな、ことが……」
こんなのは流体魔法の基礎理論なのだけれど。学園で真面目に勉強していなかったツケがここに。
もっともわたくしはあまりに強力な光魔法を覚えてしまったものだから、即戦力として国の役に立てるため、飛び級で卒業させられて司法局に勤めている。
わたくしが卒業したあとの殿下の成績は気にしていなかったけど、大体の想像がつくというものね。
「もうひとつ教えて差し上げますわ。文学的な表現としては、邪な者を『闇の中に生きる者』と表現いたしますけれど。本当に邪な者は、光の差さない完全な闇の中では生きられなくてよ」
せっかくですから、写真映えするように、『悪女』の顔で扇を広げて笑ってあげましょうか。
こっちには陛下の言質もあるから、精神的に余裕もあることですし。
「邪な者は、邪な者と取引する。不貞、脅迫、裏金、密輸……良くないことをするのに、目の前も見えないほどの暗闇で行う者はいませんわ。
顔も商品もよく見えない部屋で、贋作を渡してくるかも。代金を払って安心させたところに、実は暗がりに潜ませておいた部下で殺して、お金も商品も持ち逃げするかも――無意識にそう警戒するのは、自分だってそういうことを考えてしまう浅ましさがあるから」
つらつらと述べる後ろ暗い思考の例示に、会場の幾人かがギクリと身を強張らせる。
あらあら、素直な反応ですこと。叩けば埃が出そうですから、顔を覚えておきましょうか。司法局のお仕事が捗りそう。
「だから絶対に、多少でも光の差すところでないと安心できないの。そうでしょう?」
だからかしらね、と光の精霊様を指先に宿す。
「わたくしもね、貴族ですから、全く白い手袋のままとは言いませんわ。だから学園卒業時に加護を選べると聞いたとき、光の精霊様がいいと思いましたの。司法局に職を得ましたから尚更ですわね」
司法局とは、政界の、財界の、貴族の、闇深いところに触れる仕事だから。
「その力を使って――殿下がどんな場所に行こうと確実に証拠を撮影できるように――光の粒を殿下の回りにまとわせて頂きましたの。正式な手続きでの婚約解消も待てないような方なら、きっとアリーマム伯爵令嬢との正式な婚約も待てずに婚前交渉に及ぶと確信がありましたもの」
人は裏切るけれど精霊様は裏切らない。
闇の深い仕事に心が折れそうになっても、光の精霊様が照らす道行きなら、きっと己を見失わない。
たとえ照らした所にあるのが、下半身ゆるがば女のベッド事情だろうとも。
「当然アリーマム伯爵令嬢にも、光の精霊様をつけて追跡させていただいておりました。殿下のお心がわたくしにないのと、ご令嬢に王太子妃の資格があるかは別の話ですからね。身上調査は必要でした」
「ふん、生意気を言うな! マニシュほど素晴らしい王太子妃候補もいないだろう!」
「えぇ、そう、やはり殿下は何もご存じありませんよね。でしたらこちらを見ていただけますか?」
再び扇をパチン。映している光景が切り替わる――アリーマム伯爵令嬢と、別の男性が同衾している姿だ。
少なくともこの時点で彼女は、王太子妃の資格がないことが誰の目にも明らかになる。腹にいる子供が殿下の子とは限らなくなったからだ。
殿下はしばらく絶句しているが、こんなのはニセモノだ、などと叫びはしなかった。先に自分の不貞現場を映されたものが事実であったからだろう。
「ちなみにこちらの男性、司法局で調べたところ、隣国のスパイでしたわ」
「何ということだ、このアバズレ……!」
「光の精霊様では会話の内容までは分からないのですけれど、『他国のスパイと通じている女性が』『自国の王太子とも密通している』この二つが偶然とは、司法局としても判断しておりませんわ」
「そう……だろうな……」
「このことは既に、両陛下にも報告済みです。本来であれば今夜のパーティーの後、社交シーズンの内にひっそりと処分の申し渡しをするはずでしたが……」
殿下が自分で騒動を起こしたから、誰の目にも納得できる形で引導を渡すチャンスかと思いまして。
さすがにそこまで言うほど無慈悲ではないが、うっすら察してはいるのだろう。最初こそ勢いのあった殿下が、すっかり塩を振った青菜のようになっている。
そうですわね、浮気された挙げ句に捨てられるわたくしを人前で嘲笑うつもりが、自分も二股かけられていて、どう考えても愛人も自分も実刑不可避なんて笑い話にもなりませんわよね。
ざまぁご覧あそばせですわ。
「ところで殿下、ご存じかしら? 我が国では、即刻死刑にならない程度の罪を犯すと、犯罪奴隷になりますの」
「それは知っているが……」
「ようございました。では、こちらもご存じかしら。犯罪奴隷と犯罪奴隷の間に生まれた子は、生まれつき奴隷身分なのですって」
「それがどうした。平民の処遇など今どうでもいいことだろう」
「あら。慈悲のないことだと心を痛めはしませんの?」
「平民に慈悲などかけてどうする」
――かかった。
「では、今回の話を致しましょう。まず、他国のスパイは死刑」
「当然だな」
「そのスパイに協力したアリーマム伯爵令嬢も、王子を籠絡して情報をスパイに流したので死刑」
「……やむを得まい。愛した女だが、王子であるこの俺を謀って他の男と通じていたのだから、処刑は妥当だ」
イヤ問題は浮気じゃねーだろ。
聞いている誰もが思ったが、この空気でツッコむほどの蛮勇もなかった。
「そして、王子という身分にありながらハニートラップにひっかかり、情報を流してしまった殿下も死刑――」
「なっ!?」
「……となるはずでしたが、両陛下の助命嘆願がございます。陛下と殿下、お二人の断種と引き換えに、罪一等は減じられることとなりました」
「断種!? なぜだ!?」
「知れたこと。殿下は、伯爵令嬢の求めに応じて房事に及び、彼女の歓心を惹きたくて聞かれるままに情報を喋ってしまった。
殿下がご自分の欲望に負けなければ回避できた罪ですから、断種によって贖うのが適当でしょう」
動揺しているけれど、逆に聞きたいですわね。
下半身の管理不足が原因で王子の処罰をするのに、断種以外の何がありますの? その種を今後も撒き散らかして、何か国にメリットがありますの?
「それは……そうだが……しかし父上までというのはやりすぎだろう!」
「我が国では『閨の不祥事は、子息なら男親の有責、令嬢は女親の有責』という慣例がありますの。殿下の助命と引き換えに、陛下も断種することをもって男親の責任を果たしつつ、司法取引となさいました」
「…………そう、か」
わたくしは男ではないから、十代で断種される気持ちも、まだ四十代前半の父親が断種される気持ちもよく分かりませんけれど。
殿下が死にそうな顔をしているのだから、罰として一定の反省効果はあるのでしょうね。
「ともかく。罪一等を減じられて、断種と廃嫡に王族籍の剥奪。
そして本来なら追放刑なのですが、追放先の受け入れ国が見つかりませんでしたの。代わりに懲役四十年の犯罪奴隷として、鉱山送りが決まりましたわ」
「追放にすらしてもらえないというのか……!」
なにしろ王族がスパイに情報を渡していたわけですものね。どの国からも扱いに困ってしまうと、色好い返事を貰えませんでしたわ。当然ではあるけれど。
「それから、アリーマム伯爵令嬢のお腹の子も死刑ですの」
「なんだと!? 子供に罪はないだろう!?」
「あら、親が犯罪奴隷なら生まれた子供も犯罪奴隷、『平民に慈悲などかけてどうする』と仰ったのは貴方ではありませんか。犯罪奴隷になる貴方にその言葉が返ってきただけですわ」
「……!? は、謀ったな!?」
「なんのことやら」
「ぐぬ……この悪女め……!」
そもそも本体が断種されるのだから、元王子の血筋など残らない方が良いに決まっていますもの。
なによりアリーマム伯爵令嬢の死刑執行を、出産するまで延期などできるはずもない。彼女はそれだけの大罪を犯したのだから。
子は宿る胎を選べないし、生まれる前に死刑とは気の毒なことですけれど。次はマトモな親の元に生まれるよう、光の精霊様に祈るくらいはいたしましょう。
「さぁ、近衛騎士の皆様。社交の裏でひっそり処刑しようとしていた両陛下のご恩情を自ら台無しにされた重罪人たちを捕縛して、退場させてくださいな。
記者の皆様。当分紙面を賑わすでしょうが、できればわたくしの婚約破棄の下りは控えめにお願いいたしますわね? これでも繊細な乙女ですから、多少傷ついておりますの」
婚約者に処刑宣告をした姿を目撃した一同が、小さく噴き出した。
マニシュの母親は別に、男主人に仕える侍女()ではないんだけど。
どうしてこんなのになったんだろうなぁ。
不貞と婚約破棄が前座に過ぎない事件って考えてたら、罪状がドカ盛りに。