プロローグ
「兄ちゃんは一人旅かい?」
「あぁ」
「冒険者か? もしそれならカッコつけてねぇで、とっととパーティに入れて貰った方が良いぜ。ベテラン一人よりも新米三人の方生存確率が上がる……ってのは聞いた事くらいあるだろ?」
「飽きるほどには」
「個人的な考えがあるなら無理にとは言わんがね。今はしがない御者だがよ、これでも俺は昔はそれなりに名の通った冒険者だったんだぜ。最高ランクはB! 仕事でヘマしちまって続けれなくなっちまったけどな。ま、先輩のありがたい助言だ」
「ありがたく受け取っておく」
「あんた、ロタン王国に何の用で?」
「……職場で問題があってな」
「あー……それで居づらくなって国を出たって口か。ってもあんたラーネットの人間じゃないよな? どこから出てきたんだ?」
「…………ドルストだ」
「海越えか! 随分とまぁ遠くまで来たもんで……っておいおい、犯罪者じゃねぇだろうな?」
「誓って、それはない」
「海越えなんてよっぽどの理由だろうけどな。まぁ良いや、余計な詮索してもうまくねぇし」
「………………」
「ただこれは勘だが、女絡みじゃねぇかって気がするぜ。兄ちゃん、えらくいい男だからな。色男の悩み事っていやぁ、女絡みってのが相場だわな」
「……正解だ」
「へへっ。貴族の奥様でも惑わしたか? 顔が良いってのも良し悪しってな。ま、それも使いようだぜ。あまりひけらかすもんでもねぇが、ここぞって時の武器になる。気を落とすなよ」
「ひけらかすつもりも武器にするつもりもない。俺の武器はこの剣だ」
「兄ちゃん頭硬そうだもんなぁ」
「失礼な奴だな」
「おかげで退屈しなかっただろ? ほれ、ロタンが見えてきた」
「……その口も武器って事か」
「へっへっへ」