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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友達だから、

作者: ののみ

「ヘンデル…」

「…」

「なんでお前が…」

目の前には、この場には、あいつのことをよく知る人が、あいつの友達だと思っていた人間がいた。

「邪魔するなら、お前だって…」

「邪魔、か」



「ヘンデル、俺、行くよ」

「どういうことだ?!」

ヘンデルに対し、リュージンは覚悟を決めた、死んでもいいという面持ちで、自分の心を話し始めた。

「俺、どうしたらいいのかわかんなくてさ」

「…」

ヘンデルは、自己犠牲精神を顕にしたその友人に対して、かける言葉が、行動が、わからなかった。

知らなかった。こんな時に、友達としてどうしてやるのがいいのか。

昔から独りで行動してきたヘンデルには、心を開くことができる人間がいなかった。しかし、ある時から知り合ったリュージンとは、次第に親友と呼べる仲にまでなっていた。

そんなリュージンの、自殺宣言とも取れる発言。

ヘンデルは、困惑しなかった。動揺はしたものの、リュージンの覚悟にあてられたのか、冷静に、しかし、かといっても友人のその発言に、友として受け入れることを決めた。



「こんなことしてる場合じゃないだろ!ヘンデル!!」

「…」

ガキンッ!!!

剣が、剣と激しくぶつかり合う。

「なんでだよ!なんで、お前はあいつを助けに行かないんだよ!!友達だろ!!!!」

「だからこそ…」

「だからこそ!俺はここにいるんだ!!!」

ガキンッ!!!



「なあ、ベンデル」

「なんだよ」

「おまえ、好きな女性のタイプって、どんな人だ?」

「は?」

最近知り合ったリュージンという名の人間に、知り合ったばかりなのに話しかけられた。

「いや、ほら、気になるじゃん」

「しらん」

「いやしらんってことはないじゃん?自分のことだしさ」

俺は、人間を信じてない。

だから異性をどうこう以前に、他人に興味がなかった。だから、こたえようがなかった。

「気にしたこともない」

「え、そうなの?」

「それと、俺の名前はヘンデルだ」

「あ、すんません。。。」

なんなんだ、この男、なぜこんな気を軽くにして俺に話しかけてくる?

「あ、ちなみにおれの好みはな?」

聞いてもないのに話をする。不思議、というのだろうか、こういうやつのことを。



「今ならまだ!間に合うだろ!!二人であいつのとこに行けば、あいつは死なねえかもしれねえだろ!」

「ちがう!!!」

「何が違うんだ!」

「あいつが!あいつ自身がそれをしてほしくないって!そう言ってるんだ!!」 

「だからって見殺しにしていいってのか!!!いいわけねえだろ!ヘンデル!!!!」

お互いの両の手に握られている金属の板に、お互いの、友への思いがのせられ、ぶつかり合っている。



「ヘンデル、ちょっと聞いてくれないか」

「なにを?」

リュージンが何やらあらたまっている。話があるようだ。

「いつものよくわからない話とはワケが違うんだな」

「ああ、えと、うん」

「…」

「どこから、えと、どう言えばいいのか分からないんだけどさ…」

リュージンは話し始めた。自身の生い立ち、自身の力、そして運命について。

「おれ、どうしたらいいのか、わからないんだ」

「そんなもの、わからないにきまってる」

あいつと違う俺でさえ、あいつが悩むことはわかる。それだけの重さのある内容だった。

「だけど、俺はお前の友人だ。だから、お前がどうしたいか決まるまで一緒に考える」

「ヘンデル…」

「決まったら、お前の意志を尊重する。それが友達ってものなんだろ」

「ヘンデル…、ありがとう」



「なんでだよ!」

いまだに激しくぶつかり合う。

「あいつのためなら!尚の事助けに行くべきだろ!」

「違う!!」

「違わねえだろ!!!!」

「違う!!!!」

「ヘンデル!!!!!!!」

「あいつが!あいつで決めたことなんだ!!!だから、だから!!友達として!!!邪魔するわけには、させるわけにはいかないんだ!!!!」



「ヘンデル」

「ん?」

「悩み事か?そんなに外を見てて」

「あー、まあな」

最近、悩み事ができた。いや、最近ではないか。どちらにしても、時期はどうでもいい。

「俺を雇いたいって、言われてさ」

「へぇ!良かったじゃねえか!」

「そうか?」

俺には、協調性というものが育まれてない。誰とでも合わせられるコイツだからこそ、俺とも仲良く出来てるだけで。

「無職よりかは圧倒的に良いだろ」

「たしかに、そうかもな」

「なにか、悩みがあるんだろ?」

ああ、そうだ。俺は孤独だ。そう思って生きてきた。ずっと、こいつに合うまでは。

「…。家族、っていわれた。」

「…。おまえ、独りだったんだろ」

「そうだ。俺は独りだった。だから、わからないんだ」

俺を雇いたいと言ってきた男は、俺のことを息子だと言ってきた。生き別れの息子だと。

「信じられるかよ。同じ町に住んでて、今まで無視してきたやつが、親だってよ…」

「ヘンデル…」

リュージンは、コイツは、簡単におめでとうなんて言わない。俺がどう思っているか、多分、わかっているから。

「今まで俺のことを無視し続けてたってことだろ。今更になって息子とか、意味わかんねえよ」

「…」

「俺が実力がついてきたから、ただ囲いたいだけ、なんじゃねえかなってさ。俺を見てるんじゃなくて、俺の肩書を見てるんだよ…」

俺の小さい頃の、一番古い記憶でも家族はいなかった。俺は、ずっと独りで育ってきた。

「俺の親だっていうやつは、どうみても昔から衣食住に困ってなさそうだった。あいつの周りにはあいつ以外の家族もいた。多分、こどもだろうってやつも」

「そうか…」

俺だけ捨てられたのだろう、おそらく。

なのに、今更、なんなんだよ。

「なあ、ヘンデル」

「…」

「おまえの、思う通りにしたらいい。お前が決めるんだ。その親もどきでも、俺でもない、お前が。俺は友達として、お前の決めたことを尊重する」

「おまえ…」

「どうしたいんだよ、おまえは」

「…、おれは、」



「ハァ、ハァ、」

そこにいる二人には、明らかに疲れが見えていた。

全力でぶつかり合っている。おそらく、力は互角、そして覚悟も。

「ッ、ハァ、ウッ、ゲホッ!、フゥ、、、」

疲れている、かなり。

もしかしたらここでお互いに相打ちになって死ぬかもしれない。それでも、止まらない。

「「あいつの、ためなんだ!」」



リュージンは、覚悟を決めていた。

今日、死んでもいいと。

「よお、久々、だな」

目の前の、光の柱に向けて言った。

今、世界中で、突如として光の柱が天高く立ちのぼり、煌々と輝き続けるといった事案が発生している。

「おわらせに、来たぞ」

リュージンは、この柱に見覚えがあった。歴史の教科書でも見たことがある、だが、それでさっきの発言に至ったわけではなかった。

「俺が、終わらせる」

リュージンは、自分の、文字通り全ての力を、ありったけを、世界で一番大きなその柱に向けて、放ち始めた。




「こいつ、ヘンデル、俺がリュージン!」

「お前のことはいいんだよ知ってる、ヘンデルか、宜しくな」

「ども」

「こいつ人見知りだからさ、あんまりなれてないんだよこーゆーこと」

リュージンに、友人を紹介したいと言われたから、会ってみたら、無愛想な、でも根は良さそうな男がいた。

「んで、こいつがマレリアだ」

「こいつの友達ってことは、変なやつだと思っけど、いいやつそうだな」

「へへ、そうだろ、自慢なんだぜこいつのこと」

「十分俺は変だと思うが」

少しばかり、初めて合う友人も交えて、話を弾ませた。



「いくらあいつだけの力じゃないとだめだからって…、見殺しになんてできるかよ!」

「あいつが、他の誰でもない、あいつが!望んでるんだ!」

「だとしてもだろ!なんで見殺しにしてまで!」

「それが、友達だからだ!」

「そんなの、友達じゃねえ!」




「あぶねえっ!」

崖から落ちそうになってる人を、落ちないように後ろに、抱えたまま引いた。

「…、なんで?」

「あぶなかったな、あんた」

「なんで、そんなことするの?」

「え?」

「かんけいないでしょ、あなた」

「え?え?」

「だまって、しなせてよ…」

何を、言ってるんだ?

「おいおい、冗談だろ?死ぬってあんた、自殺しようとしたってことか?」

「…、かんけいない、でしょ」

「まあまあ、おねえさん、そう言わずにさ、はいこれ」

リュージンが、お姉さんにクッキーを渡した。

「とりあえず、することないなら、俺の話し相手になってよ」

ニコニコしている。

「なによ、これ」

「腹減ってない?まあ、だとしても、さ。あ、おれはリュージン、こいつはマレリア。よろしく!」

よくわからないが、リュージンに任せるか。




「おれはあいつに生きててほしいんだよ!死んでほしくないんだよ!犠牲になってほしくないんだよ!お前もそうじゃねえのか!ヘンデル!!」

「そんなことじゃねえんだよ!大事なのは!!…、俺達がどうしたいかじゃねえんだよ…、あいつがどうしたいか、なんだ!!!」




「マレリア、話、しよーぜ」

「あらたまって、どうしたんだよ」

珍しいな、リュージンがこんな感じで話しかけてくるなんて。

「お前が前助けた女の人、いるじゃん」

「ああ、あの人か、どうかしたのか」

「…、あの人、亡くなったって」

「…、どうしてだ」

「…、相当、やられてたっぽい、周りから」

あの時、崖から助けたと思っていたお姉さんは、話を聞くに、周囲から忌み子として、滅茶苦茶な扱いを受けていたらしい。それでも、俺は生きてたほうがいいと思っていた。実際、リュージンと話して、あのお姉さんには、最後には笑顔が戻っていた。

俺達とわかれる頃には、生きてみるのもいいかなって、言ってたんだ。

「自殺、なのか?」

「そういうことに、されてる」

「…」

「多分、違うとは思う、だって、お姉さん、笑ってたしさ、それに、生きてみるのもいいかもって」

「そうか…」

俺は、お姉さんに、生き地獄を追体験させただけなのかもしれない。

俺は、間違っていたのだろうか。




「あー、これで俺も終わりかぁ」

物思いにふけようとした。しかし、なにも浮かばなかった。

「へへっ、まあ、そんなもんか」

小さな頃から、この光の柱をどうにかするために、生きてきた。

この光の柱は、周囲に悪影響を及ぼす。しかし、消す方法が、まず存在しない。影響を受けないには、そこから離れるしかない。リュージン以外には。

「まあ、いいか。満足だ、俺も。あいつらにも、あえたしな。」




トントンッ。

戸を叩かれた。

「はーい、どちらさまですか?」

「あの、初めまして、マレリアさん、ですか?」

「あ、はい、そうですが」

目の前には、あの時、助けることができなかったお姉さんに似た女性が、いた。

「以前、姉を助けていただいたものです。今日は、姉の代わりにお礼をしにきました。」

「助けた?」

「はい、崖から落ちそうになっていたところを助けていただいたと」

驚いた。あのお姉さんは、たしかに自殺しようとしていたらしい。それなのに、落ちそうになっていた、か。おちようとしたじゃなしに。

「姉から聞きました。マレリアさんとリュージンさんのおかげで、元気が出たって。だから、お礼にと」

「そう、ですか。わざわざ、ありがとうございます」

俺は、助けることができたのだろうか。俺のせいで、あのお姉さんを、更に苦しめただけになってないだろうか。

「よかったら、これを」

「これは」

クッキーだった。俺とリュージンが、よく食べるクッキー。

「お二人は、これがお好きだと聞いてましたから。」

「そっか…。」

「姉は、お二人に助けられたと言った日から、最期まで、確かに、元気、でした…」

「…」

「たしか…、に、げんき、だったん、です…」

悲しみを携えた、そこからおちる水滴たちを、俺は、どうしようもできなかった。




光の柱。

これは、世界の柱。

この世界の力が、溢れ出てしまっている為に、柱になっているだけ。

世界そのものの力であるため、強すぎるため、悪影響になってしまう。

なぜ、こんなものが過去に、そして現代に存在するのか、してしまったのか。

それが分かれば苦労しない、が、止める方法なら、教わった。力の強い何かを、その柱に入れる。

あのときのお姉さんのような、力の強い何かを。

「…、俺だったら、死ななかったのかな、お姉さんの時も…」

俺は、この世界でだれよりも力を持っていた。それは、俺がこの柱から生まれた存在だから。だから、力の質も、全く同じだった。

なぜ、柱に力を入れると止まるのか。それはわからない。なぜ、俺は柱から生まれたのか、わからない。

わかるのは、この柱を、大昔から存在するこの柱を消すことができるのは、これの化身とも呼べる俺だけ。

俺には、1つ仮説があった。

この柱達には、かつても、お姉さんのように生贄にされた人達がいたんだろうと。そして、その人達の想いが、俺になったんだろうと。

「どっちでも、いいか、もう」

とにかく、こいつを無くせば、二度と光の柱が現れることはないだろう。きっと。

「ヘンデル、マレリア、…、さよならだ」




光が、突如として二人の前から去っていった。

二人には、ヘンデルとマレリアには、何が起こったのか、わかった、わかってしまった。

「…」

「なあ、ヘンデル、」

「…」

二人は、心では争いを続けていたが、体の方はお互い地べたに沿っていた。限界だった。

「なあ、おい、…、ほんとうに、いいのかよ」

「…、いいわけ、あるかよ」

ヘンデルが、呟いた。音の量は小さかった。しかし、そこにのせてある、その想いは、計り知れなかった。

「はじめての、友達だったんだよ…」

泣いていた、あのヘンデルが。

「おれ、独りだった、いつも、だけど、あいつは、友達だったんだよ…」

「じゃあ、なんでだよ…」

「友達だから、だから…、あいつの、いう通りに、してやりたいって…、おれの我儘じゃなしに、あいつの…、」

「じゃあ、助けに行くべきだったろ…」

何が、じゃあなのか。でも、そういうしかなかった。

「やっぱり生きてたほうが良かったってことだってあるんだよ、例え、それで後々、苦しくなっても…」

二人は、ただ、お互いの友への想いを、空へと、投げかけ続けた。




光の柱は、より質が近く、より大きな力を入れると、消失する。しかし、その力に別の力が交じると、その消失は期限付きのものとなってしまう。

また、どこかに存在する長ともいえる柱が存在し続ける限り、かならず、どこかしらに新しく存在してくる。

かつて、この世界を苦しめた、この世界の綻びを、直した者がいた。その者は、その功績を讃えられることもなければ、その力の存在を知られることはなかった。ただ、二人、たった二人の、親しい間柄を、除いては。

ここまで読んでくださり、有難う御座いました。

今回のお話は、あえて時系列を飛び飛びにし、それぞれがリアルタイムで回想しているかのようにしてみようとした作品です。

読み辛かったかもしれませんが、楽しんで頂けましたら幸いです。


もしかしたら、これをより密に、時系列通りに記していく事があるかもしれません。その際は、またどうぞ、彼等のことを宜しくお願いします。

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