( 8 ) 自立の1歩②
とりあえずは、アグアニエベの城から通う事になった自分の家。初めて主人になったので、こそばゆいアンジェラ。
「こんにちは。私が主のアンジェラ・ラペスです。あなたが、ゴメス様からのご紹介された人ですの?」
庶民らしくしなくては。「ございます」言葉が使いたいけど目立つので、一般的な言葉を使わなくては。だけど、つい、出る。
「はい、マイク・ダレンです。貴族の家で下男をしてました。家族で働いてたので、住み込みで皆を雇ってもらえたら。」
「皆で住み込みですの?(移住なのね)」
「駄目・・ですか?」
「いいえ、歓迎ですわ。皆さんの方が賑やかですものねえ。で、何時から来て頂けますかしら?」
「はい、何時からでも!(この人は貴族のお嬢様なのかな)」
屋敷の横に建っている棟は、元の使用人の寮であった。そこも手を入れて綺麗にしてある。直ぐにでも使えるように。
ダレンは初老のオジサンだが、連れて来た奥さんは家政婦の経験ありで娘や息子も働き慣れていた。お買い得の1家だ。即、働き出して手際の良さにアンジェラは感心する。
「元のご主人様は、あなた達が居なくなって不便ではないのかしら?」
「旦那様は遣い込みがバレて捕まりましたから、追い出されたんです。家も無くて紹介状が無いから再就職できないし助かりました。」
聞けば、退職金も無かったそうだ。その上にケチな雇い主で安月給だったとか。同情したアンジェラは少し給料を上げてやった。スポンサーのアグアニエベのお金ですが。
真面目に働いてるのに酷いですわ。私が王子をクッションで叩いたくらいで追放されるのと一緒でしてよ。プンプン!
ダンジョン第2層に挑戦。
アグアニエベが声をかけたチームを連れて来た。
「アンジェラさん、リーダーのマックスさんです。1緒に入って頂きますから。」
第1印象が、熊さんだった。丸々としてて顔が髭で覆われていたからだ。声もデカイ。
「よー、あんたがアンジーさんかい。俺は、マックスと呼んでくれよ。アニーアゲさんに頼まれたから任しますときな!」
「はい、よろしくお願いいたします(2人の名前が違ってますけど)」
マックスのチーム「団結暖団」。気になったので聞いてみた。
「あの、どうして「暖団」なんですの?」
チームの女弓使いが小声で説明してくれる。
「リーダーが、チーム申請する時に書き間違えたからだよ。リーダーは、頭が悪いんだから。変な事しても気にするな。」
変な言葉をするんですか。それが、気になりますけど。変わり者らしいのは分かった。そして、チームとしてダンジョンに入る。
チームとしては、ダンジョンの1層くらいは誰でもクリアできるので気楽な雰囲気だった。槍使いの男は、退屈そうだ。
「報酬は良かったけど、お嬢様のお守りてのはツマンネーなあ。」
聞こえてますけど。お嬢様で悪かったですねと、アンジェラは苛つく。そこへ、上から何かが降って来た。チームのメンバーが逃げ出して行く。
ドッスーン、ギャオウー、ズルズルズルズル!
10メートルはあると思われる大蛇が鎌首を持ち上げて襲ってくるのだ。居るなら居ると自己申告してください。
「ワームだ、逃げろー!」
「何で2層にワームが居るんだ?」
そうなんです、2層には居ないはずなんですが。この人が関係してました。彼等から見えない場所に隠れている人影。
「ほらほら、せっかくのワームですよ。頑張って退治して下さいー♪」
嬉しそうに応援している悪魔。先日のワニザウルスも不自然ではあった。1層に居るはずが無いのだ。この方の仕業なのだ。
「私の小説には必要不可欠。不幸中なヒロインのサバイバル。ほら、逃げないで戦って下さいよー」
優しいふりして飴とムチを使う。とんでもない事をするアンジェラの保護者。初めて目にするワームが襲ってくる恐怖に何かの知らないアンジェラは救いを求めた。
「嫌ー、怖い。パパちゃま、助け下さい!」
そう言われたら、無視できない。アグアニエベは、わざとらしく宙から登場した。
「正義の味方のアグアニエベが登場いたしました。か弱い乙女を襲う魔獣め、私が退治してくれる。覚悟しろっ!!」
自分が連れて来たワームをコロンと片付ける。アンジェラは感動。アグアニエベが天使に見えた。
「パパちゃま、天使様ですわ!」
「アンジェラ、君の為なら私は地獄からでも駆けつけますよ!」
英雄気取りの悪魔だった。ワームから彼が取り出した魔石をアンジェラが受け取る。何もしてないけど第2層のチャレンジ成功。
ダンジョン第2層、ワーム1匹と魔石1個をゲット。