表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/43

( 6) 頑張りたいけど出来そうにない

ダンジョン「1層」

初心者向けコース。剣士なりたてでもクリアできる小物の魔獣ばかりだ。



「アンジェラさん、前に出て。僕の後ろばかり歩いててら何も手に入りませんよ。」



バレたか、エドワードの後ろにくっついて誤魔化すつもりだったのが。アンジェラの気の強さが出た。



「そんな事ありませんわ。あなたのお手並みを拝見してからと思ってましたのよ。つん!」


「それなら、言って欲しかったな。」


「えっ?」


「僕は、あなたの為に獲物をしとめますよ。レディ?」



エドワードはアンジェラの手を取り手の甲に口付けた。一瞬、彼が貴族に見えてしまう。マズイわ、この人も元貴族なのね。


引っ込めた手を自分の手で包む。素敵な人だけど、好きにならないようにしなくては、アンジェラの中で警報器のランプが灯る。



「あ、そうだ。アグアニエベさんから頼まれてたんでした。これを、付けて下さい。僕も付けてるけど、僕の親友が作る魔道具だから。あなたを守ってくれますよ。」



取り出したのは、緑の石を嵌め込んだブレスレットであった。アグアニエベが注文したらしい。魔道具なのなら身に付けていなくてならないのだろう。



「これは、何の魔法が入れられてますの?」


「毒消しだよ。どんなに強い毒でも中和してしまう。」



アンジェラの目がエドワードの右腕にしているブレスレットに止まる。嫌な予感。



「もしかして、あなたは毒を使って狙われていたのかしら?」


「うん、そうなんだ。これをプレゼントされるまでは、何を食べるのも何を飲むのも怖かった。今では、平気さ。これのおかげで、気分が悪くなるけど我慢してれば毒に勝てるからね。」



天気の話をするように言っているけど、命の危険に晒されながら暮らしていたのだ。きっと、何処かの国の身分の高い人だった。例えば、国の王になれる継承権を持っている王子様とか。



「権力に目が眩んだ人間は、その為に誰が死のうと平気なんだ。君が1人で生きてくつもりなら、気をつけないとね。」



いい忠告だった。アンジェラは、礼を言う。そうだ、いつまでもアグアニエベのお城の御客では居られない。自分で生活できるようにならなくては。


覚悟を決めたアンジェラはスタスタと歩き出したら。エドワードの前に立って。










魔獣が、出現。小物だったが。風船みたいなオレンジの魔物。



「バブルコーンていう名前で呼ばれてているんだけど。これが集団になると手に負えない。近づかない事だね。」



フワフワしてて可愛いのに、残念です。アンジェラは連れて帰りたいと思っていたのに。その時、エドワードが声をあげた。



「アンジェラさん、気をつけて!」



油断していた。目の前の可愛いい小さな生き物に気を取られて。次の瞬間には、飛び出して来た魔獣に襲われていたのだ。



「グガアアアアアアアア!」



鋭い牙が上半身に食い込む。え、食い込む?



ガキン、ガキン、ガキガキガキガキ!ボロッー(噛んでいたけど牙が織れた音)


「防備魔法が発動しています。「小防備」から「中防備」に自動チェンジしました。」



エドワードの声が響く。「名刀ファントム!」の声の後に出現した剣で襲ってきた魔獣は斬り倒された。


床に、もんどり打つ身体は2メートルはあるだろうか。「ワニザウルス」という名前だそうだ。直ぐにエドワードが解体して魔石を取り出す。



「はい、初めての獲物だよ。おめでとうー。」



手渡される魔石を小声で礼を言いながら受け取るしかない。手は小刻みに震えていた。正直な気持ちは怖い。アグアニエベが与えた魔法スキルで怪我は無いけど。



「凄い・・、服に穴も空いてないわ!」



あれだけ噛まれたのに、魔力はアンジェラを守ってくれた。だけど、だけど、噛まれる感触が消えてくれない。


温かい腕が彼女の身体を包み込んだ。驚くアンジェラの耳に囁く声。



「大丈夫かい、怖かったね?泣いていいんだよ、我慢しないで。」



なんて、優しい声だろう。この人の腕の中は心地良すぎて離れたくなくなる。駄目、好きになりそう。


だって、家族に捨てられて私は1人きりで寂しいのだもの。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ