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( 4) アグアニエベからの贈り物

アンジェラのヴァンホーレ伯爵家での新しい生活。それは、予想していたよりも過酷なものだった。到着して直ぐに塔の部屋へ鍵を掛けて閉じ込められたのだ。


バンッとノックも無しに開けられるドア。無言で下女が手にしているバスケットをドンッと落とすように床に置く。そして、出て行くのだ。



(どうせ、台所の余り物でしょうけど。食べる物があるだけ、ましですか。)



アンジェラは力なくベッドから起き上がる。そして、バスケットの中の固くなったパンと干し肉を口にした。



(喉が、乾いたわ。水が、これだけなの?)



下女が螺旋階段を昇る時に揺らしてしまったらしい。バスケットからカップの水が溢れてしまっていた。それでも、残ってる水を飲む。



(お父様は娘の私が塔に閉じ込められている児とをご存知なのかしら。)



父親が、指示したのか。それとも、銅像に襲われて金品を無くし身1つだったからか。到着してからの扱いは酷いものだ。


初めは、日に2度だった食事の配達。それが、1度になってしまった。着替えも1週間もすると持って来なくなる。



(あ、焼き立てのパンが食べたいですわ。着替えもしたいし、身体も洗いたい。)



そう望んで、涙を流す。いっそ、盗賊に拐われた方が良かったのだろうか。こんな扱いを受けるのなら。



「泣かないで下さい、可哀想なアンジェラさん。」



アンジェラは俯いた顔を上げた。銀色の長い髪をした美しい人が。いや、悪魔が立っていた。そして、ハンカチを取り出すと手に握らせてくれる。



「こんな事になるとは、予想しませんでした。天使の仕事が忙しかったので遅くなって申し訳ありません。さ、行きましょう。」


「え、行くって何処へ?」


「ここよりは、良い場所です。」


「確かに。ここ以外なら、良いでしょうね。」



アンジェラは、差し出された手に自分の手を預けた。この悪魔は、自分を護ってくれる。父親も伯爵家も、見捨てて何もしてくれないけど。







たどりついた場所はアグアニエベのお城だ。人の来ない岩山にある古城。そこでは姿の見えない執事が全てを仕切っている。そこは魔王の城で代々の魔王に仕えてきたという熟練者だった。



「お帰りなさいませ、旦那様にお嬢様。夕食は、8時でございます。遅れないように、お願いします!」



2人とも、「はい!」と返事する。ここでは、執事が王様なのだ。


アンジェラに与えられた城の1室。広い寝室とリビングに衣装部屋や侍女の控え室まである王女待遇であった。



「アンジェラ様、湯浴みの支度ができました」



侍女の姿をした人形達が世話をしてくれる。衣装部屋にはズラリとドレスが並べられていた。


アグアニエベは辺境伯爵の館へ連れて行った後、塔に閉じ込められたアンジェラを身代わりと摩り替えて連れて来たのだ。



「ありがとうございます、アグアニエベさん!」



アンジェラは、泣いた。実の親には捨てられて、身を寄せた伯爵家では人並みの扱いを受けなかった。


それを赤の他人の(悪魔だが)アグアニエベは、こんなにも大切に扱ってくれるのだ。アグアニエベは、優しく肩を抱いて慰めてくれる。



「アンジェラさん、私が護ります。安心して下さい。」



アグアニエベは、人形の召し使いに何かを持って来させる。それは、アンジェラには見覚えのある物。



「これは、私の宝石箱では?あの時に盗賊に盗まれてしまって諦めていたのです。」



高価な宝石は父親に没収されてしまったが、亡くなった祖父母から贈られた品も入っている。それを見て涙が溢れた。



「私が内緒で持ち帰っていました。伯爵家で取り上げられる恐れもありましたから。様子を見て落ち着いてからお渡しするつもりでしたが。今となっては、盗まれた事にしておいて良かった。」



この人は(悪魔は)、いい人だ。見捨てられた自分の頼る相手は、この人しか居ない。



「お願いが、あるんですの。」


「私で出来る事なら。」


「お父様と呼ばせて頂いて良いでしょうか?これからは、実の父親と思います。娘にして下さいませ!」


「お父様?それは、困ります。私は悪魔で、あなたは人ですから。」


「お願いします!」


「仕方ありませんねえ。では、別の呼び方でしたら。」



さて、どんな呼び方になったのでしょうか。








悪魔に与えられた安定した生活がアンジェラの身体を元の体重に戻した。痩せ細った身体がフックラしてくると、アグアニエベは課題を与える。



「私には転生前に娘がいましてね。臭いとかウザイとか言って嫌われてましたけど。あなたは、私の娘のような物ですから。」


「はい、パパちゃま。」



「お父様」は断って「パパちゃま」になった。アグアニエベの転生前のサラリーマンは、娘に小遣いをねだられる時だけは「パパちゃま」と呼ばれていたのだ。


それを知らないアンジェラ。でも、「パパちゃま」と呼ぶとアグアニエベが嬉しそうな顔になるので。



「私の友人に頼みましたので、今日から剣術を学びましょう。身体を作るには効果が有りますから。」


「剣術ですの?私に出来るでしょうか。ファッションですわ。」


「大丈夫、魔法スキルを付けます。」


「魔法スキルですか。簡単に魔法は付けられないはずですけど。」


「普通は出来ません。でも、悪魔には可能です。」



という事で、アンジェラは魔法スキルを魔王アグアニエベから付与されました。ありがたく、頂きます。


「レベル1」魔王から魔力を授かる。


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