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持たざる勇者と英雄の物語(仮)  作者: 神崎 秋斗
1章 GSMオンライン
8/20

1-8 最初で最後のランク戦



最後に出れて、本当に良かった。



今日はやたらと目覚めが良かった。

多分、俺の中で整理がついているからなのだろう。

未練などなく、今日の最後のランク戦に挑めるという気持ちが。


ランク戦は一日をかけ行われる、大規模なイベントである。

参加者数は、絞るといっても、魔法種と剣種に関しては予選が行われるほど。


そして予選が行われる都合上。銃種のランク戦が一番初めになる。

ランク戦の合間に、予選が行われているのだろう。

興味がないせいで、見たことがなかった俺には正解はわからない。


さくっとログインを済ませ、ランク戦が開催されるコロシアムへと移動する。


「YUJIさん。」

コロシアムに着く頃、後ろから声がかかる。

「来ましたね、YUJIさんの最初で最後のランク戦が。」

やる気が上がるような言い方をしてくれる。

本当にいい人だ。

「そうだな。うん、最後だ。」

噛みしめる様に、こみ上げる何かに負けないよう、そう言葉にする。

「はは、YUJIさんあのキャラ辞めたんですね、そっちの方が良いですよ。」

「辞めたとか言うな、最後くらい面倒を辞めただけだ。」

「はは。」

「てか、あのキャラはお前のせいだろ。」

他愛のない会話。

ただ多分これが初めての、本当の会話だと思った。


「まぁいいや、ゲットしてきたんだろ、ちゃんと。」

REIは昨日言っていた。

3%のドロップを狙うと。

参加資格を獲得すると。


「もちろんです。」

またイケメン笑顔に加え、親指を突き立てる。

相変わらず、様になるな。

「なら、最後の講義だな。」

「そうですね、最後くらい、ちゃんとあがいて見せますよ。」


それ以上言葉はいらない。

そんな気がしたから、俺は歩き出す。

それに合わせる様にREIも歩き出す。

あぁ、もうちょい早くこうすれば良かったかな、なんて感慨深くなる。



銃種のランク戦の参加者はたったの4人だった。

俺とREI、それと後二人。

準決勝と決勝だけのランク戦。

合計3試合しかないランク戦は約30分で終わった。

準決勝自体は数分で終了し、迎えた決勝。

俺はREIと向き合っていた。

そしてそこから20分。

REIに教えた銃種の攻撃パターンを全て避けきり、耐えた。

普段観客ほとんどいない観客も、今日ばかりは多かった。

上位ランカーYUJIを見るため、またその戦いぶりを見るため。

そして沸きに沸いた。

数千と浴びせられる銃弾を、絶え間なく浴びせられる銃弾を、俺は実に20分間回避し続けて見せた。

銃種の可能性を残したい。

少しでも増えてくれれば、なんて浅ましい感情もあったかもしれない。

しかし多分、俺を支配したのは、REIに見せつけたかった。

俺の今までを、見てほしかった。

そこから何かを受け取ってほしかった。

唯一、銃種に興味を持ち、俺に話しかけた、俺の唯一のフレンドに。


終わりは実にあっけなかった。

カチ、カチ。

リボルバーが空転する。

それは弾切れを意味し、それ以上の攻撃手段がないことを教える。

その瞬間、鐘が鳴り響き、終わりを告げる。


「予想以上だったぞ。」

肩で息をするREIに、俺はそう声をかける。

「弾切れって、一番恥ずかしい奴じゃないですか。凄すぎますよ。」

「悪いな。ついつい興がのっちゃって。」

「興がのっただけで、20分回避し続けられるんですか。全く化け物ですね。」

「誉め言葉として受け取っとくわ。」

心地よい掛け合い。

俺は自然と手を差し出す。

REIも応えるように手を取る。


「YUJIさん。」

今までありがとうございました。


今までで一番の笑顔を見た気がした。

全くリアル過ぎんだよ、このゲーム。


次回は6月4日18時更新予定。

感想・誤字脱字報告など、あれば是非。

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