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持たざる勇者と英雄の物語(仮)  作者: 神崎 秋斗
1章 GSMオンライン
1/20

1-1 GSMオンライン

初投稿です。

宜しくお願いします。



予想以上に熱中してしまった。



 それが当時、俺が陥ってしまった状況だった。

 そこまで賢くもない頭で、少し高望みをした結果、予想通り大学受験に失敗した俺は、現実を逃避するかのごとく引きこもった。

 最初は引きこもるつもりなどなかった。

 一浪して大学に受かるために勉強をしようと、実家から距離のある有名な予備校に通うため一人暮らしを始めたことが全ての始まりだったのかもしれない。

 大学に合格した友人から、気晴らしにどうだと誘われたオンラインゲーム「GSMオンライン」を始め、数日もかからずのめり込んでしまったのだ。

 行くはずだった予備校は入学を取り消し、その金を生活費に充てる選択をした事で、ついに引き返すことが出来なくなった。

 始めた当初、2時間ほどだったプレイ時間は、1週間も経過すれば半日はゲームにあてる様になった。

 生命活動に必要な、睡眠・食事などを最低限に留め、出来る限りログインしては、クエストに参加した。

 「GSMオンライン」はいわゆるMMORPGというジャンルのゲームで一つのサーバにゲームに参加する全てのプレイヤーが一堂に会する。

 Gun、Sord、Magic、ゲームを構成する三つの要素の頭文字をとった安直なタイトルのゲームではあるが内容は、玄人好みの鬼畜難易度であった。

 ほぼ全てのアイテムに関してはクエストで獲得する素材を合成する事で入手出来、課金での入手は不可となっている。

 そのため、プレイヤーは皆操作技術を磨き、クエストを周回するのであった。

 さらにこのゲームはMMORPGなのだが、一般的なパーティーやギルドといった、複数人で協力するといったことが出来ないという変わった仕様がある。

 クエスト中も他プレイヤーの妨害などが推奨されているなど、他のMMORPGとは違ったスリルが味わえる為、人気を持続させている。


 俺はそんなゲームを約一年間プレイし続けた結果、ワールドランキング上位に名を連ねるまでになった。

 高校卒業時、70キロほどであった体重は、ひきこもりの甲斐もあり、57キロまで減少していた。

髪も長くなり、切りに行くことが面倒だと、後ろで束ねている。

 必要な買い物以外の外出は無くなり、一人暮らし開始時の本来の目的である勉強に関しては、全くと言っていいほどに進んでいなかった。



 「この世界では不遇な武器種の、銃を使ってるのって、ランキング上位者ではYUJIさんくらいですよね?」

 ここはオンライン上の集会場の一角。

 比較的他プレイヤーとの交流が無く、さばさばした印象のゲームではあるが、このようにプライベートチャットを行うプレイヤーも確かに存在する。

 「確かに不遇だけど、これはこれで味があるんすよ。」

 使い慣れない敬語?を手元のキーボードで入力し、返信する。

 この一年で文字入力の速さも格段に上昇したと思う。

 画面上で全身真っ黒なキャラクターを操作するキーボードと、会話のためだけに存在するキーボードを巧みに使い分けながら行う操作にもずいぶん慣れた。

 「銃系の装備は、素材集めも大変だし、必要スキルも他と一線を画してますからね。今更他に変えるわけにもいかないって感じっすよ。」

 俺が操作するキャラ『YUJI』は、さも仕方ないですよといった感じのアクションを行う。

 これもこのゲームの面白い点の一つであり、無駄に多いキャラアクションのおかげで、まるで生きてるかのように操作することが出来る。

 しかしプレイヤー同士のコミュニケーションが少ないため、もっぱらの無駄機能と馬鹿にされているのも事実だ。

 「最初っから魔法を選んでれば違ったとは思うっすけど、ほんとに今更っすからなぁ。」

 このゲームにおいて、もっとも強いとされているのは魔法だといわれている。

 現在のワールドランキングもおよそ6割ものプレイヤーが魔法種である。

 近接型の剣種が3割強、銃種を使っているのは確かに『YUJI』くらいしか上位に存在しない。

 各武器種の特徴はこんな感じだ。


 『魔法種』ソロプレイ仕様のためか近接~遠距離までこなし、詠唱というものも存在しない。耐久系のステータスが上がりにくい傾向にはあるが、補助魔法が充実しすぎているため、あまり関係がないという壊れっぷり。ただ攻守に関して、すべての技でMPを消費するため、クエスト攻略時は比較的高価なMP回復薬を常備する必要がある。


 『剣種』近距離特化。SPを使用し攻撃を行う。武器種の中で一番攻撃力が高く、スキルに関しても攻撃に関するものが豊富に用意されている。ただ剣種の装備品に関しては耐久値が設定されており、必要に応じて修理系のスキルが必要となる。耐久値が0になると装備品が消えるというリアル仕様となっている。


 『銃種』中~遠距離型。SPやMPという概念が存在しないが、代わりに所持出来る弾倉数に制限がある。使用できる銃弾は初期武器を除き、全て素材合成のみとなっている為、他の武器種に比べ育成難易度が極端に高く、また操作性も独特なものとなっている。


 このゲーム内では三竦みとなっており、剣種より銃種が、銃種より魔法種が、魔法種より剣種が強いという仕組みになっているのだが、魔法種の使用感が良すぎるため、稼働当初から使用ユーザーが多く、また関連クエストの攻略なども盛んに行われた為、現在の魔法種強時代を迎えたというところだ。

 銃種ほどではないが、剣種のユーザーもそこそこいたため、そこまで落ちぶれることもなかったが、それでも魔法種の勢いにはかなわなかった。


 「RENさんも銃種極めるって言ってなかったっすか?

  この前クエスト情報公開しましたよね?」

 ワールドランキングの上位に達した頃位に、『REN』というプレイヤーは攻略方法を尋ねてきた。

およそ半年前の出来事である。

 ソロユーザーが多い中、そういった交流がなかった事や、冷遇の銃種に興味を持ってくれたことが嬉しくなり、必要スキルクエストの攻略方法や、素材クエストなど、色々レクチャーした。

 「いやー、あれは厳しいですよ。

  銃種を選ぶ人が少ない理由がよくわかります。」

 頭をかきながら顔をしかめる。

 イケメンな聖騎士風のアバターこそ、唯一のフレンドプレイヤー『REN』である。

 ゲーム内でたまに会う程度ではあるが、会うたびに銃種についていろいろ聞いてくる。

 当初、銃は男の憧れだっとかなんとか言っていた記憶はあるが、その時の熱意と勢いが凄かった記憶しかないのは内緒だ。

 「YUJIさんは凄すぎますよ。何回やっても弾切れになりますから。」

 銃種にのみ存在する銃弾制限。

 クエストに持ち込みできる量もそうだが、合成用素材についても制限の対象となり、難易度が高くなればなるほど、制限が厳しくなる。

 「まぁRENさんは元々剣種っすからね、前も言いましたけど、やっぱり今から銃種は厳しいっすよ。」

 溜息をつくRENを慰めるようにアクションコマンドを選択する。

 「実際、銃種をほとんど見ないっすからね、今は。」

 「確かに、銃種の初期武器が強いからと始めたプレイヤーは、その次の武器の入手で躓きますから。

  あのクエストの裏ボスが強すぎますよ。

  だから銃種が冷遇される、それを何とかしたいですけどね。」

 あきれるよう手を広げた俺のキャラに詰め寄るREN。

 しかし、言葉終わりに溜息をついては、ベンチに腰掛けた。

 ゲームなのかと疑いたくなるほど感情豊かな動きに、プレイして1年経つ今でも感心させられる。

 たしかに、RENの言うこともよくわかる。

 銃種の初期武器『ハンドガン壱式』だが、両手に装備可能で、更にこの武器のみ銃弾が無限という仕様の為、稼働当初多くのプレイヤーが飛びついた。

 しかし、銃種の初期武器は、最初のクエストでのみ装備可能なため、次の武器を準備しなければならないのだが。

 バグなのか仕様なのか、最初のクエストの通常ボスからはドロップせず、初回クリア後に現れる隠しフロアにて、裏ボスと呼ばれる中級プレイヤーが挑むようなボスを倒すことで、低確率ドロップするという。

 ドロップ率は実践値で約3%。

 この裏ボスに対し、初期武器ではほとんどダメージを与えられず、初期武器から4段階ほど上位の武器で挑むのが正規の難易度である。

 序盤で運ゲー・鬼畜ゲーを突破し、そのあとも装備に金がかかりすぎる。

 そんな中、魔法種の有用性が実証され、ほとんどのユーザーが飛びつくことになる。

 本当に現金な奴らが多すぎるなんて思っていたことは、懐かしい思い出である。

 「ほんとYUJIさんは運が良すぎなんですよ。

 あの裏ボスを一回の討伐でドロップしたんですから。」

 「まぁ、確かにそうですけど・・・。」

 RENは顔を輝かせ、俺の方を見る。

 だから、なんでそんなに感情豊かなんだって突っ込みたくなる。

 だが俺は言葉を詰まらせる。

 運が良かった、確かにそうだと思う。

 あれ以上に幸運なことはなかったと思うし、そのおかげで今があるのは間違いないのだから。



一部辻褄が合わなくなるため、修正しました。

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