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第十二章 ゲルマニクス 場面二 ゲルマニクスの演説(五)

 ゲルマニクスのやり方は、ドゥルーススのそれとは全く対照的だった。犯した罪を自ら償う―――一見正しいことのように思えても、この場合は絶対に兵たちにそれをさせてはならなかった。扇動し扇動されたといくら言っても、同調した者にも責任はある。制止しなかった者も全くの無実ではない。多くの者が後ろめたい気持ちを内心では抱えているのだ。償いを命じられた兵士たちは、誰もが自分の罪から目をそらすために、あるいは自分が「指され」ないように、先を争って自分よりも少しでも目立つ行動を取った兵士の名を挙げた。周囲の後ろめたい兵もそれに同調し、同胞に襲いかかった。指された兵士たちは暴行を受けた上で縛り上げられ、次々に指揮台に立つ第一軍団長の許へと引っ立てられた。

 二つの百人隊が選ばれた。彼らは剣を抜き、指揮台の周りに円陣を組んで立つ。指揮台の上にはクィリニウスと一人の首席百人隊長、そして二人の軍団兵が上がった。そこへ、縛られた哀れな扇動者たちが一人ずつ上げられた。

 軍団長が名を呼び上げる。

「第二十軍団所属、第一大隊第五百人隊、マルクス・マルキウス・クレメンス」

 兵たちが口々に叫ぶ。

「有罪!」

 有罪の叫びを受けた者は指揮台から突き落とされ、同胞の剣を全身に受けて殺された。一人が処刑されるたび、兵たちの間からは歓声が上がったという。その血によって、自分たちが犯した罪が洗い清められてゆくとでも信じているかのように。

 引っ立てられたほとんどの兵士たちは殺害された。ゲルマニクスは、現場を見ることさえしていない。クィリニウスの「処罰完了」の報告を受け、処刑された者のリストを見た上で、それを良しとしただけだった。

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