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第十二章 ゲルマニクス 場面二 ゲルマニクスの演説(四)

 ゲルマニクスはしばらく間をおいてから、大仰な仕草で両手を天に向けた。兵士たちは息を詰めて総司令官を見つめる。

 いまや、彼らの心は総司令官の手の内にあった。ゲルマニクスは厳かな口調で言う。

「天上に迎えられた神君アウグストゥスよ、兵たちと共に戦場を駆けた、我が父ドゥルーススよ。どうか、あなたの兵たちをご覧下さい。彼らは今、自分たちが犯した罪を悔い、赦しを願っています。あなた方の血を引く者の祈りを、仁慈をもってお聞き届け下さい。彼らから、どうか今までに犯した数々の罪の穢れを洗い流してやって下さい。そして彼らの力を、同胞への暴力にではなく、敵の殲滅のために使わせて下さい」

 ゲルマニクスは再び兵たちを見た。

「もしもお前たちの後悔が真実なら、首謀者を即刻差し出せ。それが恭順の何よりの証だ。犯した罪をその手で速やかに償うがいい。そうすれば、お前たちの望みは叶えられよう」

 ゲルマニクスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、兵士たちの間で扇動者の選別が始まった。ゲルマニクスの周囲に集まっていた兵たちの中にも、主要な扇動者が―――正確に言えば「主要な扇動者とみなされる行動を取った者」が混じっていたのだ。兵士は同胞を指差し、罵り、集団で掴みかかった。ある者は群れを成し、標的の名を叫びながら競い合うようにして兵舎へと走っていった。ゲルマニクスはこれを見て、第一軍団長のクィリニウスに事態を見届けるよう命じ、司令部へと去った。



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