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第二十一章 タルタロス ―――地獄 場面四 断崖(四)

「………ドゥルーススか」

「はい」

 短い沈黙がある。

「カエサル。ドゥルーススは、全て知っていました。リウィッラの裏切りも、セイヤヌスのことも、自分が恐らく彼らの姦計にかかったことも」

 その瞬間―――全身の血が凍りついたかのようだった。心臓は脈打つのを止め、呼吸さえも止まった気がした。マクロの口が動いている。声は聞こえないのに、何故だろう、話されている言葉だけは判る。

「わたしは、彼が死ぬ半年も前に、二人を姦通罪で告発すべきだと忠告し、告発状の下書きまで作って彼に見せたんです。だが、ドゥルーススは聞かなかった。妻の浮気の一つや二つ珍しくないことだと、無理に軽く流そうとしました。わたしは彼に言った。ただの色恋沙汰のはずがない、相手は、あの権力欲の塊のようなセイヤヌスだと怒鳴りました。ドゥルーススもやっと白状しました。セイヤヌスはリウィッラを利用しようとしているのかもしれない、それは自分にも判っていると。だが、ドゥルーススは、セイヤヌスが自分を殺し、自分に取って代わろうとしているとまでは信じられないと言った。たとえ自分が死んでも、カエサル、あなたが決してセイヤヌスにそれを許しはしないと確信していたんです」

 マクロはそこで一瞬言葉を切り、唇を噛みしめた。

「それは、確かに正しかった。ドゥルーススはあなたを理解していた。だが、セイヤヌスがあなたを理解していないということに対する認識が甘かった」

 ティベリウスは立ち上がった。唇はわなわなと震え、しばらく言葉が出てこなかった。ティベリウスはマクロを怒鳴りつけた。

「立て!」

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