第二十章 シジフォス―――苦行 場面八 第二の書簡(三)
ドゥルーススが破滅した頃から、ティベリウスはセイヤヌスを重用する姿勢をますます鮮明にしてきた。公然と「わたしのセイヤヌス」と彼を呼び、市内の至る所にその像が建てられた。自らの代理として、頻繁に首都に派遣し、首都の人々はそのたびにこの親衛隊長官の機嫌取りに追われた。
夏になって、ティベリウスは来年度の執政官職に、このセイヤヌスと共に就任すると発表した。これには人々も、さすがに驚きを禁じえなかった。いかに権勢を誇ろうと、騎士階級に属するセイヤヌスは、それまで元老院議員でさえなかったのだ。それを財務官も法務官も経験せず、一足飛びに執政官に就任させるとは!
だが、驚きはそれだけでは終わらなかった。更にティベリウスは、セイヤヌスにリウィッラとの結婚を認めた事を公表したのだ。ただし結婚式は彼が執政官の任期を終え、「執政官格」となってから挙行するとした。ゲルマニクスの実の妹で、かつてガイウス・カエサルと婚約し、その後ティベリウスの一人息子の妻となったリウィッラの夫となるには、せめて執政官を経験してからでなければ、というのがその理由だった。セイヤヌスはこれによって、ほとんどかつてのドゥルースス並みの立場に昇格したことになったのだ。




