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第十章 混乱 場面六 軍団の暴動(六)

「ローマが誇る軍団兵たちが、暴力と脅しでもって、最高司令官に願いを訴えるとは! 慈悲深いアウグストゥスの喪の最中に、また稀有の凱旋将軍カエサルが統治を始めたばかりのこの時期に、他ならぬこのパンノニアの精鋭が騒乱を起こすとは一体何事か。最高司令官に対して求めることがあるというなら、そしてそれが正当な要求であると確信しているのであれば、何故きちんと使者を送り、堂々とかの方に訴えようとしないのか。カエサルは厳格だが、同時に兵を非常に大切にする方であることは、誰よりもこのパンノニアの軍団の一人一人がよく知っているはずではないのか?」

 芝は積まれていった。だが、ブラエススは諦めなかった。理を尽くした粘り強い説得に、兵士達の中からも同調する者が出た。軍団兵たちは幾分大人しくなり、まずは首都に使者を送るべきだ、というブラエススの言葉に従う事に決めた。ブラエススの息子が使者に選ばれ、兵士達はそれぞれの天幕に引っ込んだ。カエサルに詳しい経緯を説明し、指示を仰ぐようにとの厳命を父から受けた息子は、すぐに夏季陣営を発った。

 ホルタルスが、ブラエスス出発後の経緯を続けて語った。彼は第十九軍団所属の百人隊長だった。

 騒動は収まったかに見えた。だが、近隣の自治都市ナウポルトゥス(ヴルニカ)に派遣されていた分遣隊が、本営の騒ぎを聞きつけて勢いづいた。彼らは隊旗を奪い取り、制止しようとした百人隊長の鞭を取り上げて殴りかかった。それどころか、略奪行為さえ働き始めた。完全に暴徒と化した彼らが「戦利品」を携え、朝日と共に意気揚々と帰営すると、本営の騒乱も再燃した。周辺の町へ繰り出し、片っ端から略奪をした。

 ブラエススは彼らを罰し、秩序を取り戻そうとなおも努力したが、既に暴徒の勢いの方が強かった。軍団兵たちは牢を破り、罰を受けていた同胞や脱走兵、犯罪者まで解き放った。百人隊長の一人ルキリウスは斬り殺され、多くの下士官たちが牢に放り込まれた。

 ホルタルスは命からがらと言ってよい状態で本営を発ってきたらしい。街道沿いの駅舎で馬を換えながら駆け通しに駆け、首都に入る少し手前でブラエススに追いついた。そして二人揃ってパラティウムへの丘を駆け上ってきたのだった。

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