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第十章 混乱 場面六 軍団の暴動(五)

「一体何故我々は、数少ない百人隊長たちに、奴隷同然に顎でこき使われねばならぬのか。やつらは我々を遊ばせないためだけに、やれ土木工事だ、町の警護だといっては我々を引っ張り出す。気に入らなければ容赦なく鞭打ちだ。ブドウの枝が折れるまでぶっ叩いては、折れたから次のを持ってこいと怒鳴る始末だ。我々の中で、身体に醜い傷跡を残さずにいられた者が何人いようか? これで一日たったの十アスとは!

 首都に暮らす親衛隊兵たちを見ろ。彼らは美しい軍装で飾り立て、アウグストゥスの傍にはべり、時には宴会だの祝儀だののうまいおこぼれに預り、敵の姿を見たこともない安楽な暮らしをして、一日二デナリウス(三十二アス)の給金をもらっている。そして十六年たてば五千デナリウスの退職金をもらってすぐに除隊だ。

 それに引き換え、我々はといえばどうだ? 惨めなものではないか。奴らの三分の一の給金で、鞭に怯え、汗水たらして二十年間を辛抱して、やれやれこれで除隊できると思ったところで、あれやこれやと理由を付けて期間を引き伸ばされるのがオチではないか!」

 プロのサクラの弁舌に兵達は次第に引きこまれ、興奮した。彼らは一斉に立ち上がり、鞭の傷跡をさらし、破れた服や靴を、ひび割れて硬くなった手のひらを示してペルケンニウスに同調した。ペルケンニウスは更に続けて、アウグストゥスが死に、ティベリウスが最高権力者になったばかりの今こそが、待遇改善を要求する好機であると言って、兵たちを煽った。

「給金は一日一デナリウス、兵役期間は十六年。その後は一日たりとも軍旗の下に留められることはなく、三千デナリウスの退職金は、即刻現金で支払われること。少なくともこれぐらいのものは、辺境で辛い労苦に耐えて祖国を守る我々が受け取るべき、当然の報酬ではないか? さあ、勇気ある軍団兵たちよ、今こそ力を合わせて起ち上がろう! 共に我々の労苦に見合うだけのものを勝ち取るのだ!」

 兵士達は口々に賛意を示し、各軍団の象徴である銀鷲旗と中隊旗を取りに走った。軍旗を一箇所に集め、そこにまるで指揮台のように芝を積み上げたのだという。その時、騒ぎを聞きつけたブラエススが駆けつけ、いきり立つ彼らを必死で説得した。

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