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第十八章 裏切り 場面二 リウィッラ(二)

 リウィッラの耳には、サファイアとガーネットをあしらった大ぶりのイヤリングが光っていた。一体幾らしたのだろう。後で執事に確認しておかなければならない。イヤリングが目立つようにだろう、小麦色の髪は簡単に結い上げられていた。染み一つない白い頬の滑らかな曲線とほっそりとした首に、繊細な細工のイヤリングが揺れて輝く。アントニアに似た、潤んだような薄紫色の瞳でドゥルーススを見つめる妻は、人目を惹く華やかな美しさだ。

 ドゥルーススは妻に歩み寄り、額にキスした。

「お帰りなさい」

 リウィッラは頬笑んだ。

「綺麗でしょう?」

「君によく似合うよ」

「ありがとう」

 リウィッラは嬉しそうに笑う。

「話があるって?」

 ドゥルーススが言うと、リウィッラはじっとドゥルーススを見つめた。何か言おうとし掛けたが、軽く肩を竦めてあっさりと言った。

「後にするわ」

 ドゥルーススは苦笑する。

「何」

「いいの。何だか、気が殺がれちゃって」

 リウィッラにはそんな気まぐれなところがある。ドゥルーススは身体を屈めて妻の頬に軽く口付けてから、踵を返そうとした。それを、リウィッラは呼び止める。

「ドゥルースス」

「ん」

「わたしを愛してる?」

 ドゥルーススは笑う。

「唐突だな」

「愛してる?」

「愛しているよ」

「子供たちも?」

「愛しているよ。当然だろう」

 ドゥルーススは答えた。少しの間、妻の薄紫色の眸を見つめた。妻はふいと目を逸らす。ドゥルーススはもう一度妻に歩み寄り、白い手を取って軽く口付けた。それから、再び踵を返して部屋を出ると、一つ吐息を洩らし、足早に私室へと戻った。



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