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第十章 混乱 場面一 アウグストゥスの死(二)

 ドゥルーススはアウグストゥスの死を知らせる書簡を受け取ると、父の事前の指示通り、ただちに各方面に早馬を走らせた。ローマ全土に配置された各軍団への、最高司令官ティベリウスからの通知書。市民たちに第一人者逝去を公表する書面。元老院の召集を求める布告。属州の知事、各国の君主への書簡。葬儀の準備については、アウグストゥスが遺言状に指示を書き残しており、ティベリウスがローマに戻ってそれを公表するまで、何もしなくていいとのことだった。

 ティベリウスはアウグストゥスの遺体に付き添い、アッピア街道を徒歩でローマへと向かっている。遺体は黄金と象牙で作られた棺に納められ、親衛隊兵たちの肩に担がれて厳かに進んでいた。夏の盛りの死だ。遺体は氷漬けにされ、日が落ちるのを待って移動しているという。闇の中に松明の明かりが延々と続き、深夜にもかかわらず、葬列を迎える人々が沿道を埋めた。人々はそれぞれ高価な衣服や香を焚いては、第一人者の死を悼んだ。

 首都はアウグストゥスの話題一色といってよかった。神君カエサルが暗殺されてから五十八年、アウグストゥスがアントニウスを滅ぼして「第一人者」となってから四十四年の歳月が過ぎた今、多くの人々にとってアウグストゥスはローマそのものであり、まさに父親を失った子供のように、先行きへの不安を抱いた者も少なくはなかった。彼の数え切れないほどの業績を称え、彼が生まれてから死ぬまでの期間を「アウグストゥスの世紀」と呼び称するべきだ、とまで言う者もいた。またある者は、もっと単純に、葬式につきものの市民への遺贈金のことをあれこれと噂しあった。



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