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第十五章 ゲルマニクス神話 場面五 無言の帰国(二)

 一行はゆっくりとアッピア街道を北上した。沿道を取り巻く人々はローマに近づくにつれてますます増え、あちこちで焚かれる香のため、白い煙があちらこちらでもうもうと上がっていた。皆口々に、「共和国はお終いだ!」「全ての希望は消えうせた!」などと叫んでいる。極度の興奮状態が群集全体に伝染したかのようで、ほとんど狂気じみた絶叫といってよかった。ドゥルーススは人々がゲルマニクスに対して抱いている愛情の強さを改めて実感すると同時に、これからのローマの運営の難しさを思った。

 父は、この事態にどう対処するだろうか。

 アッピア街道が果て、ローマの城門が見えてくると、ドゥルーススは奇妙なことに気づいた。出迎えの市民たちの中に、父とアウグスタの姿がない。アントニアについては、遺骨を見てショックを受ける恐れがあるため、出迎えには来ないようにと皆で説得していたが、父はアウグスタやリウィッラと共に出迎えるはずだった。何かあったのだろうか。政務官たちも戸惑った様子でひそひそと囁き交わしている。

 城門前にいた親衛隊長官のセイヤヌスが、ドゥルーススが尋ねる前に、そっと耳打ちした。

「事情は後でご説明いたします」

 何があったのだ、と尋ねたい気持ちを抑え、ドゥルーススは努めて平静を装い、アグリッピナ一行の先導役に徹した。



          ※




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