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第十章 混乱 場面四 元老院(四)

「あなたはアウグストゥスの後継者だ。ローマ全軍指揮権も、護民官特権も、政策委員会の常任委員の地位も、全てアウグストゥスが我々に要請し、あなたに与えたものだ。それはひとえにこの国の運営をあなたに託すためであったはずだ。あなたもそれを知って、特権的地位を享受してきたではないか。それを今になって力量の不足だ、身に余るなどと言い訳をするなら、始めからそれらを引き受けるべきではなかったはずだ」

 堂内は怒号と野次で騒然となる。グナエウス・ピソは舌打ちし、立ち上がった。

「執政官!」

 叱り付ける口調で言った。

「静粛を命じろ! こんなものは議論ではない、場を取り仕切り、きちんと議事を進行させるのも、我が国の最高官職たる執政官の務めだ!」

 それでようやく気づいたように、二人の執政官は場内に静粛を命じた。ローマの執政官は、一年任期の持ち回りだ。それでも強い指導力を発揮できる者もいるが、当然その能力のない者もいる。三個軍団の全滅を招いたウァルスも、執政官経験者―――しかも、ティベリウスの執政官同僚だったのだ。それでも、大過なく一年の任期を勤め上げれば、「執政官格(プロコンスル)」と位置づけられて尊敬されるほか、元老院属州の総督や都警察長官といった役職への道が開ける。

 それが神君カエサルが限界を見抜いた、「共和国(レス・プブリカ)」の現実だったのだ。

 ピソはそれだけを言って腰を下ろそうとしたが、思い直したらしく席を離れ、議員席の間を抜けて中央へ出た。執政官が静粛を命じる声と、中央に立った執政官格のピソに気圧されたように、議員たちは再び口をつぐむ。

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